Ж-19 纏ろ得ざる者 ~Disapproval Tribe~ ③
そんなおバカなコトを考えてる間に
耳長っ娘、 もといサーシャが藪の中を掻き分けていく。
本当に無作為にガサガサッってカンジ。
だから元の服は妙に薄汚れて傷みも多かったのか、
相方が剣か異能で切り拓こうかって言ってるが
ソレは逆にマズイんだって。
確かに危険な森の中に人工の痕があったら、
それだけで 「目印」 になるからね。
基本かなりランダムに、 方向だけ大雑把にして同じ箇所には
分け入らないようにしてるんだってさ。
だから集落の外に行く者は限られる、
サーシャは記憶力と森の勘が良いからだって。
じゃあさっきのは本当に出合い頭、
ガチで運が無かったんだね。
オレらが近くにいたのは運が良かったのか悪かったのか。
ン? 何? 相方。
あぁ~、 あぁ~、 サーシャの葉っぱ払ってやれってのね。
オレも一応男なんだがね、 まぁお子ちゃまだからいーか。
冒険者の女が持ってた服だから多少なりとも魔導が附与してあるのか
破れや解れは見当たらない。
でも身体はその限りじゃないから即席の魔導で擦り傷切り傷は治してやる。
オレらの身体は傷つかないから装備の差もあるんだろうけど、
肉体自体が相当脆いのね。
「ありがとうございます。 魔皇様」
傷が癒えるとサーシャが深々とオレに頭を下げる。
礼儀正しいね、 この世界に来て初めてまともな人に会った気分だね、
イヤ人間じゃないけど。
「ノエルでいーよ」
そう言って手をヒラヒラさせると
そんな畏れ多いとテンプレの反応を返す。
まぁ別にどうでもいーか、 あと少しで別れたらもう二度と逢わないだろーし。
オレ自身もう、 前世の名前に頓着ないから
便宜上この身体の娘の名前使ってるだけだしね。
「でも先頃降誕なされた魔皇陛下が、
こんなにお綺麗な方だとは驚きました。
そして、 本当にこの森へとお越し下さるなんて」
ン? ちょっと聞き捨てならんな。
「なんで識ってんの? そんなコト」
オレが魔皇だってコトは、 相方かミウが喋ったかもだけど、
でも前から知っていたようなその口ぶりが気になる。
「あ、はい。
集落の長老様が、“神託” の異能をお持ちなのです。
無論確実に的中するという訳ではないのですけれど、
今回は何時になく鮮明な幻像が視えたとかで、
皆も期待しておりました」