Ж-17 神々への叛逆 ~Against Of The Dead~
斜陽の残照が翳る狂熱の後、 深い虚脱が全身を包んだ。
周囲に散らばった人間の残骸とアイツらの亡骸。
改めて拾い集めようにも混ざり合って区別が付かなくなっちまった。
これじゃあ墓も造れねーよ、 我ながら莫迦だな、 ハハ。
「結局残ったの、 おまえだけか」
傍で物言わぬピンクのスライムを拾い上げ、 その頬を指先で突いてみる。
「ほれ、 どうした? なんか言ってみろよ、 ほれ、 ほれ」
冷たい、 何にも言わない、 当たり前だ、 死んでるんだから。
死んでるんだから――
夕闇に照らされる魔皇と死んだ魔物、
周囲に散らばる血と肉片、 その背後には牛の死骸が転がっている、
そんなこの世の果てみたいな光景の中、
オレはただ蹲るしか出来なかった。
今朝の、 バカみたいな光景が何度もフラッシュ・バックしていた。
≪CAUTION……≫
……何だ?
多分に殺気を含んだ声でアビスに応じる。
正直、 誰でも良い気分だ。
誰でも良いから殺してやりたい、 誰でも良いから蹂躙してやりたい。
足りない、 足りない、 足りない、 足りない。
自分の心がどんどん魔に浸蝕されていくのが解る。
ハハ、 いっそのコト、 こいつでもいいか。
スライム一匹護れねぇ糞莫迦が。
何が魔皇だ、 笑わせるな。
だったら顔面吹き飛ばしても生きてンだろ?
人間じゃねーんだからよ。
試してみろよ、 オメーなんか居なくなったって誰も困らねーからよ。
掌の中に集束していく魔導。
殆ど巫戯山けた気分だったけど、 ドス黒い魔氣の揺らめきを見てると、
何かそうしてもいい気分になってくる。
≪CAUTIONッッ!!
DON’T BREAKING FOR YOU!!
我が主よッッ!!≫
何だ? うるせーよ、 絶叫しやがって。
オレが死んだらお前も消えるから必死か?
知らねーけど。
冗談だよ、 冗談。 多寡がスライム如きのために何でオレが、
≪その個体、 コーラル・スライムはまだ生きています!≫
……あ?
≪正確には、 個体の魂魄が完全に核から分離していません!
種族中の稀少種だった故か
理由は種々考えられますが現況割愛!
主の御力ならば、 蘇生の可能性も在り得るコトを恐々謹、≫
早く言え!
体内で渦巻く魔那と魔氣、 魔導の波動。
解る、 理解るぞ。
戯れとは云え自分を毀壊そうとしていたからか、
ソレが却って【魔 皇 種 源 泉】 を共振させて
新たなる魔力を獲得しようと胎動いているのが理解る。
冷たくなったピンクの亡骸、 その裡側まで正確に解析出来るのが理解る!
でも、 その裡に確かに、 極僅かながら魂の鼓動を感じ取る事が出来る。
今にも零れ落ちそうな、 解れて霧散してしまうような、
余りに脆く儚い振動が、 それでも必死に核へとしがみ付いている感覚!
オレが魔皇だから? 形而上的なモノの感知能力も増大してるのか?
ンなこたぁどーでもいい。
ヤる、 ヤってやる!
今日の魔導の総仕上げだ!
明確なるイメージ。
今までは破壊の衝動に従って直感とか閃きに近い状態で
魔導を生み出してきたが、
今初めて、 意識的にその体系を構築する。
いや、 朝っぱら塩造ったっけ?
でもそんなもんとは比べものにならない難易度だ。
でもヤる! アビス! 協力しろ!
≪YES! MY MASTER!≫