Ж-15 魔 言 変 換 ~Trance Code~ ③
『LUGA!?』
そうだろうねぇ~、 解らないだろうねぇ~、
魔導は遣ってないからねぇ~。
ドンドンいくよ!
ギシュッ! グァシュ!! ズヴァシュッッ!!
腕を振り出すごとに、ランダムと云って良い無軌道さで
オーガの巨体に裂傷が走っていく。
攻撃の 「起点」 が視えてないから反射的なガードも難しそうだ。
その為に腕をゆらゆら揺らしてるんだけどね、
オレでさえ精確には把握してないよ。
もうお解りの通り、 オレは打撃を撃つ瞬間にだけ
異能を発動させて爪を延ばしてる。 相手に命中したら即座に戻す。
肩も腰も入れずほぼ手首のスナップだけで撃ってるから
鞭みたいに撓って余計に視辛いんだよね、
しかもベルトライン下方からクるからさ。
ズァババババババババババババババババババ
ババババババババババババババババババ!!!!!!!!!
『GUAAAAAAAAAGAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!』
目論見通り。 しかも安全圏内から反撃を許さず一方的に攻撃出来るなら、
当然こちらの回転も調子も騰がっていく。
正直、こんなに巧くイクとは想わなかった、
コレが、魔皇の地力ってヤツ?
爪を延ばすタイミング、
ヘタすりゃ爪同士が空中衝突でも起こすんじゃないかという
懸念はあったが杞憂だったみたい。
そこらへんの微調整は 「技量」 や 「敏捷」 という
『総力値』 が補ってくれてる。
昨日の虎共を 『貪喰』 で啖ったのが効いてるのかもね。
おっと、 すまない、 ンなコト考えてる間に当のオーガは血達磨だ。
コレだけオレの爪撃を受けたまだ立ってる 「生命力」 と
肉体自体の 「防御力」 は大したモノだがね。
だから――。
「もう、 止めた方がイイ」
言葉が通じるかは解らないが、
オレは攻撃を止め構えも解いた。
本来の戦闘なら甘過ぎるって解ってるけど、
今回に限りオレは 「殺し合い」 じゃなく 「実験」 してただけだからね。
生殺与奪の権利くらいは譲らないと公正じゃない。
体中オレの魔爪で蜂の巣になって
肉の裂け目から骨や脂肪が剥き出しになっている。
素直に 「降伏」 するなら回復してあげてもイイ、
近寄るから完治はさせられないけど。
『GUARUAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――――――
――――――――――――――――――――――ッッッッッッ!!!!!!!!』
僅かな逡巡の後、 瀕死のオーガは全身の疵口から血を噴きながら
鉄球を揮い上げ決死の突貫を仕掛けてきた。
――あぁ、そうだと想ったよ。
『雄』 だもんな。
矮小な小娘に一方的に甚振られて、
ソレで助けてもらうなんて『本能』が赦さないよな。