Ж-15 魔 言 変 換 ~Trance Code~
『GUUUGYYYYYYYYYYYYY!!』
≪フォレスト・ゴブリン、 STRUCK!≫
『SHUKYUUUAAAAAAAAAAAA!!』
≪ヴァレント・サーパント、 STRUCK!≫
『WRUUUUUOOOOOOOOOO!!』
≪ベアリー・ファング・ウルフ、 STRUCK!≫
樹海を走り抜けるオレの足跡は、 死屍累々の轍と成った。
ここまで魔導は遣ってない、 全て異能、 『エビル・クロー』のみ。
コレを常用技にしようと眼を付けたオレの判断は、
今の所間違ってなかったようだ。
伸縮自在、 最大6メートルは延びるが練度が向上れば
その効果も比例するだろう、 無論切れ味も。
なんかアレだ、 某スプラッターゲームの恋人ボスになった気がするが、
そこらへんも馴染む要因かね、 ホラー系は苦手なんだけどね。
何故魔導を封印して、 こんな縛りプレイをしているかというと、
それには明確な理由というか必然が有る。
そもそも魔導ってのは、 どんな初級のモノでも実質 「大技」 に近く
瞬発的、 連発的に撃てない。
無論経験を積めばいずれはそういうコトも出来るのだろうが
今のオレには無理、 それと一回ごとの消耗も多い。
格闘技じゃ常識なんだけどいきなり 「大技」 ブッ放しても、
ソレが命中るのはド素人か超格下だけ。
空振ったら当然隙だらけになるから
無防備の所に強烈なカウンター貰うかラッシュの餌食になるだけ。
故にボクシングのジャブ、 柔道の 「崩し」 のように
牽制用、 大技への繋ぎ用、 相手の地力を削る消耗用の技が
どうしても必要になってくる。
リュカが一緒なら上記の問題は大幅にリカバーされるが
いつも一緒にいるとは限らないしその分相方の負担も大きくなる。
何よりソレじゃオレ一人で何にも出来ないのと同じコト、
この先生き残る事なんて決して出来ない。
例えばさっきのゴブリン、 錆びた手斧で武装してたけど
力任せの杜撰な攻撃でも懐に飛び込まれれば防戦一方で
魔導どころじゃなくなる。
崩れた体勢と荒れた精神で無理にブッ放した処で
躱されればそれで終いだし藪に伏兵でも居れば
隙だらけの瞬間を狙われてそれも終わり。
魔導を撃った瞬間は体内の魔氣が一気に消耗するため
躰が一時硬直するからね。
故に――
湾曲した剣を飛び上がりながら振り下ろす二足歩行の獣人、
コボルド、 ってヤツか。 の肩口に迫る二つの斬撃を
伸ばした五本爪で左右同時に受け止め、
そのまま回転運動で巻き絡めて梳き流す。
反転しながら地面に踏鞴を踏むその犬頭に、
指を揃えて直列させた文字通りの 「手刀」 で
これまた同時に真っ二つに両断する。