Ж-26 魔皇の爪痕 ~Art of Pain~
「おい、 そこのハンミミ、 ちょっと待てよ」
獲物が掛かった。
最初、 聞き慣れない単語が背後から
飛び込んできたからそうだと解らなかった。
でも護衛クン達の憎しみが籠った渋面と
サーシャの蒼白でソレが侮蔑語だとすぐに解った。
ってか他者を貶める言葉って、 異世界でも変わらないね、
そのムカつき度が、 自分と関係なくても。
「爺ちゃん護衛クン、 サーシャのことお願い。
話し合いはオレがする。 あとオレが魔皇だってバレないように」
もうサーシャの口が 「ま」 の形に開いてたので指を立てて制する。
フードを被って振り向いた先には、
先刻の野卑な悪罵に劣らぬ下卑た面。
使い込まれ、 でもロクに手入れをしていない
武器と防具を携えた冒険者達だった。
相手は五人、 全員男。
≪CAUTION!≫
~§此の命脈を聴きし者§~
アビスの警告と 『想念詠唱』 が同時に掛かるが前者は無視。
浅層だし大した遣い手じゃないだろう、
昨日のヤツらとどっこい位かな?
昼ご飯に大袈裟に炊飯の煙上げたから、
ようやく喰いついたってカンジだね。
~§不昧なる虚人の断末を捧げん§~
「何か、 御用でしょうか?」
あんまり近づきたくないからギリ会話の出来る距離で、
ネコ百万匹くらいかぶって返事をする。
「あぁ? 何だぁ、 テメー?」
蟀谷の青筋ちゃんがビキビキと自己主張するが、
なんとか作り笑いを浮かべて抑える。
「質問を質問で返すな」 ってオレの世界の殺人鬼が言ってたんだがな、
今から 『魔言変換』 で術式換えて爆殺してヤろうか?
~§蒼緑の禁縛 大肢の呪縛§~
「チッ、 眉唾モンの情報だったが、 どうやら当たりらしいな」
「な、 な、 だから言っただろう?
こんな森で首輪無しのハンミミが四匹も歩いてるとか有り得ねぇよ!
これだけでも大儲けじゃねーか!」
「チョーシ乗んじゃねえ! ギルドの便所で壁越しに
Aランクの密談盗み聴いただけだろうが!」
「てめぇにはそれぐれぇしか使い道がねーんだから
役に立ってもらわなきゃ困るんだよ!」
~§溢れ出ル晩鐘を織り上げ§~
……今度はこっちの意向を無視、 ね。
小太りの中背男が筋肉と脂肪の大男に怒鳴られてら。
ホント冒険者ってヤツは、 ガチでクズしかいないのか?
まぁ、 ヤり易いがね。
お?