Ж-25 儚 き 花 ~Oh My Little Girl~
はて、 魔皇とも在ろうモノがこんな目覚めをして良いものだろうか?
早朝の朝チュンだぁ~、 空気が爽やか、 ジ〇リみてぇ~、 嘘クセェ~、
とログハウスの前で大きく伸びをする今日のオレであった。
魔皇の内臓効果か二日酔いは微塵も無い、
生前でもこんな気持ち良い朝はあんま無かったな。
左肩でまだピンクの物体が寝てるがさっきベッドに置いてこうとしたら、
オレの服に噛み付きそのままスルスルと定位置まで昇ってきた。
ドンだけ懐いてンだよ、 最早 「能力」 の領域だな。
そうやってスライムの頬を突きながら広場までやってくると――
「おはよう」
黎明を背景に、
漆黒の外套を靡かせ緑の大剣を携える
眩い英霊の姿が在った。
「やぁ、 早いね」
短く朝の挨拶を交わしながら、 山と積まれた獲物の前に歩み寄る。
定番の牛と猪の他に、 鳥、 山羊、 鰐となんでもござれ、
流石に行動早いね、 オレが考えるような事は先刻承知か。
ンじゃあ早速分解しましょうというコトで、
血抜きの終わった死骸を剣と魔導で文字通りサクサク解体してると、
いつの間にか村の住人達に囲まれてた。
どーでもいーけどお前等昨日から
「おお!」 と 「魔皇様!」 しか言ってねーよ。
ラノベのヘタレ主人公じゃないんだから
驚きと名前以外の語彙増やせっての。
「手伝って……」
そう呟いた後、 魔導で造った刃を複数転がす。
一度無口、 無表情キャラで固めちゃったから
素を出すタイミングが掴めない。
これからずっとコレで通すのか? ヤダなぁ~。
そんなわけで皮を剥ぎ剥ぎしていると
係からあぶれた住人が代わってくれた。
畏れ多いとかなんとかまたテンプレなコト言ってたけど
好意は素直に受け入れとく。
「そう……」 とキャラを守るセリフも忘れずに。
まぁあんまり一方的に与え続けるのも
自然な人間関係とは言えないからね。
獲物は取ってきたんだから後処理くらいはヤってもらおう。
オレは魔導の刃造っただけだけどな。
「早朝から、 賑やかで御座いますな」
ほっほ、 と笑いながら近づく杖の音。
「御老」
「爺ちゃん」
変わらない静かな威厳を漂わせて、
長老ハクエイが二人の護衛と共にやってきた。
「取り敢えずの食い扶持。
足りない物や欲しい物が有ったら言って。
狩ってくる」
親指で背後を差しながら、 爺ちゃんに向けて皆へ聞こえるように言う。
オレらの村での役割は狩猟係。
幾ら村の防衛を担うといっても
実質何もしてないなら穀潰しと一緒。
いざという時しか働かない。
そんなヤツの言う事、 誰も聞きやしないだろう。
だから与えるだけ与えとく、
口先ばっかで実際は何もしないヤツ、
少なくともオレは信じない。
だから――
「朝食の後、 爺ちゃん、 護衛クン、 それとサーシャ、
オレに付き合って」