[本音]
[本音]
僕は、一宮仁に病室の外の廊下に連れ出された。
一宮仁は、少し廊下を歩いてから、僕に振り向いた。
「聞いての通り、ちさとちゃんは大丈夫だ。
精密検査を受けても間違いなく無傷だったよ。良かったな。大木」
僕は、頷くしかしかなかった。
「検査員は目を丸くしていたぞ、あれほど衣服に血液やら付いていて無傷だからな」
一宮仁は軽く笑い飛ばした。
…
「一つ聞いておく。初めてのことか?」
僕は頷く。
「そうか。おまえは大丈夫か?これは精神科医として聞いている。」
僕は、言葉にした。
「わからない。あれは本当に僕がやったことなのか。正直、実感も現実感もない。」
一宮仁は頷いた。
「そうだろうな。今回に関して本当助かったよ。何にせよ小さな命を助けられたのだからな。」
僕は笑った。
「おっ!ようやく笑ったか。」
一宮仁は微笑んだ。
「大木強志。お前は、力を持っている。それは確かだ。
その力は非科学的で証明はできないだろう。
そしてまた、人から組織からいい意味でも悪い意味でも目を当てられるだろう。
だから、決して安易に人の前で力を見せてはならない。」
僕は、強く頷いた。
「そしてもう一つ、力を自分で知ることが大切だ。どうやって使っているか、その効果はなんなのか、どれくらい使えるのか。力をコントロールすることで自分を守りなさい。」
僕は再び頷いた。
「最後に、特別なことを抱えていると精神的に追い詰められるが定石だ。
とにかく不安なことや心配があったら俺に吐き出せ。
安心しろ。俺は、何があってもお前のことは誰かに言うつもりはない。」
僕は一宮仁に言った。
「ありがとう。どうして、そんなに僕に親切にしてくれるのだ?」
「俺は、色々な精神に障害のある患者を診てきた。
俺は、外科医でもあるが、
怪我は簡単ではないがそれなりに手術で対処ができるか精神はそうはいかない。
何人もの患者が治療の甲斐なく、死を選ぶものがいた。
特に、お前みたいにやさしくてお節介やきの性格の人間は
自分を追い詰めていく傾向があるのだよ。」
僕は答えた。
「僕は死なないよ。来週末人生で初めてのデートがあるのだから。」
一宮仁は吹き出した。
「わっはっはっは。そうかそうか。それはいいな。頑張ってくれ。」
「正直言うと、医者としてその力に興味があるのだよ。」
僕は、一宮仁が本音を言った事で信用してもいいやつ奴だなと感じた。
「おまえも疲れただろう。ちさとちゃんの親御さんとたけし君に挨拶して帰りな!」
そう言って一宮仁は、手をあげて去って行った。
去り際の途中、一宮仁が振り返り言った。
「そうそう。あの説明あれで限界だよ。勘弁してくれ。
こう見えて俺も気が動転して、よくわかってねえからさ」
僕は、笑顔で応えて、病室のドアに手を掛けた。




