氷の覇王と帝王
だが、寸前のところでハッと我に返り、カルマを突き飛ばす。
突き飛ばした時のカルマの表情は酷く傷ついているように見えた。
「お前たちと出会ったのは俺の方が先だったのにな・・・」
「お兄ちゃん・・・?」
「お前たちの中で一番変わったのは、ディーナだ。驚くほど・・・魅力的になった」
ディーナは本能的に後退を始めた。だが、そんなディーナの腕が即座に掴まれる。
「あの男はまだお前に手を出していないという噂だが・・・本当かな?」
カルマの気配が一気に変わったのが分かった。ディーナは声をあげようとしたが、その口も手で塞がれ、ソファに押し倒される。
「なぁ・・・お前のことそっちのけで政務に追われて助けにも来れないような男で本当にいいのか?ディーナ」
優しい声音と共に口の中に滑り込んだ指が口内をなぞり身体が震える。その反応にカルマは自分の枷が外れていくのを感じた。
その時、勢いよく扉が開き、反射的に頭部を腕で庇えば蹴りが腕にめり込んだ。流石に吹き飛ばされるも、すぐに体勢を建て直す。
「もう少し遅れて良かったんだがな。覇王様」
現れた王は怒気を露にカルマを鋭く睨み付ける。
「ディーナに手を出すのは俺への宣戦布告と受けとる」
「だ、駄目です!」
ディーナが割って入ることに王は苛立って怒鳴る。
「何故庇う!お前何をされたか分かっているのか!?」
「庇う訳じゃありません!こんなこと国の問題にしていい訳がありません!王同士で争うなんて・・・」
「こんなことだと・・っ。大体何故この男を俺達の寝室に入れている!」
「だ、大事な話ということで・・・」
「この男がお前を狙っているということは分かっていただろう!こんな夜中に招き入れて・・・っ」
「私は陛下を・・・」
待っていたんですという言葉は涙によってかききえた。泣きたかった訳ではなかったのに溢れて止まらなくなった。止め方もわからずディーナは呆然とする。
ディーナの涙に気付いた王は我に返るも、泣くディーナを抱き寄せたのはカルマだ。
「やはり貴殿にディーナは預けられないな」
「その手を離せ!」
近づこうとした王にカルマは剣を向ける。
「決闘をしよう。我が国では強さこそが力の証。敗者は勝者に従うというシンプルなものだ。ルールはどちらかが動けなくなるまで・・・だ」
「そんなこと!」
ディーナは止めようとするが、王は二つ返事で頷く。
「いいだろう」
「陛下!」
「ハッキリさせよう」
カルマはニッと笑った。
「残りの二人にも声をかけてもらえると助かるな。まあ、受けないならそれでいいがな」
カルマの提案をマルドアもメルフィも受けた。早い方がいいだろうと今夜決闘を行うこととなった。




