王の側近の変化
ギドは医務室の前で立ち止まり、一拍置く。
「入るぞー」
一応イルリカを背に隠しながら部屋に入る。
するとベットの上で目隠しをされているマルドアの姿があった。
「どうですか!?」
「何がだよ!!つか何のプレイ!?」
ドヤ顔で言ってくるメルフィにギドがすかさずツッコミをいれる。
「顔が見えなければ動揺することもないかと・・・」
メルフィの言い分は分かるがそれでもこれはどうなんだ・・・とギドは内心唸った。だが、イルリカは多少気になっているようだがあまり気にしていない様子のため、そのまま進めることにする。
「マル坊。イルリカちゃん達連れてきたけど大丈夫か?」
「問題ない。だが、話があるならここではない方がいいか?」
「私が席を外しますよ」
気を効かせた医師がそう提案し失礼しますと出て行った。それを確認した後マルドアはイルリカに問いかける。
「それで、俺に聞きたいこととは?」
「貴方の目に映る王とはどのような人物ですか?」
「俺が最も尊敬すべき王の中の王だ」
迷うことのなかった即答。イルリカはマルドアに対する問いを重ねる。
「具体的には?」
「常に民のことを考え執務をおろそかにしたことはない。寝る間を惜しみ、己を削って国に尽くしている」
「・・・確かに素晴らしいことです。ですが・・・それは王の仕事として当然のことでは?」
イルリカの言葉にマルドアはピクリと反応する。
「王という立場である以上民のことを考え、国に尽くすのは仕事のうちではありませんか?」
ギドはマルドアが怒鳴り出すのではないかとハラハラした。王のこととなると頭に血が昇りやすいことを知っているからだ。だが、口を開いたマルドアは思った以上に冷静だった。
「そうだな」
まさか同意するとは思わずマルドアを知っているギドとディーナが同時に驚く。
「だが、その当然のことを全うできる人間がどれだけいる?自分の全てを捨て仕事をとる人間がどれだけいる?王はもっと楽だってできる。人を雇って執務を任せればいい。だが、そうしないのは責任をしっかりと自覚しているからだ。何かあればその者の責任になる。だから王は大きな仕事は決して俺に任せない。俺にもだ・・・」
マルドアは少しだけ寂しそうに呟く。少しでも王に楽をさせたいと考えるマルドアだったが、その思いを一向に成し遂げられる気配がない。
「それは貴方を信頼していないのでは?」
「姉さん!!」
ディーナが怒鳴るがマルドアが手で制止する。
「・・・そうなのかも知れない」
「そんなことありません!」
「だが仕事を任せてもらえない以上そういうことだろう」
ディーナは反論したいのに言葉が見つからず黙りこむ。
そこにギドがあーっ!と割り込んだ。
「お前らの話だから割り込みたくなかったけどよぉ!腹立つから言う!!マル坊!テメーラディがお前を信頼してないなんて思ってねえだろ!!ラディは臣下の中でも得にオメーを信頼してっから傍に置くし、意見も聞く」
果てにゃ玉座だって任せられる対象だと思ってる。
「オメーに仕事を任せねえのはあの甘ちゃんの優しさだってことも知ってる!けど、イルリカちゃんに突っ込まれるの分かってっからあえて言わねぇ!!イルリカちゃんはあえてマル坊の神経を逆撫でするような物言いをして反応うかがってる!そういう駆け引きすっげーイライラするし、その会話もイライラする!!!」
「子供ですか!!!」
分かってて割り込むギドに思わずメルフィが突っ込みを入れる。
「分かってるならあえて傍観を決め込むのが大人でしょう!!今の貴方の発言で駆け引きが成立しなくなりましたよ!?」
「知らねえ!!」
「子供ですか!?」
暫し間がありイルリカが口を開いた。
「ギド団長の言う通りです。貴方様の反応をうかがっていました。失礼な物言い、大変失礼いたしました」
深く頭を下げるイルリカ。
「いや、いい。貴女が俺を試しているのは分かっていて問答を受けた」
「ほら!これが大人ですよ!」
メルフィは二人を指差す。
「指差しちゃいけないんだぞ!「子供ですか!!!」
「メルフィ」
不意にマルドアに声をかけられ、メルフィは姿勢を正す。
「最近城下で妙な違和感を感じると兵達からぼやいていた。上手く表現できないため報告にはあがっていない。お前が城下に行って確かめてきてくれるか?何もないならそれでいい」
「構わないのですが・・・。具体的にどうすれば?」
「ディーナとレオナ・・・だったか?彼女とともに城下を少し回ってきてくれ。ディーナは変なところが鋭かったりする。何か気付くかも知れない」
「頑張ります!」
「なら俺も行く!」
気合いを入れるディーナに加え、ギドがはいはーい!と挙手した。マルドアは暫し悩んでいたが、まあいいだろうと許可を出した。
「金はこれを使ってくれ」
マルドアは小さな巾着を差し出す。
「いえ!私も団長も持ち合わせがあります」
「いいじゃん。貰えるもんは貰っとけよ」
「あなたってそういう人ですよね・・・」
メルフィはため息をつく。
「必要経費だ。問題ない。ついでに改善点などもあれば報告してくれ」
「分かりました」
「イルリカちゃんは?」
「彼女とは二人で話しをしてみたい」
ギドとメルフィは内心大丈夫か・・・と不安になっていた。そんな時不意にマルドアが目隠しを外した。
「あ!」
「ちょ!」
二人が止めようとしたが間に合わずマルドアはベットを降りて真っ直ぐイルリカを見る。
「先ほどから失礼をした。私は宰相の立場にあるマルドアという。貴女の意見はとても参考になる。是非聞かせていただきたい」
ニコリと微笑みさえ見せるマルドアにメルフィとギドはどういう心の変化だと驚く。
「私も是非お願いいたします」
イルリカも丁寧に頭を下げとりあえず大丈夫そうだと心配していた二人は安心する。
「んじゃ、俺ら行ってくるついでにラディにも話通しとくからゆっくりしろよー」
ギドがヒラヒラと手を振り、皆を連れて出て行った。
「貴女が嫌でなければ私の部屋で話たいのだが」
「構いません」




