第1話
新川水樹は『バーガーミスト』というファーストフード店のレジで接客を行っていた。昼過ぎなり、人が多く利用しているので、余裕がなくなっていく。どんどん、注文が多くなり、商品の提供が遅れていく。
「いっしゃいませ、ご注文は?」
後ろに多くの人が並んでいるが、目の前の客はじっとメニューを見ていて、なかなか注文をする様子がない。
「ピクルスって抜けます?」
「ハンバーガーですよね。」
「それ以外にありますか?」
「いえ。ピクルスについてはご自身で抜いてもらうようにお願いしております。」
「なぜですか?」
「そういったサービスをこちらはしておりません」
「そう、じゃあこのハンバーガーのセットで、オレンジジュースで」
「承知しました。600円になります」
客は不機嫌そうに、財布から千円札をゆっくりと出して、時間だけがどんどん過ぎていく。
「受け取りカウンターでお待ちください」
レシートとお釣りを渡そうと差し出すと、なんなのと言って引っ張るよにレシートと持って行った。次から次へと客の対応に追われて、同じこと繰り返して、目先がクラクラする。
「氷を抜くのは良くて、なんでピクルスを抜くのダメなのですか?」
そんな声が聞こえてきた。店長の山根が対応している。そんなの当たり前だろうと水樹は思った。それはただ氷を入れずに、カップだけ機械にセットするのと、厨房の人のわざわざピクルス抜きを頼むのではやっぱり難しさは違う。そのピクルス抜きの注文をした客が水樹を睨んでいる。
山根が戻って来て「ピクルス抜きを作って」と言われた。「なんで僕なんですか?」と言ったが、とりあえず作ってこいと言われてしまい、厨房に行った。
厨房に入ると「山根はとりあえず、客から遠ざけるために厨房に行くように言っただけでしょう。気にしちゃだめだよ」
隣にもくもくと作業をしている小山に言われた。まあ、レジにあの客が来て口論されては困るだろう。水樹も客に反論する言葉が思い浮かばなかった。ハンバーガーを作り終えた、客がそれを持っていった。そちらを少し見ると睨まれていた。山根に促されて、席に移動していった。そのあとも山根から何か特に言われることはないが、レジに戻ることは許されなかった。
「あのお客さんが帰ったら、レジ任せれるよ」
「そうですかね」
また、小山に言われて、心を読まれているようで嫌だった。




