転生 とりあえず漢字二文字のタイトルにしとけばそれっぽくない?
あぁ、書きたくない……異世界転生モノなんてこれっぽっちも書きたくない。
もう旬は過ぎてるだろ。昔ほどの勢いも無い。アニメ化も無駄に乱立してるけど、もうなんか異世界転生ってだけで見る気も起きない。
そもそももう書くこと無いだろこのジャンル。書かれ過ぎてて、何書いたって全部なんかのパクリになる。
……でも書くしかない。トレンドはこれなんだ。異世界転生ってだけで読む層が居るんだ。書くんだ俺、書くんだ……
……た、『小鳥遊 ユウキ』はその……なんだ、トラック?にはねられて死んだ……書き出しはこれで良いんだよな?とりあえず無難な事故死させれば良いんだろ?名前もなんかこう、あんまり見たこと無い名字にすれば良いんだろ?
で次は……ユウキは気付くと、真っ白な空間で椅子に座っていた。目の前には、美しい女神が……あー、待て待て、女神の描写やり直すわ。
目の前には、バカみたいな巨乳で、アホみたいに薄着で胸丸出しの、痴女みたいな女神が居た。
これで良し。とりあえずエロくしとけば良いんでしょ?分かってる分かってる。俺も異世界転生モノはあんまり好きじゃないけど、そういうのに出てくるエロキャラは好きだよ。名前も知らないようなのばっかりだけど。
「ようこそユウキさん。あなたは……えっと……すいませーん?異世界転生する理由はどうしましょうか?」
あー……確かに。事故死しただけの奴を異世界転生させる理由ってどうすれば良いんだ?
別にこいつなんか努力してた訳じゃないし、異世界転生してモテモテちやほやされる様な徳も積んでないし……
……俺、たぶんこういう所が嫌いなんだろうな。努力もなにもしてない奴が、無条件に異世界転生して無双するのが嫌なんだ。
「あのー……?」
あぁすいません。そうだな……じゃあよくある、手違いで殺したので、補填で異世界転生させましたってやつにしてください。
「分かりました。では……ようこそユウキさん。あなたは手違いで殺されてしまった不幸な人なので、異世界転生させてあげますね」
「いえ、遠慮させていただきます」
おいこらまてぇ、勝手に遠慮するんじゃねぇ。
「いやいや、さっきの努力してないやつがうんぬんの話聞いて、異世界転生しようとは思いませんってば」
気にしなくて良いってば。そういうのを無視して、無条件にちやほやされるお約束の展開を、読者は見にきてるんだから。それの何が面白いのかはよく分からないけど。
「……例えばなんですけど、僕がこのまま異世界転生して、なんかチートとか貰って、数年後にハーレムやら国やらを作ったとするじゃないですか?自分の努力して手に入れた力ではなく、他人から与えられた力で」
はい。それが異世界転生ってやつなので。それがなにか?
「虚しくありませんか?それ。あぁ所詮、僕の人生は転生前からも含めて、なにもかも『他人の力』で作られただけの、『他人本意の人生』だったなって……」
しょうがないじゃん。そもそも『異世界転生してチート貰う』っていうテンプレがそもそも理不尽の塊なんだもの。
そりゃ分かるよ。テンプレは面白いからテンプレになるんだ。勇者が問答無用で魔物達を倒していくのはワクワクするし、悪役令嬢が、身の回りの不幸を回避していくのは爽快だもの。
でも勇者の行いが常に正しいとは限らないし、悪役令嬢に転生したということは、元の悪役令嬢の人格を殺したのと同義だ。
でも、『そんな細かいこと読者は気にしない』頭からっぽにして、ただ『気持ちいいもの』を見たいだけ。
だからこのグダグダと長いだけの地の文なんて、9割くらいななめ読みして飛ばしてるし、この先の会話とかもどうせろくには
「分かりました分かりましたから!しますします!異世界転生しますから!どうか泣かないで……」
泣いてなんかないやい!毎日毎日、異世界転生以外の作品を書いては、誰にも見られない寂しい日々……それに比べたら、登場人物が異世界転生してくれない事なんて、へでもないやい!
「あらあら。なんとおいたわしや……じゃあ早速、異世界転生させますね」
「はい。よろしくお願いします……ところで、その……そんな布っきれみたいな服を着ていて、恥ずかしさとかはないんですか……?」
「ふふふ……女神は昔から、エロい服を着せられるものです。きっちりとした服を着て、ただ真面目に働くだけの女神は、決してイラスト投稿サイトで人気が出ません。『巨乳』『露出』『清楚』これこそが、『18禁イラスト人気の三種の神器』です」
まぁ、結局原作が人気無いと、ただの痴女で終わりますけどね。そもそも小説だから画像無いですし、かといって、あんまり鮮明に描写すると年齢制限かかるし……
「エロとは諸刃の剣……安易にバカにするものではありませんよ、ユウキさん」
「大変申し訳ありませんでした……まさかそこまで『覚悟』が決まっていたとはつゆしらず……」
『やりたい事』と『人気が出る事』は違うんだユウキ。真面目な服を着たかったとしても、エロい服を着た方が人気が出るなら、エロい服を着るしかないんだ。
「異世界転生を書きたくなくても、読まれる為には、異世界転生を書くしかない……まさに今の僕たちと同じなんですね」
そうだユウキ。そしてあまりに長い文章は飽きられるんだユウキ。早く異世界転生するんだユウキ。
「そうですユウキさん。私がエロい服のせいで風邪を引く前に。ちゃちゃっとチートを貰って異世界転生しましょう」
「あ、やっぱり寒いんですねその服……えっとじゃあ、どんなチートを貰えますか?」
「思ったことが現実になるチートです」
「すいません。それもうチートじゃなくて開発者権限とかだと思うのですが」
だってしょうがないじゃん。もう何のチート渡しても、全部どっかで見たことある設定なんだもん。だったらもう、このくらいの適当なやつでよくない?
「いやだからって、これは流石に……」
「変に縛りのある能力とか渡しても、結局それを踏み倒す展開になるだけですからねぇ。だったら最初から、完成された能力でよいではありませんか」
「これは完成じゃなくて、終焉だと思うのですが……」
時間だユウキ。そろそろ主人公が椅子に座って会話するだけの展開には飽きられる頃だ。異世界に行けユウキ、行かないのなら帰れ!
「帰りてぇ……あと安易なパロディはあんまりやらない方が」
「ではお送りしますね。エルフやらドラゴンやらが居て、魔法とかは発達してる癖に、なぜか機械文明は全然進んでないご都合主義の異世界へ!」
「それ思っても絶対言ったらダメなやつ」
こうして、えっと……名前なんだっけ?そうだ、小鳥遊ユウキだ、珍しい名字にすると名前忘れるな……とにかくユウキは、お約束どっぷりの異世界転生を果たした。
行けユウキ。ハーレムを作れ、国を作れ、意味もなく力を見せびらかし、上から目線で説教を垂れろ。急に口調を変えて『俺キレるとこんな口調になるんだぜ?』って安易なキャラ付けをしろ!
俺がこの話を書くのに飽きるその日まで!




