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第1話:アップグレードされる世界

挿絵(By みてみん)



「……はい、皆さんこんにちは。ついに、ついにですよ。僕の手元にも届きました。『スマートグラス』。


これね、もう先に言っておきます。ガジェットっていう言葉で括っちゃダメなやつです。これは『道具』じゃない。『世界そのものを書き換える』――そういう体験なんです。




ただの高性能なスマートグラスだと思ってる人、今すぐその古い認識をアップデートしてください。次元が違います。




まず、見てください、このフレームの質感。これ、バッテリーっていう概念が消滅してるんですよ。この『つる』の部分が街中の基地局から常時受電してる。箱から出してかけて以来、一度も充電器に繋いでません。これ、インフラレベルの革命。もはや呼吸と同じで、止まることがないんです。




そして、一番ヤバいのがこれ。『現実の上書き(スキン機能)』。


今、僕の部屋、映像ではどう見えてます?……はい、ドン!


最高でしょ。ドバイの七つ星ホテルのラウンジをエミュレートしてます。でもね、種明かしをすると、ここ、築40年のボロアパートの六畳一間なんです。壁紙の染みも、散らかったゴミも、スマートグラス を通せば『最高級アラビカ豆の輝き』を放つ調度品に変わる。脳が完全にバグります(笑)。




僕の顔も、皆さんのデバイスには『超絶イケメン・フィルター済』の【見せ顔】で届いてるはず。さっきこのままコンビニに行ってきたんですけど、『生身の顔を晒さない』っていう安心感、マジで癖になりますね。素顔で歩くなんて、もう全裸で歩くのと同じくらい野蛮に感じちゃう。




見てください、このレイテンシ。ゼロです。首を振っても世界が遅れてこない。スマホをポケットから取り出すなんていう『不作法』な動作、もう二度と戻れませんよ。


正直、これが『シンギュラリティ』と呼ばれているのも納得です。専門外の量子力学の論文を広げても、視界の端でAIが『要するにこういうこと』ってリアルタイムに図解してくれる。自分が天才になった錯覚……いや、もはや『第二の脳』がOSごと入れ替わった感覚ですね。




もう旧来の『円』とか『ドル』を握りしめてる時代じゃない。NT連合のデジタル通貨でこの体験をサブスクし続けるのが、これからの人類の『標準』になるんでしょうね。




ま、難しいことは全部AIに任せて、僕は新しいスキンの課金に行ってきます!


あ、この動画も スマートグラス の視点録画をそのままクラウドに流してます。


気に入ったら、投げ銭(NTコイン)とチャンネル登録、よろしく!」




虚空に向けて振っていた手を下ろし、空中に浮かぶ仮想ウィンドウを指先で弾く。


録画終了のアイコンが消え、静寂が戻った。




男は、視界の中で黄金色に輝く「最高級のアラビカコーヒー」を手に取り、一口啜った。


網膜に映る液体は芳醇な湯気を立てているが、舌の上を滑るのは、水道水で薄めた安物のインスタント粉末の、刺すような酸味だけだ。




「……でも味はそのままなんだよな。これだけは」、とコメントには書いておこうと思うのだった。




男はそう独りごちて、豪華なラウンジの幻影の中で、ひび割れたプラスチックのカップをそっと置いた。

1話解説:この世界のスマートグラスの機能をざっとお披露目する回です。

特定の誰かをイメージした訳ではないですが、気づけば「ジェットダイスケさん」風に

なってました。私の中ではガジェット系ユーチューバーの神様なので。



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