反撃計画
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──反撃計画
先のシーサーペント漁によって私たちは必要な資源を上回る資源を手に入れた。
私がこれを受けて行ったのはまず、前進基地を航空偵察で敵がいないと確認された範囲の場所に設けることだった。
いつまでもフォトンの城壁で攻防戦を行っていてはいつ避難民に死傷者が出るか分かったものではない。私はジョンに約束した通り、ジョディを安全な仮設住宅に住まわせ、そしてその身を守るのだ。
前進基地が設営されると、いよいよスワームの生産だ。
今回の作戦の要となるユニットはふたつ。
ひとつは圧倒的質量で敵を薙ぎ払うドレッドノートスワーム。これは大型受胎炉で生産され、既に戦列に加わっている。ドレッドノートスワームを見たマッケンジー大統領の反応は面白かった。
次に作戦の要となるのは──。
「飛翔肉巣、設営完了」
飛翔肉巣。アラクネアの航空ユニットを生み出す施設だが、アラクネアの初期航空戦力は貧弱なので滅多に使うことはない。
だが、今は状況が違う。
私たちは上級ユニットをアンロックしていることに加えて、相手はネクロファージだ。ネクロファージには対空戦力はあっても航空戦力はない。空と空で戦うことはなく、一方的な対地戦闘に従事できるわけだ。
そして、そのアラクネアの上級航空ユニットとは──。
「ヴァイスクイーンスワーム、生産」
私が命じるのに飛翔肉巣が蠢き、巨大なスワームを吐き出した。
形は蜂に似ている。巨大な蜂だ。だが、その下半身は毒針の突き出たそれではなく、蜂の巣のようになっていた。その蜂の巣も巨大で、ひとつの穴に人がまるまるひとりは入れそうな大きさをしている。
これがヴァイスクイーンスワーム。私の切り札だ。
このヴァイスクイーンスワームの能力はその蜂の巣のような器官に大量のフラップスワームを搭載したまま飛行できる空中空母とでもいうべき能力だ。
フラップスワームは攻撃力は低いが、高速移動でき、群がればそれなりの威力を有する飛行ユニットだ。これはニルナール帝国のワイバーンを相手にしては勝てなかっただろうが、飛行ユニットのないネクロファージ相手ならば絶大な効果を出す。
ヴァイスクイーンスワームはそのフラップスワームを30体格納でき、更にフラップスワームが攻撃で失われると、自動補充してくれるという効果もある。
そんなヴァイスクイーンスワームを私は8体生成しておく。これで空からの有効な攻撃が叩き込めるはずだ。
残りの資源はハイジェノサイドスワームとフレイムスワームの生産に回した。ドレッドノートスワームとヴァイスクイーンスワームがやられることはそうそうないので、もう1体分残しておく必要もないだろう。
「さあ、いよいよだ」
「反撃ですね」
私が告げるのに、セリニアンが頷く。
「そうだ。反撃だ。我々はいよいよ打って出る。狙いはネクロファージの殲滅。そのためにはまず──」
私は地図を見下ろす。新大陸の地図だ。
「神聖オーグスト帝国を解放する」
私たちの攻撃目標が決まった。
私たちはます神聖オーグスト帝国を解放し、ネクロファージとポートリオ共和国の間に緩衝地帯を作る。
解放されても救われる人間は少ないか、皆無かと思われるが、我々が神聖オーグスト帝国を解放するのはあくまでポートリオ共和国を守るため。私は神聖オーグスト帝国に世話になった覚えはないのでこれでいい。
恐らく神聖オーグスト帝国の住民は全員が傀儡と化しているだろう。そこに救うべきものなどありはしないのだ。
ひたすらに屍の山を切り開いて、神聖オーグスト帝国を解放し、ポートリオ共和国の緩衝地帯とする。それだけの話だ。
「フォトン防衛部隊を除く全部隊は前進せよ。神聖オーグスト帝国に向けて前進せよ。我々はついに反撃に転じるのだ。我らに勝利を、我らに栄光を、我らに誇りを、全部隊前進を開始せよ」
私の号令と共に何千体ものスワームが前進を開始する。
死の都と化した神聖オーグスト帝国に向けて。
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アラクネア、神聖オーグスト帝国に向けて出撃。
ポートリオ共和国の解放を行いながらの前進だが、彼らの最終目的は神聖オーグスト帝国の解放にある。ネクロファージの集中攻撃を受けて壊滅した旧大陸の国家を解放するために私たちは動いていた。
途中の抵抗はあった。
傀儡を操るネクロマンサーが破城槌を準備し、ドレッドノートスワームにぶつけてきた。だが、そんなものでどうにかなるほどドレッドノートスワームは軟じゃない。
ドレッドノートスワームはネクロマンサーたちの無意味な抵抗を踏みつぶし、前進経路を確保する。加えてヴァイスクイーンスワームがフラップスワームを吐き出して、ネクロマンサーを八つ裂きにする。
こうなってしまえば勝利がどちらになるかは分かり切ったものだ。
ドレッドノートスワームとヴァイスクイーンスワームは前進を続け、彼らの障害になるものは全て排除する。ネクロファージにもドレッドノートスワームやベヒモスに並ぶ戦力が存在するはずだが、今のところそれは姿を見せていない。
しかし、ネクロマンサー系列の最上級ユニットリッチーまでもを解放しているネクロファージだ。いつ、私たちの前進を食い止めるユニットが出てきてもおかしくないように前進していかなければ。
ドレッドノートスワームは無敵のようで、大型ユニットの中ではいまいち攻守において他の大型ユニットに劣る性質をしている。まともに他の大型ユニットと衝突すれば、犠牲は避けられないだろう。
今は敵がそのような大型ユニットを繰り出してこないことを願うのみである。
「セリニアン、ライサ。君たちもドレッドノートスワームの前進を補助する役割を。いざ、ドレッドノートスワーム級の敵が現れたときに、損耗したまま敵の大型ユニットと衝突することは避けたいと思っている」
「畏まりました、女王陛下!」
ドレッドノートスワームの前方にセリニアンとライサが躍り出る。
ライサはドレッドノートスワームに打撃を与えることが可能な破城槌を持った傀儡とそれを操るネクロマンサーを最優先で排除していき、セリニアンはレイスナイトの突撃を阻止して、切り倒していく。
ライサの射撃は的確でドレッドノートスワームの行く手を遮ろうとする傀儡は次々に射抜かれていき、ネクロマンサーも発見され次第撃破される。
セリニアンの方も奮戦している。レイスナイトという厄介な敵を相手に英雄ユニットの本当の力というものを見せつけ、高速機動するレイスナイトを1体、また1体と仕留めていく。
セリニアン、ライサ、ドレッドノートスワームに続いてスワームたちが前進する。
ヴァイスクイーンスワームは上空からフラップスワームを放って、フラップスワームの群れがセリニアンたちが討ち漏らした傀儡を排除していく。ハイジェノサイドスワームも、討ち漏らしの撃破に勤しみ、死体の道を作っていく。
「前方にリッチーだ。警戒しろ」
私はライサの視界から見えた光景にそう警告する。
リッチーは実に定石通りに配置されていた。傀儡を肉の壁として厚く展開し、その背後で攻撃魔術の詠唱を始めている。これだからネクロファージは嫌いなんだ。大量の傀儡に効果力の遠距離火力ユニット。
ヴァイスクイーンスワームを前進させたいところだが、リッチーの攻撃魔術は対地対空両用だ。下手にヴァイスクイーンスワームを前進させると、手痛いしっぺ返しを受ける恐れがあった。
ならば──。
「ヴァイスクイーンスワームは現在地よりフラップスワームを放て。フラップスワームは敵のリッチーを攻撃。続いてセリニアン。敵の攻撃がフラップスワームに向いている隙にリッチーを撃破だ」
「畏まりました、女王陛下!」
私に命令にヴァイスクイーンスワームとセリニアンが応じる。
ヴァイスクイーンスワームはフラップスワームを放ち、リッチーへの攻撃を始め、リッチーは自分に群がるフラップスワームへの反撃を開始する。紫電の槍が空に向けて放たれ、フラップスワームが1体、また1体と撃墜されていく。あっという間だ。
だが、それでも構わない。フラップスワームはヴァイスクイーンスワームが生存している限り無限に生み出されるし、それにセリニアンは既にリッチーたちの前に立っているのだから。
「はあっ!」
セリニアンが掛け声と共にリッチーの首を刎ね飛ばし、魔術で反撃しようとしていたリッチーの頭を叩き割る。
1体のリッチーがセリニアンに向けて火炎放射を浴びせてきたが、セリニアンはそれを軽快なステップで回避し、反撃としてリッチーの胸に深々と長剣を突き付け、貫いてしまった。
「いいそ。この調子だ。この調子で神聖オーグスト帝国を解放する」
解放というがネクロファージから解放しても、ここは無人の地だ。私たちはポートリオ共和国のための緩衝地帯を作っているに過ぎない。
だが、これを解放と呼ぼう。不浄なネクロマンサーたちから死者たちを解放するように私はネクロファージに支配された土地をネクロファージから奪還することを解放と呼ぼう。その方がやる気が出る。
我々は進む、進む、前進する。
ポートリオ共和国の本土防衛は幾分かのスワームとワイバーンスワーム、グリフォンスワームによってなされている。ポートリオ共和国が危機に立てば、すぐさま私たちが救援に戻ろう。
だが、そうでないならば前進だ。ひたすらに前進だ。
神聖オーグスト帝国解放までは残り僅かとなりつつある。残るは帝都カーサルを奪還するのみに近い。
帝都カーサルには高くそびえる城壁があるだろうが、我々の障害ではない。城壁などドレッドノートスワームで押しつぶしてやればいいのだ。
しかし、無人の帝都を解放したときに私たちは何を得るのだろうか……。
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