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イクトミ捜査線

「アルジャン……!?」

 名前を聞いた途端、エミルは立ち上がった。

「どうした?」

「……いえ。……なんでも。続けてちょうだい、刑事さん」

「ああ。まあ、そのアルジャンってのが、その界隈じゃ有名な職人でな。そいつが仕上げた銃は、かなりの高値で取引されてることが多い。

 黄金製で、名ガンスミスが仕上げたピースメーカーだ。そう聞けば、高値が付くのもおかしい話じゃ無いだろ?」

「なるほどな……。

 ん、ってことは、イクトミが黄金銃を狙ったのは」

「言ってみりゃ、フランス製だからな。

 これまでにも奴が盗んだ品物は、フランスに関係してることが多い。曰く、ルイ14世のかつらだとか、ナポレオン戦術論の草稿だとか。まあ、7割は眉唾ものだが、残り3割は本物の美術品だ。

 今回の黄金銃も、ギリギリその3割に入るだろう。そしてそれ故、今回の事件を解決し、奴をムショに叩き込めれば、我が連邦特務捜査局の有用性が強く実証されることになる」

「だろうな。そしてその時は、我がパディントン探偵局も依頼を完遂し、評判が上がるってわけだ」

「で、刑事さん?」

 アデルとジェンソン刑事が揃ってニヤッと笑ったところで、エミルが口を挟む。

「肝心の、イクトミの居場所なんかは分かってるの?」

「ああ。これも我が局の『科学捜査』の賜物でな」

 ジェンソン刑事は懐から、一枚の紙を取り出した。

「イクトミの、ここ数ヶ月の犯行現場を記したものだ。奴はここ最近、N州からO州ときて、そしてC州に入った。そしてそれらの現場は」

 ジェンソン刑事は窓の外に目をやり、通りの向こうにある駅へとあごをしゃくって見せる。

「あのワットウッド&ボールドロイド西部開拓鉄道の路線とほぼ一致している。恐らく列車で移動しつつ、獲物を狙っているんだろう。

 と言うわけで、次に奴が狙いそうなのは……」

 ジェンソン刑事が言いかけたところで、アデルがそれを次いだ。

「その鉄道の大株主で資産家兼蒐集家の、メルヴィン・ワットウッド氏の邸宅、か。隣駅だな」

「そう言うことだ」

 と、そこまで話したところで――駅からほとんど一直線に、バタバタと駆け込んでくる者が現れた。

「ぜーっ、ぜーっ……、ど、どうでした? うまく騙せましたか?」

「どうも、ポートマンさん。助かったぜ、おつかれさん」

「い、いえいえ、そんな。……あ、あれ? 刑事さんが……」

「話を付けたところよ。協力してくれるって」

「そ、そうですか」

 しゅんとなるグレッグに、エミルが笑いかける。

「ありがとね、ポートマンさん。あなたのおかげよ」

「あ、いや、そんな、えへへ……」

 一転、嬉しそうに笑ったグレッグを見て、アデルはため息を付く。

「はあ……。依頼人にこんなことを言っちゃ失礼だが、あんた、商売には向いて無さそうだな」

「そんなことありませんよ」

 グレッグはくちびるをとがらせ、こう反論した。

「何一つ失敗せざる者は何一つ行動せざる者って言いますし。失敗してるだけ、成長してるんですよ、僕は」

「はあ? ……まあ、いいや」

 グレッグの良く分からない返答を聞き、アデルは手を振って話を切り上げた。


 4人揃って列車に乗ったところで、ジェンソン刑事が小声で話し始めた。

「奴の犯行は計画的だ。場当たり的に、かつ立て続けに行ったことは、これまで無い。

 まず、ある程度金を持った奴の家を探り、フランス製のお宝と思しきものがあれば狙いを定める。そうして侵入と逃走の経路を確保してから、ようやく仕事に入る。

 そしてその仕事において、奴は完遂するためには殺人も厭わない。このまま放っておけば、ワットウッド氏の身も危ないだろう」

「ああ。密かにワットウッド邸へ先回りし、氏の安全を確保すると共に、イクトミを待ち構えなきゃならんな」

「そうは言っても、いきなりあたしたちが押しかけてきて『殺されるかも知れないから中に入れろ』なんて言っても、門前払いを食うだけよ」

「問題はそこだな」

 エミルたちが難しい顔を並べたところで、グレッグが手を挙げる。

「あのー」

「なに?」

「ワットウッド氏のところですよね? 隣町なので、家族ぐるみで付き合いがあります。僕が行けば多分、入れてくれると……」

「へぇ? あなたも案外、頼りになるのね」

「へへ、どうも」

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