「魔王の試練です」
しばらくしてアクアの案内で僕は、魔王の部屋の前についた。
さすが魔王の部屋。扉がすでにデカイ・・・けど。
『keep out!』
・・・なんか事件現場で野次馬を入れないようにするテープが扉を塞いでる。
引きこもってるとは聞いたけどまさかここまでとは。
「驚いたよね?これが今の魔王の現状。今勇者や奴等に攻められたら簡単に攻略可能だね。さて」
一緒に来てくれたモンブランさんがそういと、アクアが扉をノックする。
「お父様。勇者のアカシくんをお連れしましたよ?」
・・・
「えっと、お父様?」
・・・・・・
返事がない。
何度かノックするがそれでも返事は無かった。
「うーん。これは完全に籠城戦になりそうだ。姫様、アカシくんしばらくしてからまた来よう。籠城しても食べ物がなければ長期戦にはならないからね」
うーん。こんなのんびりしていていいのかな?奴等はまだ攻めて来るだろうに。
僕がそんなことを考えているとアクアが頭を下げて言った。
「・・・ごめんなさい。アカシくん」
僕が驚いていると彼女はそのまま話を続ける。
「わざわざ来てくれたのにお兄様には暴力をふられて、お父様は対面拒否。こんな現状でここに来た連れてこられて困っていますよね?」
「あ、えっと。僕はいいんだけど奴等は今もなお攻めて来てるから、そっちが心配なだけだから」
あれ?そういえば実際には今、どれくらい攻めて来てるんだ?
「あ、アカシくん。その心配なら無用だよ?今は奴等の進行は止まっているんだ。君の友達のお陰でね」
モンブランさんがそう言う。
え?そうなの?
「今の勇者達が奴等が攻めて来た際、撃退しまくってね?奴等もバカじゃなく様子見をしている状態なんだ。だけどそれでもまだ奴等を攻め切れないのは勇者達でさえ奴等に致命的なダメージをあたえられない。だから次に攻めに来る前に僕らで先手として奴等の正体を探る必要があるんだ。けど今のところ勇者達も苦戦はしてないし、奴等もむやみやたらに攻めては来ない。だから焦らずに調査が必要だが早急に進む必要性はないだよ」
うーん。つまり早いことにも遅いことにも今は特に問題はないと。
「それでも早いことに損なことはないんです!それなのに父様ときたら、部屋に引きこもって顔も出さない!無礼な上に、現状も読めてない!そんなんでよく魔王になれたものです!」
アクアさん。めちゃくちゃ怒ってらっしゃる。
「アクア。とりあえず今は魔王も出てこないわけだし、出直そう?僕、今度は魔王城の中をみたいな?」
「それはいい。姫様のオススメスポットなどいかがですか?」
「いいですね。それじゃアクア。いこう」
ガタッ
僕らが扉の前から去ろうとすると扉から音がし、全員振りかえる。
「「「ん?」」」
ガチャン!
!?
突然扉が開き、僕は何かに引っ張られた。
「うわっ!なんだ!?」
「アカシ君!」
ギーーーと扉が閉まる。
僕一人だけ中に入ってしまった。
えっと・・・ここが魔王の部屋の中か?
部屋の中はかなり広く部屋の床一面にゲームやら漫画やらが散らばっていた。
「こっちへ来い」
っ!突然声がした。
僕は声の主の方へ歩いていく。
あれ?けど向かった先には誰もいない。
「ふんぬ!」
「!?」
何かにいきなり何かに押され僕は倒れた。
そのまま何かは体重をのせて背中に乗り僕を拘束する。
だが後ろを見ても誰もいない。
「なんだ!?いたたた!」
「・・・ふん!ヒッキーな俺に簡単に拘束される男が、かわいい娘の護衛か?」
誰もいないのに声だけ聞こえる!?
「・・・姿は見えないけど、あんたが魔王か?」
僕がそういうと拘束が解かれ、また声がする。
「そうだ。俺があ~ちゃんのお父さんだ!」
あ~ちゃん?あっ。アクアのことか。
「はん!よく来たな!勇者のなり損ない」
うわっ。いきなり罵倒されましたよ。たしかに事実ですが。
「話はあ~ちゃんから聞いている。あの変な奴らを調べるもしくは討伐の旅をあ~ちゃんと貴様で行うんだろう?」
「あ、はい」
「ふーん」
姿が見えないせいで顔はわかんないけどたぶんすんごいいやなものを見る目をしてんだろうなーっなんて僕が考えているとコンコンと何かを叩く音がした。
「おい、くそ勇者くん。この音がするところに座りな」
どうやら魔王が床を指でたたいてるらしい。
言われた通り僕は音のする方向に歩き、指定された床に座る。
「そんじゃ~あらためて。よくぞ来たな!へたれ勇者よ!」
・・・それさっきやったよね。いや、なり損ないがへたれに変ったけど。
「俺がこの国の魔王ゴルド・D・サタンだ!気軽にゴルド様と呼ぶがいい」
「え?は、はい。えっとゴルド様?」
うーん。とりあえず名前を聞けたまではいいけど、それよりそのゴルド様どこ!?
たぶん目の前にいるんだろうが、声しか聞こえないから距離も何もわからない。
「あ、あのゴルド様?その差支えなければ姿を見せていただきたいんですけど」
「・・・」
「ん?」
あ、あれ?
「・・・貴様ごときに俺の偉大なる姿を拝めると思うのか?ふん身の程知らずが、それよりも貴様には大事な話がある」
・・・うーん。姿が見えないと見た目僕と壁との会話という痛いシーンに見えるんだけど、そこまで言われちゃうとなぁ。
ちょっとムカついたけど。
僕がそうおもっている中、ゴルド様は話を続ける。
ふと僕は、たぶんゴルド様がいるであろう床のところに何かが動いているのに気付いた。
なんだ?これ?
僕は動くそれをつかむ。ジッパーの摘まむところに似てるような。
「それでお前にはこれから、ん?はっ!?おい、待て!それに触るな!引っ張らないで!」
と魔王様は止めようとしたが時すでに遅し、僕は掴んだジッパーらしきもの引っ張ってしまっていた。
引っ張った摘まみの先にはマントのような黒いぬの男が今まだ何もなかった空間から出てきた。
直感だが、たぶんがこの人が魔王様だ。
なぜ「たぶん」かというと魔王の姿は、筋肉がなくひょろっとした腕、頭は寝癖だらけの鉢巻つき、顔にかかっている眼鏡は最近じゃあまり見かけないのビン底眼鏡と、なんかイメージしていた魔王と大きく違う。ていうかオタク?部屋の感じもオタク部屋だし。
・・・そして僕が魔王の姿に愕然としている中、当の魔王は僕に姿を見られたとたん部屋の隅で震えていた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいさっきは調子に乗りすぎました僕はうじ虫ですごめんなさいごめんなさいごめんなさい~」
えーーー!?ていうかあれ?さっきの威勢はドコに?魔王様?さっきの魔王様は何処!?
「あ、あのすいません。そのマント返してもらえませんか?」
ゴルド様は僕が引っ張ってしまったマントを指差す。
あ、やっぱりこれで消えてたのか。
僕は、はいとゴルド様にマントを返す。
たぶんこのままじゃおびえて話しできなくなるような気がしたから。
ゴルド様はマントを再び羽織るとすぐに落ち着き話す。
「・・・おほん。今見たものは娘達には内密でたのむ」
「・・・はい」
僕もできれば今のはなかったことにしたい。
「というかお前の言う通りこれでは話づらいか?すまん。ちょっと待ってくれ」
そう言って姿の見えないゴルド様はどこかにいった。
部屋のクローゼットの扉が勝手に開いたので、ゴルド様はそこにいることがわかった。
というかゴルド様、さっきより口調が優しいような。
ガチャンとクローゼットが閉まった音がしたので僕はクローゼットの方を向く。
クローゼットから出てきたのは、ビミョーなかわいさ?いや怖さがあるウサギの着ぐるみを着た魔王様でした。
「・・・」
「いやーこういう時のために通販で買っておいてよかった!あっ。ごめんねぇ?待たせて」
さっき明らか馴れ馴れしいウサギが近づいてきた。
確かに姿が見えるだけましだけど。
いや、やめよう。本題に入ろう。
「えっとゴルド様。自分自身が話の途中でアクシデント起こしてしまって申し訳ないんですが先ほどの話の続きをお願いします」
ウサギゴルド様は首をたてに振り、手に持っていた先ほどのマントを僕に見せる。
「ちょうどいい。お前に渡す予定の魔王具の一つ『暗黙暗幕』を交えて説明しよう。お前もさっき見た通りこれは姿を消すことができるマントだ。よくゲームやらアニメやらに出てくる王道のアイテムだが、これがまた便利でな」
「は、はぁ」
これが噂の魔王具の一つ。ん?一つ?
「まぁこいつはこれ以外特に特徴はねぇが・・・これを使って俺の娘の着替えやらお風呂を覗くなよ?」
「は、はい!絶対に覗きません!あの、それより質問が」
今までで一番怖いオーラを感じた。
僕は思ったことを質問する。
「先ほど魔王具の一つとおっしゃいましたが、魔王具は複数あるんですか?」
その質問を聞きゴルド様はキョトンとした顔になった。
「あれ?あ~ちゃん達から聞いてない?俺の魔道具は複数存在する。その数なんと666個だ!」
あー。そういえばアクアが、そんな話してくれてたかも、あの時から驚きの連続で忘れてた。
「って666!?悪魔の数字ですか!?魔王だけに!?てか多っ!」
「ハッハッハッ!驚いたろう?世界広し異世界多しと言えどこんなに最強クラスの武器を持っているのは俺だけだな!」
いやいや、そんな数の武器僕に渡されても持ちきれませんし、使いきれません!
「あー。安心しろ?お前に持たせる時はこの俺愛用のアイテム保管ブック、通称『サタンブック』にいれて持たせてやる」
それならよかった。それにしても。
「あのゴルド様。先ほどから気になっていたんですが、さっきとキャラがちがすぎません?」
そう聞くと魔王は鼻で笑った。
「お前は先ほど俺を見て違和感はなかったか?あんなひょろひょろの俺が仮にも勇者を拘束したことに」
そう。確かに僕は勇者になれなかったとはいえこの世界に来てかなり力や身体能力がアップしてる。それなのに僕は簡単に取り押さえられた。
不意討ちとはいえあんなひょろひょろなら簡単に解放できそうな気がする。
「それも俺の最強魔王具の一つだ。『豪真道』といって一定の時間パワーが何倍にも膨れ上がる。赤ん坊でさえ100キロ以上の力士を片手で持ち上げられるほどにな」
なるほど。それで簡単に取り押さえられたと。
「だがこいつには副作用があってな?これを使うとしばらくの間高飛車になり、さっきのようなバカ丸出しの筋肉バカになってしまう。俺はさっきの自分の悲鳴で逆に落ち着いたがな?」
それで今はさっきより優しいんだな。
「さて簡単にだがこれで魔王具の大体の説明はした。そしてこれからが本題だ。勇者アカシ!我が最強の武器がほしいなら、この俺と勝負しろ!」
魔王様はそう言うと僕に剣を向けた。
えーーー!なんで!?
姿が 見えなくって対人恐怖症で、ブキミウサギな魔王様と勇者じゃない僕との決闘がはじまるのでした。
なんだろう。これ・・・




