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「魔王国、観光です」

 僕たちは城門前で龍車を止め、下車。

 目の前には城下町で賑わう魔物たちとその奥に見えるお菓子でできた城がそびえたっていた。

 ・・・まぁ異世界なら何でも有だよね。魔王城がお菓子の城でも可笑しくないよね。シャレ抜きで。

「なに・・・これ?」

 僕の隣でアクアが驚いた顔で自身の自宅である城を見ていた。

 あ・・・よかった。あれが普通じゃないんですね。ホントによかった。

 アクアがゆっくりと笑顔でこっちに顔を向けた。目は笑ってはいなかったけど。

「ごめんなさい。アカシ君。私先にいっていろいろ準備するから、ナターシャと一緒に城下町を観光しながらゆっくり城に向かって。ナターシャ。アカシ君の案内をお願い。私はちょっとお父様に話があるから・・・」

「はい。アクア様、お気をつけて」

 そういわれた後アクアはダッシュで城に向かった。

「では、アカシ様。ゆっくり観光しましょうか」

「あ・・・はい」


 ということでしばらく魔王城の町を観光している。

 今は昼間みたいで出店が多く開いていて、その店で働いているのは全員、今まで見たことない魔物たちが料理や雑貨を売っていてなんか新鮮だった。

 ん?あれ?なんかあの料理、たこ焼きに似てる。なんかタコ足が出ててウネウネしながら焼かれてるけど

やっぱりたこ焼きか?

「さっきから思ったんですけど、なんかこの町に出ている店、僕たちの世界の出店に似てるんですけど」

「ええ。実はここに出ているお店のほとんどはアカシ様の世界、私たちは「地球界」と呼んでいますが、そこの日本のお祭りをイメージして作られたんです」

 えぇぇぇぇ!日本!?祭り!?あっ!たしかに久々に見たんで気づかなかったけど、あの魔物の子供が持ってるの、祭りの定番の綿菓子だ。

 僕が驚いているとナターシャさんが話を続ける。

「実は、私たち一般魔族も魔王様の力によって地球界までなら逆召喚が可能なんです。あっ、侵略目的ではないですよ?主に異文化交流または観光が目的です。人間に化けられる魔物が地球界の料理や建築なんかを学んでこの国で生かすんです。人に化けられない魔物はほぼ観光目的ですが、ほとんどUMAとしてよく報道されてますね。あっ!ちょうどあそこにいる首の長いドラゴンさん見えますか?」

 そういわれて彼女の示す方向を見る。

 でかいドラゴンが見える。

「あの方、名前をネシカさんと言うのですが、ずいぶん前に地球界のネス湖という湖で遊泳していたら、ネッシーというあだ名をつけられて、報道されてましたね。地球界のテレビに出たとたいそう喜んでいましたよ」

 ネス湖のネッシーここにいた!

 ていうか異世界の生物だったの!?

「かく言う私と姫様もあなたの世界に長期留学しに行ってたんですよ」

「長期留学?」

「はい。当初の目的は地球界で魔王様の引きこもりの離脱方法を調べにいたんですけど・・・なかなか見つからず10年間もの長期にわたる留学していらっしゃいました」

 父親のため10年間留学・・・姫様は僕たちの世界にいたと。

「それからしばらくしてこっちの世界から魔王が再び暴れ出したと報告を受けて、こちらの世界に戻ってみたらこんな状況に」

 ふーん、なるほどね。せっかく平和になったこの世界で魔王ご乱心。それ聞いて戻ってみたら魔王様我関せずの今の状態。アクアも必死になるわけかな。

「アカシ様」

「はい」

 僕はナターシャさんに呼び止められ向く。

 ナターシャさんは頭を深く下げた姿勢になっていた。

「どうしたんですか!?ナターシャさん」

「どうか姫様のことよろしくお願いします。あの人はこの世界の魔族のために必死で今のこの状況を変えるために未だかつて誰も足を踏みいれていない異世界に向かおうとしています。残念ながら私たち一般魔族はそれについていくことができません。あなただけが今姫様を守れる可能性を持った方なのです。ついこの間まで敵と思っていた魔族の勝手なお願いではありますが、どうか姫様をお護りください」

 あ、そうか。彼女にとってアクアは特別な存在なんだな。小さいころからずっと一緒で、10年間の異世界留学にも同行、そんな彼女が見知らぬ土地で僕とたった二人で行く。心配じゃないはずがない。

 しかも相方の僕は勇者になれなかった男、勇者の可能性があるにしたって更なる不安材料には十分だ。

 けど僕は。

「僕なんかじゃ頼りないかもしれませんが、絶対に姫様は僕が守ります。この間まで敵だと思っていた?関係ありません!異世界にいってこの戦いの原因を探って解決!それで無事、元の世界に帰還。それまで絶対に彼女を守ってみせます」

 それを聞きナターシャさんは顔が明るくなり笑顔になって頷いた。

「はい。信じてますよ?勇者アカシ様」


 それからまたしばらく町を観光して城に着いた。

 城はいつまにか、さっきまでのお菓子細工の城から石造りの城に変わっていた。

 城の前には甲冑をきた男二人いた。

 騎士二人は僕とナターシャさんを見て近付き声をかけてき。

「ナターシャさん、お帰りなさい。そちらは勇者様ですね。姫様がお待ちです」

そういうと騎士の二人が開門の掛け声をあげると

『カイモーン』

と顔が出てきた門から声を発した。

この門、生きてんだね。まぁ魔王城の門ならさほど驚きはしないけど。

門が全開し跳ね橋が降ろされる。

「どうぞ」と騎士さんたちに誘導され、僕たちは橋を渡る。

下はよく見る水が溜まった掘りになっている。

橋を渡りきると広場にでた。

広場には王国内で写真で見たゴブリンたちやその他の魔物騎士たちがあっちこっち走り回っていた。だけどその中にはなんか腹がものすごいことになってる人がいた。

「なんだ?あれ?」

「あー。あれが先程のお菓子の城作った張本人です。今回アカシ様の歓迎パーティーの設定を任せていたのですが、あの現状だったので・・・」

罰として城の菓子をすべて平らげたと・・・

「うっぷ・・・いやぁ甘いの怖いなぁ。今は一個のまんじゅうがこわいなぁって昔聞いたラクゴの気持ちがわかる気がするなぁ?げっぷ」

・・・なんか微妙に間違った覚えかたされたネタはさておき、ナターシャさんが彼に近付き言う。

「モンブラン卿。今よろしいですか?」

と声かけられ彼が振り向く。

「あう?ナターシャちゃん~!おっ帰り~?いやぁ歓迎にはヘーゼルとクランベリーのお菓子の家が最強!と聞いたんでね?さらにクオリティーを上げたお菓子の城を魔法で作ってみたんだけど姫様にご褒・・・いやぁお仕置きされちゃって・・・なにか間違ってたかな?」

うん。主人公の名前もお菓子の家が歓迎の儀なのかもいろいろ違います。

心の中でツッコミを入れていれているとモンブランさんがこちらに気付く。

「あんれぇ?もしやそっちの君は勇者くんかな?はじめましてだね。勇者くん。私はこの魔王国の参謀を任されているモンブラン・アリアートです。えっと君の名前は?」

「あっ!はじめまして、只野灯です」

「そうそう!アカシくん!よく来たねぇ!魔王国一同君を歓迎するよぉ!うっぷ」

なんか元気な人だな。お腹が大変そうだけど

モンブランさんはふくれたお腹をよいっしょの掛け声動く。

「姫様は今旅の準備で城内にいるから、案内するよぉ!」

そう言いピョンピョンはねながら進んでいった。

僕たちはそれについていき城内に入った。

中は普通のお城で魔王らしい禍々しいものなどはなく甲冑などが飾られていた。

ふーん。なんかちょっと拍子抜けだな。

廊下を歩いていくと途中から、階段に代わり登って行く。

「・・・!」

階段の上から誰かの声がした。

「お兄ちゃんは許しませんよー!」

男性の声だった。

階段を登りきり上に着くと横の方に扉がありその扉をドンドンと叩く男性の姿があった。

顔立ちもよくイケメンだった。

「お兄ちゃんはねぇ!アクア!お前が異世界に行くのは反対なんだよ!それに加えてまさか人間のましてや勇者なんかと一緒に四六時中一緒だなんてお兄ちゃん、絶対許しませんよー!」

などと大きい声で叫んでいた。アクアさんのお兄さんなのか。てことは魔王の息子?魔王子!?魔王の家系って姫様も王子様も美形だな。

・・・でもなんかあれだね?いわゆるブラコンっぽい。

何てことを考えていると王子がこっちに気付く。

「ん?ナターシャか。なんだ?その品のない男は?」

「こちらの方が今はなしに出た旅のお供の勇者様です」

「はじめまして。只野灯で・・・」

それを聞いた王子が一気に顔色を変え僕につかみかかった。

「貴様かー!俺のかわいいアクアに色目使って取り入り、私の目の届かない異世界へ連れ込み!あんなことやそんなことをしようとしてるクズヤローは!!!」

うわぁ。なんかいろいろ誤解してらっしゃる!そんなことをするきは毛頭ないが、まぁ確かに見ず知らずの男と誰の邪魔の入らない異世界へなんて心配ですよね?妹さん超美人ですしね!

「お兄様!やめてください!初対面でいきなり胸倉掴んで失礼ですよ!アカシ君を放してください」

「アクア!やはり俺がお前と共に行く!国はとりあえずモンブランたちに任せて・・・」

「何を言っているんですか!?国の一大事に王家の一人もいないのでは士気にかかわります!私では戦力にならないから異世界探索を決めたのではありませんか?私の武器では奴らには・・・」

「たしかにそうだけど・・・けどやはり人間なんかと一緒じゃ何かがあってからじゃ遅いんだよ?なんならここで俺の魔力でこいつの旅をここで終わらせてやろう。そうすればあれもお前の手に」

「やめてください!」

アクアが大声を上げ怒鳴った。

「あっ・・・すまん」

 ・・・空気が今だなお下降中。魔族に勇者としてここにきて王子様には殺されかかりそうになっていて、兄妹げんか・・・どうすりゃいいんだ?この状況。

「コバルト様。いきなり旅のお供を瀕死状態にするつもりかい?やめなさい。それに彼もいきなり装備なしで魔族幹部に殺されるなんて最悪もいいところだよ。しかも名も知らぬ者に」

 兄妹の間にモンブランさんが立ち魔王子様に説得?開始。

「けっ!こんな奴に名乗る名などないわ!」

「たく。それではただの下っ端並みの低能だよ?君は一国の王子なのだからそこはしっかりしたまえよ?それに今のところ彼しかあれを扱えないんだ。彼を殺したところでそれが姫様の物になるとは限らない」

 王子はぐっという顔になりしばらく黙ってから口を開いた。

「フン!俺の名はコバルト・デスター・サタン。魔王の息子だ!よろしくはしないぞ!勇者」

「は、はい。只野アカシです!一応勇者です。魔王子殿」

 僕は自己紹介しながら頭を下げ、あいさつする。

「おう。しかし、なんであの最強の魔道具は勇者を選んだんだ?」

 ・・・さっきから何の話だ?魔道具?選ぶ?

「アカシ君。お兄様はほっといてこちらへ」

「う、うん」

「ちょっとまてぇぇぇ!」

 コバルトさんが止めるのも聞かず走り去る。


 廊下を走り行きつく先には大きな扉があった。

「アカシ君。ここです。ここに魔王とあなたを待っているものがあります」

「待っているもの?」

「魔王の使う最強の魔道具「魔王具666」があるんです」

 

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