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無名の剣士  作者: むー
第一章
10/31

9

更新、遅くなって本当にすみませんでした。

拙いものではありますがみなさんに読んでいただけると非情に嬉しいです。

これからもよろしくお願いします

「お前、なんで生きてるんだ……?」


 第一声がそれである、あんまりだ。


 とりあえず、朝の出来事があって落ち着いて話せる場所を探して三人で集まったのだった。

 ちょうど良い空き教室を見つけて、昨日のように机を並べて三人で昼食をとりながら話しをする……のだが弁当には一向に箸が進まなかった。

 

「殺す気だったんですか……?」

「んなわけねーだろ。なんでお前がここにいるんだって聞いてんだよ」

「そ、そんなこと言われても……渚さんが手加減してくれたんじゃないんですか?」

「はっきり言う。そんなことはありえない

 オレは本気を出した、オレの最強の技を出した、オレはこれ以上無いくらいの手応えを感じた。

 はい、これのどこにお前が堪える要素がある? お前は一体何をした?」

「何もしてませんよぉ……」


 質問攻めの渚にすでに泣きそうな瑠璃子だった。

 渚としてはこれだけは譲れない問題だった。

 自分自身の技に関することだ、何をおいてもハッキリさせねばならなかったが、さすがにこれでは話しが進まないので香奈が助け舟を出す。


「ナギ姉ちょっと落ち着いて、一つずつ可能性を考えて整理してみようよ。

 たぶん朝川さんの様子だと覚えてないかもしれない」

「ふむ、たしかに……」

「覚えてないっていうか、本当に何もしてないんですってばぁ!」


 瑠璃子の言葉を完全に無視して二人は可能性を検討し始める。


1、渚が手加減をした。

 この可能性は渚自身、人に向けてリミッター解除するのが始めてであった為、自身が認識してないレベルでなにかしらの手加減があった可能性。

2、打突のタイミングがずれた。

 リミッター解除事態が久しぶりのことなので、思った以上にコントロールできていなかった可能性。

3、瑠璃子が避けた。

 渚が感じた手応えを偽装するレベルの防御・回避力があった可能性。

4、瑠璃子がタフネスガールであること。

 女子ではあるが、長身の瑠璃子なので想像以上のタフネスを持っている可能性。

5、その他

 現状では考えられない何かの可能性。


「と、まぁこんな感じかなぁ?」

「つってもどれもこれも可能性としては低いだろうな」

「たとえば?」

「1については否定できなくはない。ただ、強いて言うならって程度で、

 ぶっちゃけリミッター解除しなくたって、直撃したら瑠璃子くらいはぶっ飛ばせるからな。

 本来だったらオーバーキルに相当するぜ」

「オーバーキル……ですか?」


 瑠璃子が戦々恐々としてる。


「ま、いまさらだけどな。それと2、3についてはありえないとだけ言っておく。

 手応えは完璧だった。もしそれを欺けるくらい瑠璃子が長けているのであれば、オレが負けてる」

「まぁそうだよねぇ。ナギ姉騙すなんて相当の使い手ってことになるもんね。そうなると4か5になるかなぁ」

「冷静に考えるとそれしか無いってくらいだな。さらに言うなら5の可能性が高い。おそらく…………」


 渚はそれ以上は言わなかったが、香奈には思い至ることがあった。

 おそらく、渚が昨日言った『青白いオーラが見えた』ということに関係があるのかもしれない。

 自分たちにもリミッター解除という能力があるのだ、他の人にも何かしら持っていたとしても不思議ではない。

 瑠璃子の場合、自分の集中力を視覚化するくらいのものがあるのだ、身体強化くらいはあるのかもしれない。


「まぁこれ以上は推測だらけになって不毛だな。やめるか」

「ナギ姉がそれでいいなら」

「……?」


 二人だけで納得して瑠璃子はおいてけぼり状態になってしまったが、この際しょうがないだろう。

 実際、瑠璃子自身が何かをしたと思っている様子はないし、さらに言うなら自分がどれだけ非常識なことをしたのかも分かっていないのだ。

 オーラの視覚化だってこの双子だからこそ通じる『方便』みたいなもので、その感覚が他の人に伝わるなど思ってもいない。

 とりあえずこの問題は今の現状これ以上は進めることはできないと判断した。

 瑠璃子と付き合ってればいずれ分かる時が来るだろう。

 

 そんなこんなで本題に入る。

 

「まぁ本題に入ろうぜ、な? 瑠璃子」


 そう言って瑠璃子に話しを向ける。

 内容を言ってないが意味は通じるだろう。


「はい……」

「お前、なんで俺に剣道やらせようなんて思ったんだ?

 そんなに出たい大会なのか?」


 どうしてもこれは聞かなくてはならないと思っていた。

 瑠璃子が本気であるのはわかるのだが、何をそんなに? と、疑問でしかない。

 

 実を言うと渚自身、もう8割がた教える気ではあるのだ。

 ただ、師匠と弟子の認識の違いがあれば、どれだけ上手に教えたとしても望むレベルには到達しないだろう。

 到達できたとしても、恐ろしい程時間がかかることは目に見えている。

 そうなる前に瑠璃子のことをある程度知っておきたいのだ。

 

「あ、あ、あの……」

「うん?」


 いまさらもう急かさない。

 瑠璃子がこんな歯切れが悪いのはもうわかっているのと、おそらく言いづらいこともあるのかもしれないと思っているからだ。

 心の準備ができていても、いざ本人を目の前にして本音を言うというのはやはり緊張するし勇気がいるものだ。

  

「ゴメンナサイッ!!」


 は!? と、渚と香奈は思った。

 いきなり謝られてもわからん。


「え、えと朝川さん? どうしたの急に……」

「本当にごめんなさい! 私昨日嘘ついたんです!!」

「「はぁ!?」」


 二人の合唱になった。

 昨日の時点で嘘をついてるようには見えなかったからだ。


「どういうことだ?」


 そして、渚の目がどんどん据わっていくのだったが、この際しょうがないだろう。

  

「あの、あの、本当は、ただ強くなりたかっただけなんですっ!」


 瑠璃子が意を決したように一気に喋りだす。


「私ずっと剣道ヲやってて、剣道が好きで。でも強くなくって。インターハイでも負けてしまって……そンな時に渚さんヲ知って!

 この人に教えてもラえレば少しは剣道上手になるンじゃないかって思って。それで声を掛けたンです!

 大会に出たいってことは嘘ではありません! ただ実戦経験がほしいって意味でです。

 どうしても本番は緊張してしまって、でも、渚サンに教えてもラえるならソレ以上のことはないんです! 

 ただ『強くなりたいンです』って言ったンじゃ相手にさレないと思って……もっともラしい嘘をついて誤魔化してしまったンです」

 

 支離滅裂でところどころ声が裏返っていたが、瑠璃子にしては頑張ったほうだろう。

 とりあえずこの間は黙って聞いていた。

 だが、最後まで聞いたがこれ以上黙っているつもりもなかった。


「お前、自分がめちゃくちゃ言ってるのわかってるか?

 嘘ついちゃってごめんなさい~。

 でも今の私の言葉が真実なんです~。

 信じてください~ 

 って言われてもな、『ハイ、そうですか』って納得できると思うか? ましてや、強くなりたいんです強くしてくださ~い。

 お前それ仁義に反すると思わねーの!? バカにすんのも大概にしろよ! ……っていや一瞬でも期待したオレはバカだったな!!

 つーことで帰る!」


 普段から言葉の悪い渚でも、特に辛辣な言葉だった。それくらい怒っているのだ。

 意を決して喋った瑠璃子に反論を許さない勢いでまくし立てたのだった。

 さすがにこれでは瑠璃子じゃなくてもショックを受けただろう。

 

 だが、話しを聞いていた香奈も同じような印象を受けていた。

 渚が言ったことがあながち間違ってるとは思えないのだ。

 ただ、第三者だからだろう、もう少し冷静に物事を考えられていた。そのことが瑠璃子にとっては幸運だったと言ってもいいだろう。


「ナギ姉落ち着いてって! とりあえずもう一度座ってよ。

 まだ聞いてないこといっぱいあるでしょう。それ聞いてからでも遅くはないよ」

「いーや、もうコイツから聞きたいことなんて一切ない! 悪いが行かせてもらう!」


 そう言って本当に教室を出ていこうとする渚だった。

 慌てて香奈が袖を引っ張って引き止める。


「ちょっと! 待っててナギ姉。せっかくだから最後まで話し聞こ?

 お互い納得した上で決めようよ。(もったいないって思ったんでしょ?)」


 最後の言葉はテレパシーだ。


「聞く必要ねーだろ。やりたくもない剣道やらされた挙句、『嘘だったんです』じゃ洒落になんねーよ!

 (もう興味失せたつーの、その手離せよ)」

「もう頑固者! いいよ勝手にこっちが聞くから。ってことで朝川さん!」

「ゥゥ……ヒッ、ぁ、ご、ごめんなさい。なんでしょうか?」


 あまりのショックに泣き出していた瑠璃子だった。

 ギョっとした香奈ではあったがフォローを入れる。


「とりあえず、ナギ姉がごめんね。でもナギ姉が言ったことは間違ってないと思うんだ。

 そりゃ、朝川さんにも理由があったんだろうけど、そのことは理解してね」

「は、はい。スミマセン……」


 香奈が謝る必要なんかねぇ! と、渚が暴れだすがそれを押さえ込んで進める。


「んで、いまの話しで気になるところがいくつかあったんだけど、教えてもらえるかな?

 とりあえず一番気になるのが、どうしてそんなに強くなりたいの?」


 先ほどの瑠璃子の支離滅裂な説明ではあったが、一番熱意を感じたのがその部分であった。

 だが、その内容までは喋ってない。

 香奈がその質問をしたとき、渚の中でも一理あると思ったのだった。

 

 ふむ、気が変わった。

 様子を見ることにしよう。

 そう決めて、瑠璃子の次の言葉を待つ体勢になった渚だった。 

 それを察して、香奈も力を抜いた。

 

 そうして少し間を置いてしゃべりだした。

 その言葉が与えたものは、双子が瑠璃子に対しての評価を急降下させるに十分だった。


「い、言えません」


 もう残念だよコイツ。

 

 渚が瑠璃子を見る目は大変厳しいものになったし。

 今までフォローに徹していた香奈も匙を投げそうになったくらいだ。


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