第十三話 ピンクでマジック 中編 6
「何やってんだ。今日は聞きたいことがあって来たんだ」
安の声にいつものような勢いはなく、すでに上ずりかけている。
「実は、女物のピンクのパンツを持っているんだが、誰の物か捜しているんだ。お前ってピンクのパンツ持ってないか」
誤解されそうな言い方だったが、安は気付いていない。
矢守はいつもと違う緊張した安の様子に、悪ノリを始めた。
「あら、安さん。私の下着見たいんだ。いいわよ、待ってて。今ここで、着替えてあげる」
すっとスカートをまくり上げる。
安は慌てて、矢守の手を握って止めた。
「止めろって。違う。そうじゃない。ないならいいんだ。うん」
「あら安さん嬉しい。私の手を握ってくれるなんて」
すっと顔を寄せてくる。
安は逃げるように後ろに下がった。
「もう」
矢守は怒ったフリを見せながらも、心の中では可愛いと思っていた。
「また来るっ」
安は立ち上がって、部屋から出ようとしが、
「私、ピンクの持ってるわよ」
の声に、立ち止まった。
「何だ、あれお前のか。優乃ちゃんのかと思ったよ」
安はほっとしながら、振り返った。
一言多かった安の言葉に、矢守はすぐにくるくるっと頭を働かせた。
「安さん、今それ持ってる?見せてくれない」
「あっ、あぁ、部屋に置いて…」
安は言いかけて思い出した。朝、冬美が来た時に、パンツをズボンのポケットに入れてそのままだ。安はこわごわポケットを探った。
「…!」
やはり、あった。ポケットの中で、すでに半分乾いている。
「矢守、すまん」
安は謝りながら、パンツを取り出して見せた。
矢守はクスクスッと笑いながら言った。
「あんっ。かわいいパンツね。でも、私のじゃないわ」
「お前、持ってるって」
安は動揺した。
「私もピンク色は持ってるって言っただけでしょ。大切にポケットなんかに入れて、もう安さんったら、イヤらしい」
矢守はさらに安を動揺させて続けた。
「いいわ。私が優乃ちゃんに、それとなく聞いてきてあげる」
白黒していた安の顔が、パァッと明るくなった。
「その代わり、来週から一週間、夜付き合って欲しいの」




