第九話 四日目夜 優乃の初手料理 後編 11
優乃が部屋に入ろうとした時、安が「優乃ちゃん」と呼び止めた。
「今日は、いろいろありがとう。お陰で楽しい食事会になってるよ」
安はそう言って手を伸ばし、優乃の頭を優しくなでてくれた。
優乃は安がもう怒っていないことに気がついた。
良かった。
優乃は、ほっとした。
『優乃ちゃん、今日はありがとう。山川の分だけじゃなくって、矢守の分まで用意しているなんて。君は何て細かな所に気がつくんだ』『そんな、普通ですよ』『今まで気が付かなかったよ、君が謙虚で素敵な女性だってことに。僕も見る目がなかった。ごめんね。そんな僕だけど、いいかな』
「優乃ちゃん、いいかな?」
「いえ、そんな、ダメじゃないですけど…」
優乃は、ハッと妄想から覚めた。安が部屋の中を指している。
そうだ、デザートを取りに来たんだ。
「さっ、運ぼうか」
安は、にこやかに言った。
「は、はい」
優乃は頬を赤らめて部屋に入り、デザートのヨーグルトゼリーをガラスの小鉢に盛りつけた。
冷蔵庫にあった材料では、これぐらいしか出来なかったのだ。
ゼリーを大きく切ってヨーグルトと混ぜる。これだけのものだが、味は悪くないし口当たりもゼリーの柔らかさがあって面白い。しかし、こんな簡単なもので安や、みんなが喜んでくれる自信はなかった。
それでも優乃はゼリーの中に入ってた果物を別にとって、最後にヨーグルトの上に乗せ、精一杯飾ってみた。
矢守が「キャー、これかわいいー」と言いながら、スパゲティよりも先に優乃のデザートを食べた。
「いやーん。山川のミートソースより、こっちの白くてドロドロしたのがおいしー」
「こら、エロ魔人。普通にヨーグルトって言え」
「矢守さんって、だからエロ魔人って言われるんですね」
「優乃ちゃん。これ美味しいよ」
「うん、美味しい」
優乃のデザートは好評だ。そこに冬美が割って入って来た。
「ここに、アイスクリームとシリアル入れるとパフェっぽくてよくありません?」
「なるほど、それもいいね。でも材料があればね」
「だったら、ハチミツかけてもいいんじゃないですか」
「冬美ちゃん、なかなかいいアイデアだすね」
「意外とデザート上手なんだ」
いつの間にか手柄を取られる、悲しい優乃であった。




