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第六話 三日目夜 宴会編 5

 「そうだな。ま、キリはつかんか。山がまた寝たから、今すぐって訳にはいかんな。もう少し待つか」


 「私、知らないわよ」


 「山、背負ってあの坂上りたくないだけだ。僕も知らん」


 他人事のように二人は淡々と話す。


 「さっきもチラッと出たけどさ、恵ちゃん結構ヤってるんでしょ。優乃ちゃんみたいな子、あぁいう話ばっかりされたら泣き出すか怒り出すかなのよね」


 「そう言うものなのか」


 「そうよ。あのぐらいの精神年齢ってそう言うものなのよ。一度ヤったりすると化けたりするけどね」


 「へー、そりゃ困った」


 「あんた、全然困ってないでしょ」


 「いや、早めに切り上げないと、とばっちり食うかなって思ってるよ」


 「じゃあ、もう少し困った顔したら」


 「助けてくれるのか?」


 「する訳ないじゃん。あんたモテるみたいだし」


 冷たく突き放す雪。安は動じない。


 「モテるっ言うのは、本人からすれば、好きな子とか好みの子から言い寄られたらモテてるなって思うけど、別にそうでもない子から言われてもな」


 「それっ、どういうことですかっ」


 優乃がガバッと身を乗り出してきた。


 「安さん、私の事好きじゃないんですかっ。好きなんでしょ。なのにどうしてそう言うこと言うんですか。ヒドイですっ」


 「安、泣くわよ」


 雪が肘でつついて、安に合図した。


 「分かった。まず会計だ。そしたら話すよ」


 「そんなんじゃごまかされませんよっ。安さんこの際、私のこと好きって言って下さい。ホラ、山川さんも起きて、私に告白して下さいよ」


 山川の肩を激しく揺する優乃。


 「ねんねじゃダメなのよ。女の魅力はね、体も使わなきゃ」


 矢守が勝ち誇ったように言う。


 「一人二千円でいいわ」


 冷静に雪が言った。


 「あなた、二千円じゃイヤでしょ。私、山っちなら二千円でもいいわ。安さんならタダでOKよ」


 「何言ってるんですか。私は愛があれば、お金なんていりません」


 「Hの次にIがあるって知らないの」


 「はい、二千円ね」


 矢守と優乃のやり取りをまったく無視して、雪がお金を徴収する。


 「おい、山。起きろ。二千円な。財布から抜いてくぞ」


 安も落ち着いて、起きかけた山川から財布を取って二千円を抜く。


 「雪先生、ホイ、二人分。いいのか一人二千円で」


 「今日、荷物全部運んでもらったからね。後は持つわ」


 「ありがとさん。ごちそうになるよ」


 「代りと言っちゃなんだけど、山川君とそこの二人、頼むわね」


 「ん、分かった」


 靴を履いて、雪は先に会計に向かった。

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