第六話 三日目夜 宴会編 4
「ほれ、まぁ飲め」
安が雪に猪口を渡して、酒をついだ。
それを受けながら、雪は困った顔をして見せた。
「えー、いやよ。後で二人のとばっちり食うかも知れないじゃん。あんた責任とってくれるの」
「あぁ、とらん」
はっきり言う安。
「ま、いいけどね。たいしたことなさそうだし」
雪も肝が太い。
一方。
「そうでしょ、山っちも安さんも、はっきり言わないのが悪いのよ」
矢守がチューハイをあおる。
「隠すなんて、男らしくないですよね」
優乃もぐいっとチューハイを飲む。
「隠すのはいいのよ。態度って言うか体で示しなさいよってことよ。つくもんついてるんでしよ」
「何言ってるんですか、やらしいですね。乙女の夢はキスですよキス。ロマンチックな口づけ」
「あんたはだからねんねなのよ。体が一つになって始めて、心もつながるのよ」
「だったら口づけも一つになってるじゃないですか」
「ふぅー」
矢守は子供の相手はしてられないとため息をついた。
「私はね、安さんと夫婦の約束を交わしたのよ」
「えぇっ」
優乃の目が大きく開いた。
「そっ、そんなこと聞いてません。それは間違いです」
必死になって言う優乃に、矢守も大きく頷いた。
「そうなのよっ。安さんったら仮面夫婦でもいいって言うのに、イヤだって言うのよ。もう何とかしなさいよっ」
「それは矢守さんがエロ魔人だからですよ。何ですかっ、さっきの体が一つになってだなんて。安さんはもっとプラトニックなんですよ」
「プラトニックっ」
突然山川がむっくり起きあがって叫んだ。
「プラトニックって言うのは、プラトン的って意味で、皮肉屋の言う所の首から上の恋って奴で、いわゆる哲学のー」
「あんたは寝てなさいよっ。この優柔不断っ」
何が優柔不断なのか矢守は自分の飲んでいたチューハイを、机越しに無理矢理飲ませて山川を眠らした。
「山川も不憫ね」
生のキャベツをかじりながら雪は言った。
安も一緒になって食べている。
「仕方ないだろ」
「ねぇ、そろそろお開きにしなくていいの?この調子だとどっちかが泣き出すか、同じ所回り出すわよ」
熱燗を雪に酌し、自分も飲んで安は答えた。




