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アルテミス〔弥生の木の下で〕
「アルテミス〔弥生の木の下で〕」
桜の木をなんと見る?
ぴーんと冷たく張りつめた弥生の空気の中で、
枝じゅうそこかしこに芽をふくらませているやつをさ。
あいつは欲情しているんだ。
いまだ寒空のもと人間たちは襟を立てて、
小さく縮こまっているというのに、なんて太いやつだ。
やがて咲く絢爛豪華な桜花と云ってはお高くとまりやがって、
芽吹く寸前のおまえの姿は、欲情に乳首を張らせた人間の女のようだ。
スーツとタイトスカートで身を包み、わたしは貞淑な女でございとばかり、
ハイヒールのスタッカートを道に鳴らして行く、世の法度に面従腹背な、そんな女。
老いぼれた冬の、弥生の冷たい空気に合わせて、
花一つ、葉一枚さえつけていない、
今は、今だけは、一見つつましやかな桜の木…




