用心棒と調達屋
ここにくればまともな銃器が手に入るって聞いたんだがな。なんでいきなり銃を突きつけられてるんだ。
俺が欲しいのは銃と弾であって銃弾を直接ぶちこんでくれとは言ってねえ。
指定された場所に着いたと同時に飛んできたメッセージの指示に従ってコンテナに入ったとたんの出来事だ。
ドアの陰に立ったスーツのおっさんがグロックを握って鋭い視線をこっちにくれてるんだもんな。
警戒していなかったわけじゃないがちょっとばかり後ろ暗い買い物をしにきたらいきなり命を握られているとは想像しないだろ。
「んで、あんたが用心棒を名乗ってる、なんでも屋の相方か」
「そういうあんたは調達屋のタカギさん?」
軽口をたたくとイヤそうな表情が返ってくる。
「名前を出すんじゃねえよ。このご時世、誰に聞かれてるか分かったもんじゃねえんだ」
視線をあたりに飛ばす。
「ここに来るまでミリタリーコートの集団くらいしか見かけてねえぞ。背中に町内会って書いてある奴らだ。……敷地の入り口からかなり歩かされたぞ」
「そいつらも含めて聞かれたくねえことの一つや二つ、誰にでもあるだろうが」
ため息一つ。
「で、注文は銃だったか? ここの政府管轄は銃器にうるさくねえがよそに持って行くなら気軽にテイクアウトって訳にはいかねえぞ」
コンテナの奥に応接セットだろうか、古びたソファとローテーブル。そちらに案内されてソファに座る。同時に缶飲料をこっちに差し出してくる。
「こいつはどうも。商談とはいえコーヒーが出るとは思わなかった」
ついにやけてしまう。慣れ親しんだブランドだったからだ。
「買い置きが腐るほどあるんだ。それになんでも屋の紹介だからな。あいつ経由なら信頼はともかくひどいことにはならねえ程度の信用はできる」
なんでも屋、へんな所にコネを持ってるんだな。裏家業は長いと思っていたがそれなりにしっかりやっていたようだ。
「通販会社の件でも商売させてもらったからな。AR4丁と弾は役に立ったか?」
コーヒーをあおりながら表情を変えないように気をつける。鎌をかけてきているのか事情を知っているのか。
「あんたが騎兵隊だったか」
曖昧な回答でお茶を濁す。
変な表情が返ってくる。ミスったか?
「箱入り新品のAR-15、ショートクローン3丁と長いの1丁だろ? おかげで助かったぜ。あれがなきゃリロードしたショットシェルをジップガンに詰めて担いでたところだ」
「あの時は大急ぎで在庫をかき集めて送ったが、ギリギリ間に合ったようだな」
「メーカーもバラバラだったが操作系は同じだったからどうにかなったさ。ARの在庫があるならまた売ってくれ」
タバコに火を付けながら答える。
「アレじゃ足りねえのか。今度はどことやり合うつもりだ?」
調達屋が怪訝な顔をする。
「買い足しってわけじゃない。前のは全部鋳つぶしたよ。企業テロに使われたブツだからな。辿られちゃそっちも困るだろ」
そういうことか、と納得顔に戻る調達屋。
「そういうことなら用意する。といっても3、4丁が限度だぜ?」
「品質がまともならかまわんよ。できればミルスペックのフルオート付きにして欲しいが」
言うだけならタダだ。
「すぐに出荷できるのはショートモデルのARピストルが2丁くらいだ。ステイツ本国の法改正で不人気になったからな。こっちじゃ規制されてないから好きにできる。さすがにフルオート付きじゃないけれど、オート化するパーツだけならある。どうせなんでも屋が弄るんだろ? 組み込まずに別送してやるよ。それにロングモデルなやつもバレルだけ在庫してる。これもそっちで組み上げるならまとめて出荷できるぞ」
「たのむ」
法律がどうなってるかは知ったこっちゃない。手に入るならそれでいい。メンテから組み立てまで自分も一応座学で習った。パーツがあるなら問題ない。こういう時は警備員をやっててよかったと思う。銃が必要な状況になったのも警備員だったからだが。
視界の隅で調達屋が端末を叩く。
「在庫も便も確保できそうだ。ほかに注文は?」
「ハンドガンを持ち帰りで3丁。グロックの17か19系で予備のマガジンと弾も。それとは別にグロックのパーツも3、4丁分、ARと一緒に送ってくれ」
調達屋が端末を確認して在庫を漁る。
「すぐに持ち帰れるのは19が一丁だけだ。グロック34や36みたいな45口径モデルならあるけどどうする?」
「いや9mmのほうがいい。ここで組み立てていきたい」
「そりゃ構わねえけどな。泊まっていくとか言い出さねえよな?」
「グロック系を組むのは慣れてる。細かいすり合わせが必要な45オートじゃねえんだからそんなに時間はかからねえよ」
肩をすくめて調達屋がマイクに呼びかける。
「ID屋、101番コンテナからグロック19を一丁と9mmGのパーツを二箱もって来てくれ」




