表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近未来SF短編集 in United Corporation of JAPAN  作者: あのワタナベ
0011

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/97

潜入屋 商談


 ゆっくり歩く。


 視線を固定せずに。

 周りの人間とリズムを同期させて。


 オフィス街の人混みの中、スーツに身を包み、バッグを持って歩く。自分はそこらにいるビジネスマン(さらりまん)だ、と言い聞かせて。


 目的のビルの前。腕時計で時間を確認。

 ちゃんとしたビジネスマンは腕時計を持つものだ。いちいち端末をのぞきこんで時間を確認しない。


 ため息一つ。時間のきっかり三分前。


「どうも。14時に企画課のサトウさまとお約束をしている、タカダと申します」


 接客ドロイドに定型文を投げかける。


「ようこそいらっしゃいました。サトウは124番会議室です。奥のエレベータで12階にお上がりください」


 そう言われ、同時に蛍光色の案内(ナビ)ラインが床に浮かび上がる。


「失礼します」


 軽く会釈。


 顔は書き換えているが緊張する。録画されているんだろうな。



 エレベータに乗ると視界が白く染まる。スキャンされているのだろう。可視外視覚を入れているとこういう時に面倒くさい。眉間をみながら軽くため息。

 今日は危険なものを持ち歩いてはいない。警戒させてもしかたないからね。


 ポーンという音と共に「12階です」というアナウンス。


 エレベータの扉を出ると床に案内ライン。121、122、123、124。ここだ。

 ノックして部屋に入る。


「失礼します」


 奥にはダブルのスーツに身を包んだビジネスマン。クラシックな腕時計が袖の奥に光る。


「や、どうも。タカダさん、でしたよね。おかけください」

「お世話になります、タカダです」


 そう言って名刺を差し出す。クラシックな様式美(おやくそく)というやつだ。アポを取る時に、既にデータを送っているのでやらなくてもいい。だがちょっとしたことで印象が変わる。


「これはこれは」


 お互いに会釈をしつつ名刺交換だ。


 名刺にはヒシイ産業の社名と企画課 サトウ ユウジの名前。それに2Dコード。会社の連絡先情報が圧縮して記載されている。


「今回はどういったご用件で?」


 ソファに座ったサトウさんがてのひらで席を勧めてくれる。

 ゆっくり座りつつ切り出す。


「ビジネスです。買い取ってほしいものがありまして」


 そう言うとバッグからメモリーカードを出してみせる。スーツのポケットにも入るが、バッグから取り出すほうがそれらしくなる。

 テーブルに載せる。同時にバッグから概要を記載したハードコピーを出して相手に差し出す。


 サトウはハードコピーに目を向けると、とたんに視線が鋭くなる。


「どこでこれを?」

「ちょっとしたコネがありまして。完品(カンピン)で機能していますが、問題は生きてまして(・・・・・・)


「わざわざ我が社(うち)を選んだ理由は?」

「共通の知り合いがいたので。ご迷惑ならよそに持ち込みます」

「……ちょっと待ってくださいね」


 そういって懐から出した端末(デバイス)を操作。

 数秒後。


「上長の決裁が通りました。うちのエンジニアと弁護団を出しますよ。おいくらでお考えですか?」

「50万と代替器官に手術とケア。先方さんとのゴタゴタを背負っていただけるのであれば即決です」


「そうですか。金額とケアなどは問題ないんですがね、先方とのネゴもうち持ち(・・・・)ですか……」


 ちょっと考えるような表情を見せる。でももう腹の中は決まってるんだろう。あとはちょっと押してやるだけだ。


「商品はあくまで商品でして。今の持ち主は無難な生活を望んでるんですよ。ご迷惑なら……」


 そこまで言った所で相手が折れた。


「分かりました。精密検査から入れ替え、その後のケアまで一切をうちが持ちます。他社へいっさい話を持っていってないのであれば受けましょう」


 視線がメモリーカードへ向く。分かりやすいなぁ。


「よろしくお願いします」


 そう言ったところでサトウの手がメモリーカードに伸びる。


「それはあくまでゲートウェイへのアクセスキーです。細かいデータと現在の所有者の連絡先は隔離サーバにありますから」


 サトウの視線がこちらを射貫いぬく。


「契約書、作っていただけますね?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ