安宿
ベッドに寝ている。
多人数が同室の安い木賃宿。
カサカサと枕元を虫が這い回る。
時々だれかが虫を叩き潰すパンという音。
蚊のノイズが苛立ちを加速させる。
週に一回は殺虫剤を噴霧しているらしいが焼け石に水。出入りする人間と共に、そして防ぎきれないすきま風とともに侵入は止められない。
ここは地主が用意する不法占有者街よりは多少マシというレベルの安宿だから仕方ない。もう少し出せば一泊10ニューイェンクラスのネット環境個室や20ニューイェンクラスのコフィンホテルが借りられる。上を見ればいくらでもある。贅沢はしようと思えば金の範囲でいくらでもできる。金の範囲で。
そう金が問題なのだ。
屋根があるだけマシなのかもしれない。そう思って明日のことは考えない。自分にあるのは今だけだ。
こんな生活、いつ破綻してもおかしくない。だがその破綻を先延ばしにすることはできる。10年先のことは分からない。そう思っていたガキだったが、今じゃ数ヶ月先のことすら想像できない。
What's the plan?
Do you have any idea?
NOだ。
なにもない。
俺にはなにもない。
あるのは寝床と酒、そしてドラッグだけだ。
意識が深く沈んでゆく。
どうなろうと知ったことか。
明日のことは明日考えるさ。




