零細ドラッグ製造業
うちは品質重視でね。
純国産とはいかないが、ほとんどの原材料はニホン自治政府に所属の企業国家から仕入れているんだ。
うちがやるのは最終工程だけ。死人が出ないように一回分をきっちり二錠や三錠の量にするのが主な仕事ってわけだ。
なんせ30mgだの45mgだのってのをいちいち計ってキメるような薬中はいない。だから一錠あたり15mgになるようにきっちり比率を安定させるのさ。
錠剤のほとんどが無害で無毒なブドウ糖や小麦粉などの増粘剤。一錠で300mgだったら5%しか有効成分は入ってない。でも計量する手間を省くためには錠剤のほうが楽だからな。
爺様の時代には手作業で一錠ずつ作ってたらしいけれど。親父が機械化して、俺の代で量産化さ。
原料の混合だって昔とは大違い。ロットによって品質の差もあったらしいけど、今じゃばっちり均一さ。なんせバッチごとにきっかり二日は混ぜて打錠機にかける。
錠剤は毎分1000錠。一ラインで週に二ロットの出荷ができる。サンプルチェック分やロスも考えるとざっくり860kgのドラッグが製造できるってことだ。
これを三ラインで回してる。梱包やら個別包装やらは小売りがやるから、こっちは箱詰めや、サンプル分の小分けを袋詰めするくらいだ。一ラインに二人いれば回せる量さ。
「おう、そっちの箱にコレ、詰めちまえ」
「あいよっ」
ざらざらとビニール袋に流し込まれる錠剤。
「これ、出荷先はどこでしたっけ?」
あごひげを撫でながら聞く助手。
タブレット端末でスケジュールを確認しながら出荷のリストをチェック。
「これは……ミハマのデリ屋だな。15kgでビニールを閉じたらサンプル一式も一緒に箱詰め。頼むぞ」
「了解っす」
腰につけたプリンタから出てきたシールを袋に貼り、もう一枚を箱に貼るために乗せておく。
「20時の最終便に間に合うよう持ってけよ」
「大丈夫です。覚えてます」
次の袋にプリントアウトされたシールを貼り、宛先のシールを乗せる。
「うちに頼んでくれる貴重なお客さんだ。本当に頼むぞ」
「分かってますって。デリ屋さんのサービス分はちゃんと確保してますから」
「あそこに切られるとヤバいんだよ」
「先方さん、なんかゴタゴタしてるって注文の時に言ってましたよ」
「マジか。支払いとか遅れないでくれよ……」
「そこらへんはきっちりしてますから、割と。他の業者より安定してるっす」
次の袋にプリントアウトされたシールを貼り、宛先のシールを乗せる。
「ならいいけどよ。詳しいな、おい」
「経理のおばさんが、他は遅れることがあるって愚痴ってましたんで」
淡々と袋にプリントアウトされたシールを貼り、宛先のシールを乗せる。助手がそれに記載された量を詰めていく。
一通り終わったらダンボール箱にそれぞれを詰めて、宛先シールを貼っていく。
「新しい客層を開拓しねえとマズいかなぁ」
「健康食品で一山当てますか?」
「今時、そんなもんバカでも買わねえよ」
だれか客になってくれねえか?




