企業強盗 準備2
使う時以外は端末は電源を切っておけ。
そう言って椅子に座る。
いつもの椅子、いつもの位置。
「なんで? 誰かから連絡があったらどうするの?」
聞いてくるのは弟子の小僧。
「連絡はこっちから。常にこっちからだ。相手からの連絡はテキストメッセージ。どうしても、というときだけ」
「そういう時って急ぎなんじゃないの?」
「メッセージが届いたら中継させたサーバからプッシュが来る。それをこっちの回線で受信する」
バッグから取り出した衛星端末を示す。
「こっちならセルラー回線より安全だからな」
「ならサテライトをメインにつかえばいいのに」
「こっちの回線はあくまで非常用だ。常に使ってると枝がつく」
届いた木箱をバールで開けながら答える。
ミシリと木が割れ、真新しい釘が光る。
詰められたエアキャップ。その奥に黒い金属の影。
「おう、用心棒。騎兵隊の到着だ!!」
高まったテンションを声に乗せ、黒い金属を緩衝材から掘り出し、用心棒と呼ばれた男に投げ渡す。
用心棒も手慣れた感じで長物を受け取り、ひとしきり動作を確認する。終わった後、手についた機械油に顔をしかめる。その油は透明だ。
「なんだよ、AR-15もあるんじゃねえか。それにSAIGAも」
「今朝、海路で届いた新品だ。コピー品だがな。一回も使ってないから一通り試し撃ちをしてパーツを馴染ませておけよ」
「あいよ。で、弾と弾倉はどこだ?」
「こっちの箱だ。いま開ける」
おなじくらいのサイズをした木箱。バールで乱暴に蓋をこじると中から三種類の紙箱と樹脂の弾薬ケースが出てくる。
556とだけ書かれた大きめの箱。ポリマーマガジンのイラストが入っている。
同じく.223 Precision MATCH x10とプリントされたボール紙の箱がたっぷり。
さらに12x2 3/4 OOBuckと書かれた箱。いずれもバーコード部分がSAMPLEというステッカーで隠され、製造メーカーの記述はない。
556マガジンの箱を用心棒に投げ、.223の箱を一つ開封する。
「ぱっと見、問題はなさそうだな」
弾が入った箱も用心棒に投げる。
片手で器用に受け取ると中身をマガジンに詰めていく。
30発を詰めると、ライフルに装着し、槓桿をガシャガシャと引いて全部を排莢口から吐き出させる。ボルトフォワードボタンを叩くように押し。マガジンを外して、吐き出された弾をまたマガジンに詰める。
「試射はどこでやればいい?」
ライフルを分解し、中身を検分しつつなんでも屋に問う。
「あとで連れて行ってやる」
見ると、小僧もおなじライフルを持ち、用心棒の動きを見よう見まねでなぞっている。
銃口がこっちを向きかける。
それをなんでも屋が見とがめ、あわてて上から銃を掴む。
「向きに気をつけろ。撃ち殺されても文句は言えねえぞ?」
「ごめんなさい」
「ああ、まず弾無しで使い方を教えてやる。それまではマガジンに弾込めだけしておけ」
用心棒はそう言ったが、なんでも屋がライフルを取り上げ、マガジンを抜き、中に残った弾も取り出す。天井に向けて空撃ち、木箱に戻す。
「まさか小僧も兵力にカウントしてるんじゃないよな?」
「冗談だろ。あいつは情報のサポートにつけるだけだ。その時に自衛用の銃くらいは持たせるかもしれんが」
用心棒が聞き、なんでも屋が答える。
「なんにせよ使い方くらいは教えとかないと危なくていかん。仲間の弟子に撃たれて死ぬなんてごめんだ」
一人、弟子が黙々とマガジンに弾を込める。
「AR-15用の指紋認証グリップをつけた方がいいか?」
思いついたようになんでも屋が聞く。
「じゃまくせえだけだ。使い方をしっかり教えればいいだろ」




