自警団と一匹狼
自警団ががんばってここらも安全になってきたかと思ってたんだがな。
ヤクザが出張ってチンピラに闇銃を売り始めやがった。少々高いが使えはする代物だ。
なんせヤクザに連絡をつけて実際に買ってみたからな。
最初はひどい安銃をバカみたいに高く売りつけられると思ってた。対価は1500ニューイェン。闇銃としては高め。ところが割と使えるレベルのモノだった。
普通だったらステイツで300ニューイェンがいいところの安銃ではあるが、まあ使えるものではあった。ちゃんとバレルはライフリングが掘ってあるし。そんなにはジャムらないし。重いのはいただけないが、代わりにちゃんと当たる。
銃が出回るのはよろしくない。チンピラと自警団の抗争が激しくなってきやがった。ついでにクスリも出回ってきている。アンフェタミンに安いコカインやそのほかの混ぜ物をしてカサ増ししてるようなクソだ。
最初はヤクザが縄張りを広げているのかと思ったんだが。
だって供給しているクスリが第一世代のバトルドラッグだからな。
しかし情報を集めてみると、どうも違うようだ。チンピラを代理戦争の矢面に立たせて、という訳じゃない。金集めを目的にしているみたいな気配だ。銃とクスリを売るくらいで、それ以外は表に出てこない。肩で風を切ってあるく気配がない。
二駅先の別企業国家だとヤクザは我が物顔で幅を利かせているんだけどな。
ヤクザの意向がどうあれ。チンピラの武装は強化されたし、中には皮下装甲を入れてるやつもチラホラ出てきた。
自警団は抗弾プレートを入れたベストにでかでかと「自警団」と書いてショットガンを持ち歩くような状態だ。揃いのミリタリーコートも健在。背中に〇〇町内会と反射スプレーでネームが入っている。
祭りのハッピじゃねえんだから。
俺が携帯しているのはポケットの中のハンドガンもある。が、最近のメインはオートマティックショットガン。市販品を改造してコートの下にぶら下げている。肩から下げておいて、上着の裾をめくればすぐに構えられる。
持ち歩き前提なので元からバレルが短いモデルに5発装填の短いマガジンを挿してある。ストックをたたんでおけば50cmって所か。ギリギリでコートの下に隠せるサイズ。
二世紀前から続いていて今世紀初頭に経済破綻してどっかの傘下に入った連邦のメーカー。そこの前世紀から売られている民間仕様のショットガン。さらにそれをどっかがコピーして作られ続けているという、歴史があるんだかないんだかよく分からないショットガンだ。
そいつを俺はさらにカスタムパーツで固めている。9インチ程度のベリーショートバレルに社外品のハンドガード。もはや原型はどこにいったのか。携帯用には使い勝手がいいんだが、発砲炎が派手でやかましい銃になってしまった。ぱっと見はアサルトライフル。
弾はワックススラッグを自作してショットガンに詰めている。ロウで散弾を固めたワックススラッグは市販品の一粒弾ほど貫通力はない。しかし通常の散弾よりは貫通するし硬い物に当たったらそれなりに砕けるしで他への被害は少なくできる。自作のフランジブル弾というわけだ。ソウドオフショットガン並みのバレルでも着弾が広がらないですむという利点もある。
自作する必要があるけれど、市販のフランジブル弾よりは安いし簡単に手に入る。それに市販グレードの皮下装甲なら十分にダメージを与えられることは確認済みだ。
クレー射撃用の弾を買ってくる。その先端をカッターナイフで切って中の散弾を取り出す。手鍋でロウかクレヨンを溶かし、散弾を放り込み、混ぜてシェルに戻す。注意するのは詰め戻すときにトントンとゆらしてやって、気泡とワックスを少なくすること。そうすりゃ品質も密度も上がる。あとは冷えて固まるのを待つだけ。
わざわざ派手な蛍光色のクレヨンでワックススラッグを作るのは、撃ったのは俺ですよ、という意味合いだ。正義は我にありと宣伝するつもりはないが、誰が殺したかはっきりさせる目的がある。そのために毎回一定の割合でクレヨンと蛍光色の顔料を混ぜて自作しているくらいだ。
手間をかけているおかげで「この色の弾をくらったヤツはやらかしたチンピラだ」と町の人からも企業警察からも認識されている。人間を撃つのは自衛の時だけだからな。それは防犯カメラも証明してくれている。
俺を騙った誰かがいたとして。企業警察に俺はこのショットシェルしか作ってねえ、レシピはシーズン毎に微妙に変えている。と言い張るつもりだ。そのためにいつも同じメーカーの同じ弾薬しか買い込んでいない。メーカー製の市販無煙火薬にはマーカーが入っている。
いつ頃どんな弾薬を使ったかは銃を調べれば分かることだ。火薬のマーカーもスラッグのワックスもバレルに残る。あとは現場の防犯カメラや被害者の弾痕。同じような格好で同じような銃を使った犯人がいたとして。ほぼ完全に同じ痕跡を使った銃と被害者に残せるかな?
まず不可能だろう。そしてそれを指摘してくれる弁護士や企業警察の鑑識にきっちり顔をつないでいる。どの時期にどのレシピで作った弾を持ち歩いていたか記録したデータも複数のクラウドと貸金庫にきっちり残しているからな。
殺すときは相手が誰だろうと遠慮なく殺すが、殺してもいないやつの犯人として捕まるつもりもない。そのための用心だ。
過剰な火力を持ち歩く気はない。ただ現状ではこのくらいのやつを持ち歩いていないと不安になる治安の悪化具合。
ままならないね。




