インディペンデント系AI開発業
AIってのをちょっといじってみたけど、これ面白いね。
何回もいろんなパターンを繰り返させるだけで、いろいろ最適化してくれるっていうか。自然な感じに落ち着くっていうか。なんか無駄っぽいところもあるけど、繰り返せば繰り返すほど馴染んでくる。むりやり無駄なところを削ってやってもいいけど、なんかしっくりこない。
そんなことをなんでも屋のおっちゃんに言ってたら。
「そりゃ学習した結果が反映されて、そうなってるんだから無理やり削ってもまた出てくるもんだ。それが本当に無駄なら学習させるためのデータが間違ってんだよ」
とか言われた。用心棒のおっちゃんの強化神経AIはおっちゃんの動きを学習してて変な無駄が出るってことはおっちゃんの癖ってことなのかな?
「もしくは現実的な状態で学習させてないってことだ。歩かせたいのにスキップのデータを入力するようなもんだ」
「街を歩くデータが欲しいのに階段を上り下りさせるようなものかな」
「そうだ。毎日歩く場所を歩かせないで、ビルの階段を上り下りばっかりさせてりゃ、そりゃまともなデータになるはずがない」
「ついでに筋肉痛、と」
なんとなく分かったような分からないような。
「めったにやらないことは上手くいかないし、できないだろ。たとえばお前、そのゴミをそっちの箱に投げてみろ。しょっちゅうやってたら上手くいくし、あまりやってないなら入らないかもしれん。そんな感じで人間もAIも慣れだ」
ふーん、と納得したフリをしておく。もとのきっかけと結果を入力して学習させてるのはどうなんだろう?
今は上手くいってるからいいのかな。自然学習モードってのを使おうとした時はおっちゃんにとめられたけど。
「それは変な学習をする可能性があるからな。入力されたデータを溜めておいて端末で処理して学習させてAIチップに反映させたほうが安全なんだよ」
「どういうこと?」
「AIにへんな癖をつけないためだ。人間側が学習しちまうことも多いからな。めったにない状況や、ノイズが混じったデータでAIを学習させると使いにくくなるんだ。それに人間側が慣れちまうとやっかいなことになる。癖がつくってやつだ」
「だからソフトのアップデートって形で学習を反映させたバージョンアップをさせてるんだね」
「そうだ。自然学習モードで変なデータをむりやりぶち込んで学習汚染させるハック方法もある」
「なにそれ、面白そう」
「お、坊主がなんかはしゃいでんな」
と言いながらあくびをかみ殺して出てくる用心棒のおっちゃん。
寝癖がついてる。
「こいつにAIの事を教えてたんだ」
「ん、また足のアップデートか?」
「いや。AIのハック方法」
「また俺をモルモットにするつもりか? 勘弁しろよ」
とため息をつきながらコーヒーを呷る。
「またコーヒーだけ? 朝ごはん食べないの?」
「自然のコーヒー、これ以上の贅沢はねえだろ」
「せめてパンくらい食べなよ。また胃を壊すよ」
「そんときゃ胃薬でも飲むさ」
「俺の金で買うつもりか? 健康のために飯を食えよ。じゃなきゃコーヒーを禁止して完全栄養食を飲ませるぞ」
「それは勘弁してくれ。カフェインが俺を離してくれないんでな。寂しがる」
「ただの中毒だろうが」
「お前のメタンフェタミンよりはマシだ」
「アンフェタミンだよ。最近はモダフィニルかメチルフェニデートしか使ってねえ。くそ忙しい古巣時代よかずいぶんマシになったもんだぜ」
「なんだかよく分かんないけど、あんまりよくない話っぽいね」
「ああ、お前はおクスリのお世話になるんじゃねえぞ。人生のランニングコストがバカみたいに跳ね上がるし、体力の前借りの利子がクソみたいに跳ね上がる」
といっても使わないと死ぬって時はあるんだよねぇ。使って寿命が縮むのと、使わないで死ぬのとどっちがいいかって言われたら、そりゃ使うよ。




