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近未来SF短編集 in United Corporation of JAPAN  作者: あのワタナベ
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技術屋

2024ー09ー04 表現改訂


「いようコミュ障技術屋ぁ。ちゃんと仕事してるか」

「うるさい、邪魔するな、ヒゲ親父。五分黙ってろ」

「おうおう、おっかねえなぁ」


 軽口をたたきながら地元の顔役(フェイス)が無遠慮に入ってくる。


「黙れ」


 モニターの横にある銃に手を伸ばす。


「あ? 脅す気かぁ?」


 ヘラヘラと笑ってフェイスが軽口を叩く。

 無言でドアに銃を向け、引金を引く。当てるつもりないが脅しにはなる。


「てめえなにしやがる!! ……ちくしょう、マジで弾(ハジ)きやがった!」

「黙ってろと言った。もう一度だけ言う。五分黙れ」

 そういうとモニターに向かい作業に戻る。

 一段落つくと。


「グダグダ言わない約束だからあんたを窓口(フェイス)にしたんだ。ノッてるときに邪魔するな。

 で、何の用事? 今の仕事は期日までに上げるって言った。あんたはそれを待てばいい」

「……次から仕事を回さねえぞ?」

「目障り。次に邪魔したら警告無しで殺す。あんたからじゃなくても仕事はある」


 ハッタリだったがしばらくは仕事無しでも食うには困らない程度の蓄えと伝はないこともない。


「へぇへぇ、分かったよ。次からアポを取りますよ」

「集中してる時に邪魔をしなければそれでいい。で、何?」

「ったく。最近出回ってるアレ、なんとかいう信号を出して警備ロボを足止めするやつ、手に入ったから持ってきた」

「EMP(ノイズメーカー)? 珍しくもないと思うけど。バラして作り方を調べればいいの?」

「いや、作ったヤツを知りたい。手口が知り合いに似てる気がしてな」

「……誰が作ったかなんて分かんないよ。ソフトのソースコードのほうが癖が残りやすいし。アナログ回路で作ってあるんでしょ、どうせ」

「そこらが素人の俺じゃ分からねえからお前さんの所に持ち込んだんだよ」


 ありふれた市販の黒いプラ製ボックスを受け取る。簡単なスイッチと電源表示LED、対象に貼り付けるための磁石しか表には出ていない。

 さっそく分解しはじめる。


「知り合いが作ってたらどうするの?」

「なにかたくらんでるんだろうから一口乗るのさ。それの量産を請け負うでもいいし、警備ロボを潰すなら他にもターゲットがあるんだろうから武器や兵隊を売り込める」

「ふーん」


 磁石をナイフで引きはがし、ネジ穴を探す。使い捨てるつもりだったらしく、ネジ穴は接着材で封入してあった。


「けっこう手が込んでる。爆弾とか仕込んでないよね?」

「爆発したって話は聞かねえな。壊す気なら最初から爆弾を使うだろうし」

「証拠隠滅のための自爆装置とか」

「俺が思ってるヤツならやりかねねえな。アイツは凝り性(アーティスト)だ」

「やだなぁ。X線で中を見たりした?」

「してねえ。さすがにそんな設備も金もねえよ」

「仕方ない。穴あけてカメラを差し込む」


 電動ドリルを用意し、カメラが入るサイズのドリルビットを選ぶ。

 メーカーのカタログを検索し、プラケースの厚みを調べる。


「3mmか。ならこれくらいかな」


 ドリルビットにマスキングテープを巻いて掘りすぎないようにする。


「なんでテープを巻いてるんだ?」

「深く掘りすぎて中の回路を壊したくない。自爆装置を積んでないとも限らないし」


 後半は冗談だ。だがたまにそういう物が仕込んであるものが持ち込まれたりすることがある。用心して損はない。さすがに光学センサーを使って分解したら起爆というほど凝った物でもないだろうけれど。

 なにせサイズが小さい。4インチ端末(デバイス)ほどの面積に厚みが50mm弱。電源とアンテナと昇圧回路を入れたらほとんど隙間(ギャップ)はないだろう。あったとしてアンテナコイル側に多少のギャップがあるだけのはずだ。


 フィーンという軽快な音と共にプラスチックのケースに穴があく。ビットを抜いて。


「……」


 爆発はしないようだ。

 ファイバースコープカメラを差し込み、離れて端末に接続する。LED照明が点灯したはずだが……。

 やはり爆発しない。


「ふう」

「やっぱ爆弾はしこんでなかったみたいだな」


 いつのまにかヒゲ親父は離れた物陰からこっちを伺っていた。


「一人で逃げるな」

「だってアイツならやりかねねえ」

「だって、じゃねえよ」


 ファイバースコープを差し込んでゆく。モニターに内部の映像が映し出される。

 ロックタイでまとめられた太目の銅線コイル。途中で切れた銅線とそれを固定するシリコンホース。スパークギャップだな。線をたどると黒い塊。これは昇圧コイルか。


「だいたい配置は分かった。バラすからノコギリ取って」

「おう」


 作業台に正体不明の箱(ブラックボックス)を置き、ノコギリでバラしていく。文字通りのブラックボックス。その正体が分かる。

 使い捨てのバッテリー、メインスイッチ、交流昇圧コイル、共振用の耐圧コンデンサにコイルアンテナ。最低限の部品類だ。


「思ったより堅実な作り。これだと誰が作ったかは分からない」

「基板も使ってないんだな。製造元から発注者を割り出せないな、こりゃ」

「その心当たりの人って神経質?」

「わりと。なんでだ?」

「使い捨てるものの割には凝ってる。凝り過ぎ。

 コイルはたぶん棒か何かに巻き付けてきっちり巻いてあるし、スパークギャップもサイズがきっかり2.5 mm。カバーは透明で熱に強い接着材を使ってある。

 上げていけばキリが無いけど、手間がかかってる割に量産しやすく、不良も出にくくなってる。なのに汎用部品だけで安く仕上げてる。これなら誰が組んでもバレにくい。

 素人でも作れる回路だけど、この完成品(ゲンブツ)は素人じゃ無理。

 力の入れ所が間違ってる。量産するならどこかの工場に作らせたほうが早いし安いのに」

「……ああ、アイツならそうする。確定じゃないけど八割方アイツだろうな。

 たぶん指紋も出ねえぞ」

「部品は最低限の汎用品、配置は無駄がない。最低一度は試作してる。動作を確認したら一気に量産かな?

 コイルのサイズが気になる……コンデンサの容量も」


 長さを測って納得する。これは特定周波数に合わせた長さ。たぶん対象の警備ロボのセンサーに合わせたEMP(ノイズメーカー)だ。コンデンサは容量表示が削られている。調べれば10%くらいは誤差が出るけど分かる。念のためということか。

 一応はアルミ粉末を振ったり瞬間接着剤の蒸気を当てて指紋を探してみるがやはり出てこない


 これが本物の凝り性(アーティスト)か。


「心当たりの人の連絡先を教えて」


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