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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
再び自室のドア
54/55

…見覚えのある、


白いブバルディアと、紫色のエキザカム。


それに加えて、アングレカムが一輪。


その花束を抱えた腕は、固まっている郁を下がらせ、


後ろ手にドアが閉めた。



「探したぞ」


「なんで待ってなかった!」



「俺様…俺様…」



郁は俺様の胸に飛び込んだ。


俺様は花束を避けさせつつ


郁の背をギュっと抱きしめた。



「ドアが繋がらなかったの」


「あぁ」


「もう行けないと思ったの。」


「あぁ」


「もう…もう会えないんだって思ったの。」


「バカだな」


「だってドアが…ドアが…」


「俺がお前を離す訳ないだろ」


「…うん…うん」



「…俺様…」


「なんだ?」


「私、泣き虫になっちゃった…」


「…いいさ。俺の前だけ泣き虫でいろ」


「うん」


泣き笑いで俺様を見上げる郁。


「そうする」


タジタジっとする俺様。


「ほ、ほら、今日誕生日だろ」


そう言って花束を渡す。



「覚えててくれたんだ!」


「当たり前だろが」


「私もケーキ作ったの」


郁は花束を洗面台に漬けると、


いそいそとケーキの箱を取り出した。


「二人で祝いたかったの」


「そうだな」


俺様は郁を座らせキッチンで


インスタントコーヒーにお湯を注ぐ。


郁は待ってましたとばかり


箱を開けて…笑い出した。



黒猫の顔のチョコレートケーキ。


顔が歪んで、不貞腐れってるように見える。


「力作だったのにな~」


「食えればいい」


「えへへ、でもこれも可愛いからいいや。」


「食べてみて~うふふ」


「お前、共食いって言うなよ。お、美味いな」


…一瞬先を越されたが、美味しいの言葉に


郁は満面笑顔になった。



「お前は俺の横で笑ってればいいんだ」


俺様の小さな呟きは、郁には届かなかった。



「さて、行くか」


「…うん」


大きく息を吸った。



スーツケース、


リュック。


花束。




握られた手…


そっと握り返す。



ドアを開ける。


暖かい風が吹き込んできた。


「行こう。」


「俺達の村へ。」


郁は握られた手を、

そっと握り返した。


「……俺様。」


「花言葉……嬉しかったよ。」


「……うるせぇ。」




















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