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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
非常口
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その日も


普通な日のはずだった。


どうしてこうなってるの?


郁は膝に


たくさんの猫を抱えていた。


「幸せだけど…ちょっと重い」




起きて


テレビをつけて


シャワーして


朝ごはんを立って食べながら


お弁当を作る


お化粧して髪を整えて


着替えて


出勤用リュックに

お弁当と水筒入れて

スマホ持って


忘れちゃいけない

常備薬という名のタバコ持って


バタン 


部屋の鍵をかけて


エレベーターに乗る。


イヤフォンを耳に入れて


「どれから聞こうかな」


スマホの画面を見ながら

曲をチョイスする。



6階建のマンションのエレベーターは

オンボロだった。


止まる時にギシギシって音がする


ちょっと怖いんだよね~

などと思いながら

曲を流す。


♪~


あれ?


…エレベーターが動かない?


1階ボタンは色が変わっている。


再度押そうと手を伸ばしたその瞬間。


ガクン…


「おっと!」


手すりに捕まる。


♫~


「ちょっと!!???」


…エレベーターが止まらない。


感覚ではとうに着いてるはず。


「え?」


階表示は

郁が乗った4階を示している。



だけどこの下へ向かう感覚


「降下してる…」


緊急停止を押す


カチカチと音がするだけで反応なし


インターフォンを押す


「呼び出しもしないって…」


パニック映画の


ドロドロの場面が浮かぶ


エレベーターの壁に貼り付く郁。


「このまま落下して死んじゃう??」


怖い

怖い

怖い


イヤフォンが落ちた。


足元から音が聞こえる


階表示が動き出す…


3階


2階


1階


ギシギシ…


一瞬 浮遊し

エレベーターが止まった。


【開】を連打した。



扉が開く…


郁のマンションのロビー


ダイレクトメールが

吐き出されたように見える

ポストが並ぶ。


「…怖かった~なんだったの?」



コツコツと靴を鳴らして


表の重いドアを開けたら…





森の中だったのだ。


木々が密集していた。



ドアの中はマンションのロビー


目の前は森


何度も

内側と外側を

視線が行き来する。


無言でドアを閉め


エレベーターに向かう


「嘘!」


【点検中につき 使用出来ません】


「階段よ!」


郁は奥の階段へ向かう。


階段がなかった。


あるのは厚い壁。


【非常口】

緑の誘導板の下のドア


これを開けるとまた森なのだろうか?


郁はそっとドアを開けて 

隙間から覗き込んだ。







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