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277話 私たちの秘密作戦

ジークはあっけらかんと言ってのける。


アテナを、殺したかもしれないのに。

ぐったりして、息をしてるかもわからないのに。


「勝手に殺すな!」って、ツッコミを入れて起きあがってよ。



「それはどうでもいいとして。着きましたよ」



黙った私達をよそに、ジークはガラガラと荷車を引いていく。

そして、見えてきたのは塀。


白くて、漆喰がしっかり塗られた5メートル近い高さの壁。

見たことがあるそれは、王宮をぐるっと取り囲むもの。


本当に王宮に連れてきたのか。

だって、ここってあんまり使われてない裏口みたいなところ。


ずっと向こう、たぶん正門のあたりで人の大声が聞こえるのに、ここは人影一つ見えない。


そんな……

今日って原作最後の大激突だし、その戦いもう始まってる。

なのに、こんなぬるっと王宮に近寄れるとか……。



「あの、本当に王宮……ですよね?入れるんですか」

「はい、入れます。というか、入ってもらわないと俺達の動いた甲斐がないというか」

「だって、今は戦い始まってるのに。厳戒態勢のはずなのに、この辺どうして誰もいないんですか?」

「メリーも目の付け所が良くなりましたね。でもそれはもうすぐ……あ、見えましたね」



ジークが指差す先、そこにはまだ壁。

だけど、その壁の上に人がいた。


遠目からじゃ顔は見えない。

だけど、すっごく目立つ赤色のロングコートみたいなものを着た誰かがいる。

それに、風に黒い長い髪が靡いてる。


塀の上に人が立ってるのに、衛兵が来る感じもない。

どうなってるんだろう、ディオメシアの警備。



「おーい!!ずいぶんとお派手なもの着てるじゃないですか。目立ちたいんですかー?」



ジークが大きく手を振れば、その人はすたっと降りてこっちに走ってきた。

その影が近づくと、それは見知った人になる。

私は本当に数年ぶりだけど、誰が来てるのかわかったコマチは荷車からミノムシのまま身を乗り出す。



「ミクサっ!!」

「コマちゃん!」



月光国を支えた、若きボス。

創作上のカッコいいチャイニーズマフィアみたいな、高身長の男。


それが、ジークの言葉なんか聞こえてないみたいにコマチのもとへ一直線だ。

尻尾見えそうで、相変わらず好きな人には仔犬みたいなやつだな……。



「無事でしたか!?あなたからの連絡がないから、王宮に避難させたのは間違いだったかと……!ほんとうに、無事でよかった……!!」

「コマちゃん、そんなにもワシのことを思って……」

「はい……あなたがもし死んだら……月光国民だけでなく、これまで取引を行っていたコネクションがなくなる恐れがありますし」



ああ、相変わらず最高級の鈍感娘だコマチ。

こんなに好き好きアピールしてるのに、七年経っても報われてないのかミクサ。


でもそんなことはどうでもいいのか、ミクサはボスの顔を取り繕って「ワシがやられるわけないからね!」だ。


ミクサを知らないエラ、ガーネティア、ルシアンはちょっと警戒モードだ。

無理もないよね、見た目が胡散臭いし。



「そこまでにしてくれます?もう戦い始まってるんですよ。首尾は?」

「チッ……悪くねえ。けど、異常事態が起きてる」

「何が起きているんですか、ミクサ」

「コマちゃんは大丈夫だよ!ワシらには関係ないし、このクソ愉快犯が全部尻拭いするからね!」

「そういうのいいですからさっさと報告してくれますぅ?こっちは今すぐ殺したくてうずうずしてるんですよ」

「勝手にうずいてろ」

「冷たいですねぇ。同じ腹黒なのに~」



相変わらずの変わり身すぎる。

コマチへの態度違い過ぎて二重人格でしょ。


それにしても、同じ腹黒?

もしかして……。



「ねぇ、今ここに衛兵が一人もいないのはあなたの働きかしら」

「あ?お前、王女サマ、か?デカくなったな、なんで同じ顔がもう一人いるのかは聞いていいのか」

「それは面倒だから、後でコマチに聞きなさい。それで、ミクサはジークと何をしたの」

「何も。ワシ、ずっとレオンに縛り付けられてただけだし」

「不服そうだったんで、ディオメシアの内部から色々手回しして貰いました。やりたいことがあったんで」



横から言葉をさらったジークは、いつの間に服を着替えていた。

いつだったか見たことのある、黒づくめで特殊部隊みたいな、ポケットがいっぱいついた服。


前見た時も思ったけど、一応中世風ヨーロッパ調の世界観なのにこの辺はガバガバだよね。

ド素人の私が書いた世界観だから、別にあり得ると言えばあり得るのかもだけど。



「バカだと思ったよ。だけど、コイツが勝手にやるっていうからな。ワシも、この戦いを最小限にできるなら利益はある」

「それって何が目的なのかしら。わたくしたち、何も知らずにここに拉致されてきたのよ」

「暗躍ですよ、それ以外ないでしょう」



その瞬間、ぶちっと音がして手足が自由になる。

毛布もほどけて、内部の手足の拘束も切れてる。


今の一瞬で荷車に飛び乗ったジークは、転がるアテナ以外の拘束を毛布ごとぶち切った。

その姿にガーネティアとエラはビビってるけど、私とメリーとコマチはそうでもない。

だって、本気を出せばもっとひどくできるのを知ってるから。


これは、割と優しいほう。

だからこそわかる。

ジークは今、真剣に何かを考えてるってこと。



「さて、偽物王女。あなた、この戦いを止めたいとかいろいろ言ってましたよね。無謀で無力で、頭悩ませて悩ませて、寝るくらい」

「あなたが仕込まなかったら寝なかったわよ。余計なことしてくれたわね」

「だから、俺の隠し玉見せてあげます。といっても、仕方なしに成立したもの。入口しか整えてないんで、この後は臨機応変自由行動なんでもありですけどね」



そして、びしっと王宮を指差した。

やけに姿勢よく、クラーク博士か?ってくらいのポーズで。

さっきからずっとジークのターンだから、何が何やら理解する暇もない。


アテナのことといい、ここまで連れてきた意味といい、意味不明なことが多すぎる。



「今、王宮内の警備はとんでもなく薄い。その辺のあれこれは、ミクサが王様とかにすり寄るとかいろいろ、俺が味方のフリして色々しまして」

「あまりに説明がずさんではないこと?」

「どうでもいいんでその辺は。目的はただ一つです」



そして、ジークは全員の顔を見て言い放った。

作戦と言っていいのかもわからない、秘密作戦を。



「これから王宮内部から、この戦いを終わらせる。知ってました?王国ってその気になれば、少人数で転覆できるんですよ。脆ければなおさらね」



じゃあ、まさか、あれか?

ジークは……警備が手薄な今、ディルクレウスを殺せばこの戦い終わると思ってる!?


なにいってんだこいつ!

無理に決まってるでしょそんなの!

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