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276話 私が目覚めたら、すべては始まっていたっぽい ~最終決戦編~

はじめに感じたのは、音。


ガタガタガタガタ

ピュオオオオ~


音がするたびになんか体が痛い。

体がいい感じに包まってるのに、顔だけ寒い。


まだ寝てたいのに、微妙に居心地悪いな……。


気持ちよく寝てたのに、悪路にでも入ったかな。


待てよ?「外」なの?

ここって船の上……じゃない!!


バチっと目を見開けば、空が動いていた。


木々が流れていって、床は動いていて、もしかしなくてもこれは地面で。

癖で飛び起きようとするけど、それはできない。


両手首と足首が、動かないように固定されていたんだから。



「えっ……はぁ!?なんなのこれは!」

「おっ、起きました~?まさかあなたが一番だなんてね。王宮の門前に置き去りにしようとしたたのに残念至極、大人しくしててくれなさそうだ」

「ディアーナ様、大丈夫ですか。体に、おかしなところは」



私は、荷車に乗ってて。

どこなのかわからない周囲には田舎道。

吹きっさらしのなかで、私とジークとルシアンだけが起きていた。


そばには女子のみんなが眠ってて。

ルシアンがなんでか私に甲斐甲斐しく寄ってきて。

おでこに手当てて「熱はなさそうですね、よかった」なんて勝手に安心してる。


普通馬車で引くはずの荷車は、まさかのジークは人力で動かしてた。


いやまっっって?

どういう状況なのこれ。


今もう日が昇って空が明るくて、日付は間違いなく変わってるはずだし。

今日、今日は12/22のはずで。

もしかして、寝過ごした!?



「戦いは!?今の時間は」

「そうですねぇ、ここからならもうすぐ……ああ、聞こえました。ちょうど今始まったんじゃないですか」



ジークの言葉の直後、小さく聞こえてきた。

「わぁぁぁぁぁ」と人々の大声らしきもの。


もしかしなくても、戦い始まるときに気合入れる大声じゃない?

もう、止めたいとかいろいろ考えてたのが水の泡なんじゃない?

さては、寝過ごして今なんじゃない!?



「嘘……うそよ、だって、どうしてわたくしたち眠って」

「ジークさんが、女性にのみ効く睡眠薬をスープに入れてたんです。すみません、止められず」

「俺を悪者にしないでくださいルシアン王。あなただって、俺の目を盗んで助け出すとかすればよかったのに」

「それは……」

「ともかく、あなた方がぬるっと眠ってる間にもうすぐ王宮の付近なんですけど……面倒なので、起こしましょうか」



そういうとジークは一旦止まって、荷車の持ち方を変える。

そして……本当にどうやってるのか意味が分からないんだけど……。


上下に激しく、荷車を動かした!!



「あっ、わぁっ!ちょ、やめなさいジーク!」

「ディアーナ様!!」

「ほらほら朝ですよー!さっさと起きてください淑女たち―!」



両手足は縛られて、さらに毛布でくるまれてミノムシ状態。

揺れに任せてそのまま滑るところをルシアンが抱き留めてくれた。


おかげでちょっとはマシだけど、他のみんなは大惨事。



「えっここどこ!?ゆ、ゆれてっ」

「くっ、何ですかこれは!」

「え?船……じゃない。わたしの船は!?」

「きゃあっ、な、なんですの!?」



メリー、コマチ、エラ、ガーネティアは揺れそのままに片側に寄っていく。

どんどんぶつかって、くっつく姿は本当にミノムシみたい。


それを見かねて、ルシアンがグラグラな中一人一人座らせるように壁際に寄せていく。

王様なのに甲斐甲斐しいよね、すごく女性に優しい。

ジークなら一切止まらないで「あ、酔っても吐かないでくださいよ」としか言わないからね。



「もうすぐ目的地ですよ~起きなくても叩き落すんでご準備を」

「目的地?それより、またやりましたねジーク。月光国のときといい、あなたは一体何がしたいのか」

「コマチ細かいですねぇ。そんな事の一つや二つや百くらい見逃しましょう?」

「ジークさんさすがに私もそれはできないです……」

「おや、メリーにまで言われてしまいました。ちゃんとあなた達が風邪ひかないように毛布まで用意したというのに~」

「これ、うちの船に積んであった備品ですよね。わたし、ちゃんと確認してますから」

「まさかエラに突っ込まれる日が来るとは。さすが『商人女神ライラ』の異名をとるだけある」

「それは恥ずかしいんでやめてください!」



メリーとコマチとエラが元気よくぎゃんぎゃんやってる隣で、ガーネティアは状況についていけてないみたいだった。


そりゃそうか。

だって、ここにいる全員それなりの修羅場をくぐってきた。

武力的でも、交渉的でも、内政的でもなんでも。


でも、七歳になる前にそれと引き離されて、最近まで死んでた彼女には刺激強いか。


この状況で、泣かないでキョロキョロしてて元気なだけいいのかも。



「ガーネティア」

「ぁ……ディアーナ……あの、あれがなくて」

「あれ?何か探しているの」

「ドレス。真っ赤な、シー先生がわたくしにってくれたものよ」



ガーネティアに話しかければ、まさかのドレスの心配。

そう言えば、逃げてくるときもなんか言ってたような。


ディセルが用意したって時点で謀略の匂いしかしないんだけど?


ため息をついていると、ルシアンが「荷物はすべて積んでます。ご安心を」っていう。

なんだかなぁ、危機感がないよ王女様……。


それにしても、なんか足りない。

いつもなら、もっとキレがある会話があるのに。



「……アテナ?」



一人分の声だけが聞こえない。

こんな状況になったとき、真っ先に起きてジークに噛みつきに行くような元気のいい声。

強くて、心も強くて、手も足も出る、案外面倒見のいい……


探せば、すぐにいた。

ただ黙って、抵抗なく一番端にすべっていった私と同じ髪は、ぐったりしていた。

ミノムシのまま、ただ目を閉じて。



「アテナ……?ねぇ、起きなさい。どうして」

「あ、え?もしかしてまだ起きないんですか?しまった、やってしまったかもしれません」

「ジーク、あなた何をしたの」

「アテナにとって危ないことは何も。ただ、常人なら死んでそうな一撃を三回いきました」



悪びれないジークは、そのまま頭を掻いて、こう言ったんだ。

アテナはあんたの愛弟子のはずなのに。

私達の中で一番付き合いがあるはずなのに。


なんでもないように。



「死んだかもですね。力加減間違えました」

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