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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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新潟県新潟市。居酒屋の地鶏唐揚げとビール、日本酒。

 ぶらりと入った新潟駅前の居酒屋でカウンター席に座り、タスッタさんは一人吐息をつく。

 ここのところ、いく先々ではっきりしない天候が続いており、そのせいか妙に体が怠くなっていた。

 席に案内してくれた店員さんにまずは中生を頼んでから、タスッタさんは差し出されたメニューを開いてさて続けてなにを頼もうかな、と、思案しはじめる。

 新潟という場所柄もあってか、お店としてはやはり海産物がメインのようだった。

 確かにおいしそうだな、とは思いつつも、このときのタスッタさんはなんとなく新鮮なお刺身などをいただく気分にはなれなかった。

 もっとカロリーの高そうな、ジャンクなものはないかなーとか思いつつ、メニューをぱらぱらとめくっていくと、ある文字列がタスッタさんの視線に引っかかる。

「地鶏」

 タスッタさんはもつりと呟いた。

 いいじゃないですか、地鶏。

 唐揚げとか、今の気分にぴったりです。

 試しに、今日は唐揚げばかりを注文してみましょう。

 などということを考えているうちに、先に注文していた中生のジョッキが手元に届く。

 そのジョッキを運んできた店員さんに、タスッタさんは地鶏の唐揚げを注文してから一口ぐびりとビールを飲んだ。


 しばらくして、唐揚げが来た。

 揚げたて、熱々のそれをタスッタさんは箸で摘まんで口に運び、はふはふいいながら咀嚼する。

 この手の揚げ物は冷めないうちに、この熱も合わせて味のうちなのである。

 口の中を火傷しそうにしながら唐揚げをなんとか噛み砕き、嚥下して、その熱を冷ますように冷たいビールをまた煽る。

 うん、唐揚げとビールは、よく合う。

 これでなくてはいけない、と、タスッタさんは思う。

 この勢いも合わせての揚げ物であり唐揚げである。

 お刺身か煮物をつついてしみじみと飲むのもそれはそれで格別だが、今日みたいにどこかけだるいときには、こうしたあえて勢いをつける行為が大切なのだった。

 などと思いつつ、タスッタさんはまたひとつ、唐揚げをひとかけら口の中に放り込む。

 表面がサクッとしていて、中からじわりとお肉の汁と熱い油が染み出てくるこの感触。

 スパイスは控え目で、衣の味つけは醤油ベースにニンニクと生姜とお酒、そのうちの生姜がよく効いていた。

 ビールによく合うなあ、とか思いつつ、タスッタさんはひとつ、またひとつと唐揚げを平らげていく。

 そのうちにビールをすっかり飲み干し、お腹の具合と相談してからタスッタさんは店員さんを捕まえて、メニューの中から適当に選んだ地酒を冷やで注文する。

 唐揚げの方はまだまだいけそうだったが、ビールの方を何杯も立て続けに飲むのはさすがにきつそうだ。

 それにここの唐揚げは、きっと日本酒にも合う。

 ことによると、ビール以上に。


 少し冷めかけた唐揚げを食べてから冷酒を一口飲み込んだタスッタさんは、

「ほら、やっぱり合った」

 と心の中で確認をした。

 こういうお店で出す料理であるから、酒のあてにされることを前提としていて味つけは濃い目なのである。

 そして、一品あたりの量も小さめでもあった。

 最初に頼んだ唐揚げはさっきの一片で最後であり、皿の上にはもうなんの料理も残っていない。

 タスッタさんは通りかかった店員さんを捕まえてまた同じ地鶏の唐揚げを注文する。

 栄養のバランスが悪いのかもしれないが、この日はそれで押し通すと決めたのだ。

 たまには、そんな日があってもいい。


 新たに運ばれてきた唐揚げをゆっくりと咀嚼しながら、

「やはりこの唐揚げはお肉の味や弾力が他のものとは違いますねえ」

 とか、思う。

 しかしこの時点で相応にお酒が入っているので、タスッタさんの感覚もあまりあてにはならない。

 タスッタさんは一口、地元の地酒であるとかいう冷酒を口に含んで、その風味を堪能する。

 このお酒もいいなあ。

 まるで果物であるかのような甘い香りが強く、それでいて味はきりっとしていて、あまり甘味を感じない。

 流石は、米どころ。

 日本酒も、おいしい。

 なにより、この唐揚げによく合う。

 熱々の唐揚げを頬張りながら、タスッタさんはそんなことを思った。

 しかし唐揚げとかの揚げ物は、食べ過ぎれば体に悪いと知りながらも定期的に、無償に食べたくなるのはどうしてなのでしょうか。

 基本的にいくら食べても太らない体質であるタスッタさんは、他人事のようにそんなことも思う。

 いやでも、やっぱりこんなにおいしいから、食べちゃうんですけれどもね。

 とか思いつつ、タスッタさんはまた唐揚げに箸を伸ばす。

 まだ十分に熱い唐揚げを咀嚼しながら、ときおり冷酒を啜ってはまた唐揚げに噛りつく。

 好きなものを好きなように飲み食いするのって、どうしてこんなに楽しんでしょうか。


 その後、タスッタさんは唐揚げをさらに一皿、冷酒を二杯注文し、すべて平らげてからその店をあとにした。

 ほろ酔いではあるものの意識ははっきりとしており、あとはホテルに帰るだけであったから、これでなにも問題はない。

 これまでの経験からいっても酔いの方はホテルに着く頃には醒めているはずであったし、それに唐揚げばかりを立て続けに食べたことについても、この程度では胃がもたれることもないとタスッタさんは知っていた。

 今日はお肉ばかりを食べてしまったから、明日は野菜か果物を中心にして食べるものを選びたいですね、とか考えつつ、タスッタさんは今夜泊まるはずのホテルへと歩いていく。



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