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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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福岡県福岡市博多区。空港ターミナル内フードコートの酸辣麺。

 フードコートの雰囲気はどこにいっても変わりばえしないな、と、タスッタさんは思った。

 清潔で機能的で、そして画一的。

 ショッピングモールでもこの空港でも、基本的には同じだった。

 内装や雰囲気ではなく、テナントとして入っている飲食店の質こそがフードコートの内実を決定づける。

 などと思いつつも、その実、タスッタさん自身はフードコートを利用した経験があまりないのだが。

 その福岡空港内にあるフードコート内部を見渡して、タスッタさんは、

「さて、どれにしましょうか?」

 と悩みはじめる。

 ここのフードコートも、なかなかバラエティに富んだ品揃え、ならぬ店揃えになっていた。

 今日の福岡は雨が通過したあとの快晴で、完全に初夏の陽気である。

 空気から湿気が抜けているので不快感こそ少ないものの、タスッタさんもじっくり汗ばんでいた。

 フードコート内をざっと一瞥したタスッタさんの目が、ある文字の上で止まる。

「すーらーめん」

 タスッタさん小さく呟いた。

 その料理をタスッタさんは食べたことがなかったが、字面からしてもなんだか辛そうで、今日のような夏日にはふさわしい気がする。

 よし、試しに。

 と、タスッタさんは思った。


 タスッタさんはトレイ手にとってそのカウンターに並び、酸辣麺を注文した。

「大辛にできますけど」

 という店員さんに断りを入れると、店員さんはその場で普通の酸辣麺をちゃちゃと手早く作っていく。

 いくも待たずに注文をした料理が代金と引き換えにタスッタさんのトレイに乗せられる。

 麺類はこんなときさっと作れるからいいな、とか思いつつも、タスッタさんは空いている席を探してそこに移動をする。

 幸いなことに、午後二時過ぎという時間帯のせいか空席は多かった。

 席を確保したタスッタさんは、一度席を立ち、隅の方においてあったピッチャーから誰でも自由に利用できるコップに冷水を注いで元の席に戻った。

 酸辣麺という料理はおそらくは辛いであろうから、冷水は必須であろうとタスッタさんは判断をしたのだ。


 冷水も用意したところで、タスッタさんはまずレンゲで酸辣麺のスープを一口すすり、そしてその場で盛大に咳き込みそうになった。

 辛味が強いことは事前に予測できたが、それに加えて大量のお酢までが入っているとは思わなかった。

 レンゲを口元に近づけると、熱々のスープに熱せられて気化したその酢の成分がまともに喉を刺激するのだ。

 いきなり麺を啜らなくてよかったな、とタスッタさんは思う。

 もしもそうしていたら、まず間違いなく盛大に咳き込んで麺ごと口の中のものを吹き出していた自信があった。


 改めて心の中で身が構えてから、もう一度慎重にレンゲでスープを啜る。

 辛味が強いが、それがお酢の成分によってかなり抑えられていた。

 酸っぱ辛い感じがして、そのあとにじんわりと複雑な旨味も感じる。

 うん。

 と、タスッタさんは思った。

 これは、おいしいんじゃないでしょうか。

 すっぱりとシンプルなおいしさではなく、複雑な味覚が絡み合った、複合的なおいしさといえた。

 なんか、独特の後味だし、食べたあとにじんわりと顔中に汗が滲んでくる。

 たとえば同じく辛味が強い担々麺などは、その辛味が挽肉の旨味をよく引き出している感じになるのだが、この酸辣麺は辛味も酸味も何種類か入っていて、なんだか奥行きがあるような気がした。

 これはやはり、今日のような暑い日には最高かも知れませんね。

 とか、タスッタさんは思う。


 続いてタスッタさんは、箸を取って麺を持ちあげようとして、そこで動作が固まった。

 スープのとろみがつい過ぎて、麺のほとんどを一気に持ちあげてしまったのだ。

 タスッタさんは一度持ちあげた麺をスープの中に沈め、慎重な手つきで箸を使って麺をほぐしてから、再度、麺を摘まんで持ちあげた。

 今度は無事に、一口で食べきることができる適量の麺を持ちあげることができ、タスッタさんはそのまま口の中入れて、服を汚さないように慎重に啜る。

 途中、やはりむせそうになりながらもどうにか麺をすべて口の中に入れて、その味と食感を確認する。

 麺自体はどうやら普通の中華麺であり、ただしおそらくは麺にスープがよく絡むようにという配慮からか、かなり細い麺が使われていた。

 その麺よりもやはり、スープの味の方が断然印象が強い。

 麺といっしょに口の中に入れて咀嚼していると、辛味と酸味が口の中で暴れている感じがする。

 特にお酢の成分が喉元を刺激し、鼻先から抜けていくような気がした。

 あ。

 と、タスッタさんは、口の中の麺とスープを嚥下しながら、そんなことを思う。

 なんか、新鮮な味わいかも。

 この料理は、いろいろな味蕾を同時に刺激している気がする。

 複雑、かつ重層的。

 全般に素材の味を大切にし、シンプルな味付けを心がける和食のそれとは正反対のアプローチだな、と、タスッタさんは思った。

 食文化違い、よし。


 途中、ハンカチで何度か汗を拭きながら、タスッタさんは時間をかけて酸辣麺を完食する。

 うん。

 やはりこの料理は、夏にいい。

 いや、冬の最中に、盛大に汗をかきつつ食べるのもいいかな?

 とか思いつつ、タスッタさんはセルフサービスのお冷やをお代わりして、口の中を濯いだ。

 辛かったけど、いい体験だった、と、タスッタさんは思う。



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