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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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青森県八戸市。専門店の鯖づくしと日本酒。

 八戸は鯖の漁獲量が日本一であるというので、タスッタさんは立ち寄ったついでにいやというほど鯖を食べてやろうと思いたった。

 スマホでよさそうなお店を検索してみると、本八戸駅から歩いていける場所に鯖料理で有名なお店があるというので、今夜はそこにいくことにする。

 駅から十五分ほど歩くと飲屋街があり、銀鯖の専門店というのはその中にあった。

 電飾の、かなり派手な看板と黒字に白い文字で店名が大きく書かれた看板があったので、、すぐに目当てのお店だと判断ができた。

 派手な看板と比較して、地味な木製の、どこかのスナックのような木製の扉をあけて、お店の中に入る。

 すぐに店員さんが出てきて一人客であることを確認すると、カウンターの空いていた席に案内された。

 午後六時過ぎという早い時間であるのにお客さんたちの入りは上々で、すでに七割方の席が埋まっている。

 カウンター席とテーブルが四つ、それに奥の方に個室の小上がりもあるようだ。

 メニューを手にしてまずはどれを頼もうかなと思案していると、店員さんがやってきて先に飲み物を注文してくれ、といった意味のことをいう。

 せっかくのお魚、鯖なのだからと日本酒を頼むことにし、しかしうまい銘柄についてタスッタさんはよく判断ができなかったので、店員さんに訊ねてお勧めのお酒を貰うことにした。

 お刺身に、棒寿司に、串焼き、か。

 どれもおいしそうなのですが、すべて食べきれるのかどうかが疑問に思える。

 同じ理由で、コース料理を頼むこともやめておくことにした。

 店員さんを呼んで、まずはお刺身を頼もうとすると、

「こちらの刺身はルイベ状になりますけどよろしいでしょうか」

 と確認をされる。

 それはなんだと突っ込んで質問してみると、どうやら半解凍の状態で出されるのがこのお店のお刺身であるらしかった。

 ジャリジャリした感触の、シャーベットのようなお刺身をいただいても興覚めですかね、と、タスッタさんは思い直し、お刺身の代わりにづけを頼むことにした。

「あ、それと、串焼きも」

 と店員さんにつけ加えて、コップ酒を一口傾ける。

 うん、日本酒だ。

 それも、すっと喉を抵抗なく滑っていく、いい日本酒だ。

 飲み込んだあと、ふ、と鼻から独特の香りが抜けていく。


 まず最初にづけが来た。

 焼いたり味噌煮にしたりした鯖はこれまでにも多く食べてきたが、火を通していない鯖を食べるのはタスッタさんにしてみてもはじめてのことである。

 箸で摘まんで一口食べてみると、それだけで意外なほどに濃厚な脂が舌の上で溶けていく。

 醤油につけ込まれていることで、その油脂分がくどくなり過ぎるギリギリのところで留まっている感じだ。

 あ。

 と、その感触に戸惑いながら、タスッタさんは思う。

 これ、今までに食べてきた鯖とは別物だ。

 脂のノリも、脂の味も、まるで違う。

 本当に新鮮なものだと、鯖とはこんな風味なのか。

 おいしいのはもちろんのこと、お酒のあてとしても上々の代物といえた。

 うん。

 と、タスッタさんは心中で頷く。

 これは、いい。

 シンプルな調理法であるがゆえに、鯖自体の味がよくわかる、ような気がする。


 づけをあてにしてお酒をちびちびと飲んでいると、すぐに串焼きがやってきた。

 タスッタさんはそのまま串を掴んで、豪快に食べてみる。

 熱々で、やはり脂がかなり乗っている。

 適度に焦げ目がついていいアクセントになっているのだが、やはり脂が多過ぎるのではないか。

 おいしいことはおいしいのですけど、想像していた以上にボリュームがありますね、これ。

 そんなことを思いつつ、タスッタさんは冷める前にと、日本酒で口の中の脂を清めつつ、串焼きを食べ続けた。

 これはやはり、コース料理にしなくて正解でした。

 途中でお酒がなくなったので、同じ銘柄のお酒をもう一杯注文する。


 二杯目の途中でづけも串焼きも食べ終えてしまったので、タスッタさんは再びメニューを手に取った。

 んー。

 そろそろ、棒寿司にいきましょうかねえ。

 あんまりお腹が膨れてからだと、残してしまいそうな気もするし。

 タスッタさんは店員さんを呼んで棒寿司を注文し、さらに思いつきで煎餅汁までいっしょに頼んでしまう。

 煎餅汁というのは南部煎餅を具にした味噌汁なわけだが、少し前にと食べたときにタスッタさんはいい印象を持っていた。

 鯖が入った味噌汁というのもなかなか食べる機会がないし、そろそろ酔醒ましに汁物を口にしておくのもいいだろう、と、そう思ったのだ。

 それに、新鮮な鯖というかなり脂がきついとわかっているので、お酒以外にも口を濯ぐものが欲しかった、ということもある。


 鯖寿司と煎餅汁は、いくらも待たずに同時に届いた。

 煎餅汁は煎餅と小切にされた鯖以外にも、野菜類がかなり入っており、かなりの食べ甲斐がありそうだ。

 タスッタさんは、まずはその煎餅汁を一口啜る。

 うん。

 出汁がよく効いていて、おいしい。

 お酒の酔いが、すっと醒めていくような気がした。

 もちろん酔いが醒めたのが錯覚であることは重々承知しているのだが、それにしてもお酒を飲んだあとにお味噌汁というのは、味覚がリセットされているようで、いい。

 それから棒寿司をひときれ、いただく。

 酢飯によってかなり緩和されているような気もするのだが、やはり鯖の脂分が強く感じた。

 おいしいことは、十分においしいのですけれどね。

 ただこれを単品でいただいていたとしたら、お酒が進んでしかたがなかっただろうな、煎餅汁をいっしょに頼んで正解だった、とも、タスッタさんは思った。


 棒寿司と煎餅汁をあてにして、しばらくタスッタさんは日本酒をちびちびと舐める。

 そのうち、棒寿司がなくなってしまったので、タスッタさんはまたメニューを開いて鯖のサンドイッチを頼んだ。

 なんで鯖がサンドイッチになるのか。

 いや、まずくなるとも思わないのだが、タスッタさんはまずその発想に驚かされた。

 幸いなことに、煎餅汁はまだ半分以上残っている。

 まだ大丈夫かな、とか思いながら、結局はかなり頼んでしまいましたねえ、と、タスッタさんはそんな風に思った。

 肉類とは違い、同じ油脂でも魚の脂は、なんとなく消化がよくてお腹に溜まらないような気がする。

 サンドイッチが来るまで、タスッタさんは煎餅汁の具をあてにして日本酒をちびちびと舐めていた。


 やがて来た鯖のサンドイッチは、なんというか予想外にまともな味だと思った。

 鯖とトマト、それにオリーブオイルの組み合わせがこんなにマッチしているとは。

 うん。

 これも、おいしい。

 タスッタさんは、自分自身に確認するように、一人でそう頷く。

 お酒は、もういいか。

 煎餅汁がまだ残っているし、このサンドイッチが、今日のシメですね。

 タスッタさんは煎餅汁と鯖のサンドイッチを、黙々と食べ続ける。



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