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【第九夜】




 摩天楼を縦横無尽に泳ぐ巨大なウミイグアナや鯨たち。

 それらが追っているのは、逃げまわるオキアミの大群。

 あちらのビルの影からこちらの電波塔の下を潜り、ふたつに分かれては向こうの超高層ビルを越えてと捕食者を翻弄している。

 その、固まりからはぐれた一群が、こちらへと向かってくる。

 首をすくめるようにしてわたしはそれを頭上にやり過ごし、振り返る。

 オキアミの一群は、シティホテルをぐるりとまわったところで、待ち構えていた巨大ウミイグアナが開いた口にがぶりと呑み込まれた。

 シティホテルの高層階、その壁に爪をたてたウミイグアナは、客室の窓と壁面との間に入り込んでいたオキアミを、分厚い舌でこそげるようにほじくり出す。

 あの客室に宿泊しているひとは、窓ガラス一面ぶんの大きさを持つウミイグアナの舌に恐れおののいていることだろう。

 林立するビル群の間を、その(かん)も他の巨大ウミイグアナや鯨、イルカたちがオキアミを追いかけて泳ぎまわっている。

 わたしは、その様子をじっと地面から眺めているしかない。

 やがて、どれだけの時間が経ったのか、空が明るくなりはじめた。

 いつしか巨大ウミイグアナたちはオキアミとともにどこかへと姿を消していった。

 入れ替わるようにして、どこに隠れていたのか、たくさんの恐竜たちが空へと泳ぎだしてゆく。

 ブラキオサウルスやモササウルス、名前も知らないたくさんの古代生物たちが、天へと向かい、ビルの間をゆったりと泳いでいる。

 機が熟したのだと気付いたわたしは、恐竜たちの後を追うように空を泳ごうと大地を、宙を蹴った。

 空を泳げるのか不安もあった。

 けれどわたしは、他の古代生物と同じように空を自由に泳いでいたのだった。





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