79話
「見事なモテっぷりと逃げっぷりだったそうですね」
メリルがやってきて一言目がコレだ。
私が舞踏会から逃げ出して数日が経った。突然、メリルとシャルルが緊急でやってきたのだが第一声に私は顔を引きつらせる。
「……情報がお早いのね」
「私もうら若き女性なので」
その切り返しは何か違う。メリルの冗談をどう返そうか迷っていたらメリルが本題に入りますと言う。
「旦那様がお目覚めになりました。今は起き上がるまで回復しています。旦那様もお嬢様に報告して欲しいとの事でしたので私がこちらに来ました」
「お父様が本当に目を覚ましましたの⁉︎良かったですわ」
メリルの言葉に安堵し素直に喜ぶ私。
メリルも雰囲気が柔らかく私を見守るように見つめている。うるうるしている目を瞑り、呼吸を整える。
「早くお父様に会いたいですわ。シーサー達の処刑を観ずに帰ろうかしら?」
私の言葉にその件ですがとメリルが珍しく言いにくそうにする。私は何と首を傾げる。
「シャルルの実の父親が分かりました。その父親が宰相です」
……ん?何か聞き間違えかしら?私がピシャリと固まるとメリルは再度言う。
「シャルルの実家を調べていたら宰相に繋がりました。宰相がシャルルの実家を潰した本人であり、本当の血の繋がった家族の様です。シャルルの特殊な属性と宰相の属性は同じなのでそうでしょうね。宰相本人は気づいてないようですが」
貴族の属性は秘匿する者も多く宰相の属性は知らない。メリルが調べてきたのなら間違いないのだろうが何故宰相はシーサーと共にこの国を壊そうとしたのだろう?
それよりも父親はあと数日後には死刑なんだけど、どうしよう。シャルは複雑そうな表情をしている。私も複雑だ。
「……どうしましょう?」
うん、本当にどうしようかね?
シャルは悲しそうに話す。
「お父様がやった罪は重いです。ですがお母様から聞いた私の知っているお父様の話が本当ならこの出来事にも理由があるはずです。私はそれを知りたい。ダメでしょうか?」
宰相のやりたかった事を知るのは悪い事ではない。私は考える。そして、口にする。
「では、今から面会を取り付けますので明日、会いましょう」
「それなのですが調べた資料を見ますか?」
私は頷くとメリルから渡された資料を見て、私はニヤリとする。
「成る程、宰相も人だったのね。面白いわ。シャル、外に控えているヨシュア達を直ぐに呼んで」
シャルは頷き、外に出て行く。ヨシュア達を連れてくるのを待つ。その間にレオンの事を聞きたかったので話の話題にする。
「レオンが侯爵家の養子になっていたのですがメリルは経由は知ってますの?」
私が聞くとメリルは頷く。
「互いの利害一致ですね。侯爵家はクレア様の恩とレオン様はクレア様の力になりたいそうです。レオン様の親は騎士としての復帰はしばらくは難しいようです。そして、2人はレオン様の行動を見守るようですね。お二人もレオン様の心情は知っていた様で侯爵家の方々と話し合ってました」
……私の為に侯爵家の養子になったようだ。
「深く考えずにレオン様を受け入れて良いと思いますよ。彼は彼なりに行動してます。マリーと少々揉めましたがマリーもレオン様の行動に口を挟まなくなりましたので」
え!2人に何があったの⁉︎
聞いても口を開いてくれそうに無いので私は話を終えた。
ノックがなり、シャルが三人を連れてきた。
「ヨシュア、アンリー、カリン、今直ぐ陛下に私と私の使用人のシャルの2人で宰相に面談の取り付けをお願いしてほしいわ。人払いも忘れずね。もう下がってもいいわ」
私は要件を伝えると下がる様に言うが三人共固まってしまっている。よく見たらメリルを見て停止している。どうしたの?と聞くとカリンが代表して答えてくれた。
「あの方はサーヴァントギルドの幹部の方ですよね?何故クレア様についているのでしょうか?」
本当に恐る恐ると言った具合に尋ねる。私が答えるより先にメリルが答えた。
「私は公爵家の使用人採用からクレア様の付き人になってます。今後、貴方達の上司となりますのでよろしくお願いします」
壊れた様に三人共頷く。メリルって本当に何でウチに居るんだろうね?
三人が部屋から出て行きシャルも付いて行った為、メリルと2人になった。
「私はクレア様にこれからもお供しますよ。これからも私を楽しませて下さいね」
メリルの言葉に私は頷く。
「えぇ、退屈はさせないわ。それにやっと終わってお父様も目を覚まし全てが解決したと思ったのにシャルを連れてきたのはそう言う事でしょう?私は正義の味方でもないの。私は私のやりたい事をするだけよ」
私は楽しげに笑う。
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