24話
今回は刺激的な部分も含まれております。
苦手な方は気をつけてお読み下さいませ。
夜になると2回ノックの音が聞こえる。
ドアまで行くとメリルが立っていた。
「どうされました?」
メリルはいつも通り淡々と話す。
「本日は使用人ライナス殿がギーベ・プーリアへの重税を増やしました。その話を伝えようと来ました」
……重税?そんなに不作なのか?
「どう言う理由の重税かしら」
「はい、自分達が使いすぎた分の補充って所です」
はぁ!?お金の使いすぎで重税?そのライナスって使用人大丈夫か?
「……それは大丈夫なの?」
「ギーベ・プーリアがまだこの地に居るのを察するにダメでしょうね」
こう言うのが重なってウチの領地は経営難になるのか。
……怖いね。
確かお母様が領地経営をしてお父様はこの領地を魔物から守ったり魔力を捧げたりしていたからいきなり管理をしろと言われても無理であろう。だから、使用人に任せっきりだし、この使用人が消えたら管理出来るはずのない。
未来は経営難の状態で今の使用人と同じやり方でやるお父様を想像出来るしギーベ率いる平民にヤられるのは想定内だ。これは早急に仕掛けなきゃ無理だな。
「メリル、明日必要な書類を持ってきて下さるかしら?それと断罪の時に使用人を全て集めなさい」
「はい、任せてください。アレから私を含めた6人はクレア様のお付きとして使用人達に理解されてます。名前はタタルミーヤ、カレン、ララ、プリム、アナの5人です。使用人の書類をお渡しして置きますので良ければ目を通して下さい」
「ありがとう、では最後にワライクバの件ですがケイサツベライの皆様を使う予定とエルザにお伝え宜しくお願いします」
次の日早速、カインがウチの前に居たが隣にケイトもいる。
「クレア様はあの大きな屋敷ではなくこの様な場所にいるのですか?」
「落ち着くでしょう?それよりどうでしたか?」
「はい、ピレネー様は大変クレア様に興味を示しまして何時でも会いに来て良いと言われました。ただ、クレア様は女性ですので密会の方が都合が良いと思われます。我々のポータブルワープを使い、ピレネー様の所への許可を得ました」
「分かりました。心遣い感謝しますわ。なら明日にでもお邪魔させて頂きますとお伝え宜しいでしょうか?」
「了解しました。任せてください」
『だから、レイナス家の当主への面会を所望するといっているだろうが使用人が何を言うのだ!』
『私は使用人ですがコレでも子爵家の者です。レイナス家は公爵家なのですよ。使用人である我々もレイナス家に相応しく爵位を持っています。旦那様から私が任されておりますので1使用人ではなくレイナス家の言葉だと受け取って下さい』
……ついに来てしまったか。
「……アレは何なんだい?」
「お見苦しい所を見せてしまい申し訳ありません。コレが今回の私のお仕事です。不必要な使用人の排除です。では、お二方もお帰り下さいませ」
ケイト達は苦い顔で頷き、頑張れの応援をくれる。
私は一呼吸置いて、騒ぎへ向かう。
使用人達はワラワラと集まってくる。メリルが誘導させたのだろう。
メリルは私を見ると無表情でウィンクをした。
……多分、完了の合図だろう。
私も騒ぎの中心へ向かう。
騒いでいた使用人が凄く嫌そうな蔑んだ顔で私を見る。
「これはこれはクレア様ではないですか。申し訳ありません。離れまで我々のお話が伝わってましたか。しっかりとこちらの方へお伝えしますので安心して下さい」
確か此奴の名前はライナスで文官の役割を持つ使用人だ。
「ギーベ・プーリアよ、この度の訪問お父様不在で申し訳ありません。只今管理出来る者はいませんの。なのでお父様が帰ってくる再来週にまた来て下さいませ」
私は優雅に微笑む。
周りの使用人達が息を呑むのが分かる。
ライナスも目を丸くしている。
ギーベ・プーリアも私の対応にびっくりしている。
だが、すぐに正気に戻ったライナスは私を睨む。
「クレア様、今の言葉は聞き捨てなりません。旦那様から私は全ての権利を預かってます。まだ、教養もまだのクレア様でも今回の件は理解は出来ますまい。申し訳ありませんがクレア様と言えど口を挟むのは止めて下さい」
なるほど、権利を預かってますねぇ。
「そうなのですか。権利を預かっているだけなのにレイナス家の財を自分のモノにするのもその権利の一つなのかしら?ねぇ、ライナス」
私の言葉に固まるライナス。そして、周りも同じ様に固まる。
「ギーベ・プーリアよ。今回は何用で来られたのだ?すぐに話しなさい」
「はっ!この度は他の地での魔物出現の為、こちらにも被害が出ております。なので税の納めを減らして戴かないと民の生活が難しいのです。私も今回の民からの納めは無しにしようと考えております。どうかご慈悲を」
ギーベ・プーリアは頭を下げる。
民を思う長か。悪くない。
「頭をあげなさい。それで大方、近くの森で狩りをしてそれで民を養い過ごせなどと言われたのですか?昨年から徴税も減っているのだから今年は更に増やせとかも言われました?」
ライナスは口をパクパクし始めギーベ・プーリアは私の言葉にキョトンとする。
「正にその通りです。やはり、私のお願いはダメでしょうか?」
「いえ、愚者であればその方法を思いつくだろうなと思い言っただけです。私ってば教養もないような子供ですもの。教養がないのでこの様な浅はかな愚かな考えもは思いつくのですわ」
「何だと!私のやり方に問題でもあるのか!?」
ライナスはついに顔を真っ赤にして声を荒げる。
コレが使用人のレベルか。
「まず、魔力土地で3年前より始まった現れるはずのない魔物の出現ですね。昨年はあちこちと被害が多く、王都でも徴税の減量を命じられております。そして、今年こそ被害は少なめですが第一王子派の土地は凄く荒らされております。知らないとは言わせないですわよ?」
ライナスは口を噤む。
「私は去年より90%になるはずだった徴税が78%だったのも知りたいのですがライナス、全てを任されているライナス君、教えてくれるかな?」
ライナスは顔を真っ青にする。
「まさか、使用人の分際でこの領地の民の税金を奪ったのか?」
流石に私とのやり取りで彼も気づいてくれたらしい。
「私は教養も無いので理解出来ないと思われておりますのでギーベ・プーリア、私の代わりにこの資料を確認お願いしますわ」
プーリアに例の資料を見せると目を見開き、段々苛立ちを見せる。
「……これはどういう事か説明して頂こうじゃ無いですか。ライナス殿」
貴族スマイルをするプーリアが此れ程頼りになるとは思わなかった。
その資料をライナスに渡しライナスも目を通すが汗が溢れている。
「わた、私はその様な事実は知りません!」
ライナスはついに顔を真っ赤にして破り捨てる。
「あら、資料が勿体無いですわ。まだ数セットにして保管しているので大丈夫ですが破くのは勿体無いですわよ」
ライナスはへたっと座る。
「皆様も何故お集まりになったか分かりますよね?私の事を能無しと思い油断していたのが仇となりましたね。タタルミーヤ、カレン、ララ、プリム、アナ、メリルの6名以外の証拠を全て手に入れてます。お父様へ報告する前にこの領地に広がってしまいますね。本来なら我がレイナス家の落ち度と言われるのでしょうがお父様は割と領地へ出向くのが多く私は離れへ閉じ込められ、弟はまだ7歳だ。信用ある貴族を使用人として雇ってますので一族の関与も疑い、報告と共にギーベ・プーリア分かってます?」
「えぇ、分かってますよ。この様なレイナス家を任される名誉を仇で返す者共の名はすぐに広まるでしょうな」
「中々、分かってらっしゃいますわね。ミーヤ、カレン、ララ、プリム、アナの5名は来なさい」
そう言うと5人はすぐにくる。
「貴方達はこの様な事態でもしっかり自分の在るべき姿を理解し、レイナス家へ支えてくれた事を感謝するわ。ギーベ・プーリアを家の中で待っていて貰いなさい。領地の民の税金の話しは私が続けます」
「……だったのに」
急に聞こえた声に振り返る。
静かだったせいかはっきりとライナスの声が聞こえた。
「せっかくあの女を殺してここを管理ができる様になったのに」
プーリアはこの言葉の意味を理解したのだろう。
言葉に出来ていない。
私も同じだ。お母様は死んだのではなく誰に殺されたか理解した。
ブワッと私の周りに呪文達が殺気立つ。
数人の使用人達が泡吹いて気を失ったり怖くて腰を抜かしている。
それでもライナスは私の呪文達の殺気を受けても睨みつけてくる。
ライナスは死ぬ覚悟だったのだろう。私へ向かってどこからか取り出したハンドナイフを片手に私へ刺そうと走り出すが途中で倒れ急に苦しみだす。
これはあれだ。
ミーヤが言っていた奴だ。
だが、簡単には殺さない。
ヒールをかける。
体の変異は治り、ライナスの顔は恐怖しかない。
敵対心が無くなったので結界の対象じゃ無くなったのだろう。
私はファイアをライナスに当てる。ライナスは炎へ焼かれ転がる。死なないようにヒールもかける。それをただゴミを見る目で作業の様に続ける。6回位やると動かなくなった。転がる事をしなくなってヒールをかける。
まだ生きては居るだろう。
それにまだ生かしておかないとお父様への報告もあるのだから。
私はジロッと使用人達を見る。後6人同じ様に計画犯がいる。だが既に気力が無くなり、メリルを呼ぶ。
「あの転がっているモノを生かしたままお父様が帰ってくるまでお願い出来るかしら」
「はい、大丈夫です」
「あと、残りの使用人達の処分と処遇を言うので後から呼ぶので来てくださいね。死にたくなかったら」
最後は使用人達に聞こえるように言う。
泣き出す使用人も居て中々の混沌だ。後はメリルに頼み中へ入る。
「ギーベ・プーリア本日はお見苦しい所をお見せしまして申し訳ないのと感謝致します」
「いえ、こちらこそクレア様のお言葉を添えなきゃ民が困るところでした。感謝致します」
互いに微笑み合う。
「では先程のギーベ・プーリアの言い分はごもっともです。しかし、私のお父様もこの土地を国から王から任されたのです。ここではいそうですねって事では出来かねます」
プーリアは私の言葉を聞いて考えそうですねと納得する。
「まぁ、それは建て前の話です。私も民が困っているのなら力添えをしましょう。お父様には私からもお願いを出来ます」
私の申し出にプーリアはびっくりする。
「私はそうしてくださる様にお願いしに来たのですが宜しいのでしょうか?」
私はにっこり笑う。
「今までライナスの本家や他の本家が貴方達の徴税を管理して下さってましたのでその分をお返しして頂けたら何の問題もないですよね?」
プーリアもやっと本質を理解した様で同じ様に黒い笑顔を貼り付ける。
「なるほど、今まで蓄えていた我々の徴税を今年の分に回して下さると!なら先程のライナス殿には悪い事をしてしまったようだな」
2人でニヤリと笑いあう。
「ですので今回の事は嘘なく事実を是非お伝え下さい。貴族は醜悪を嫌いますがギーベ・プーリアならお父様への不利にならないようにお願い出来ますよね?」
「えぇ、任せてください。きっと望み通りのお話が出回るでしょう」
黒い密談は終わりだ。
「それにしてもそちらの土地も大分参っている様ですね。今度、何か出来るかそちらへ向かい、何が不作なのかその土地に合う新たな特産物も考えるのも今回の件でありですね。仮に納めるモノ以外の名産物を作る事によりそちらの経済も上がればこちらも良いですし」
プーリアは私の言葉を聞いてびっくりする。
「申し訳ないのですがクレア様の噂は少々聞いております。ですがその様に土地を運営するノウハウを何処で覚えたのです?」
前世で少々なんて言えないし大した話もしてないのに何で驚かれるのだろう。
「書物ですの。ですから私にはここに居る使用人達から学ぶ必要ありませんでしたの。それよりギーベ・プーリアが民よりの貴族だと存じませんでしたわ。あのお父様が受け入れる事もです」
プーリアは苦笑する。
「成る程、今まではその優秀さを隠し隠れてこそこそしていまのですな。クレア様、領主様は領地の事なら何も言いません。私も能力を買われて領地を任されてます。コレでも私は昔冒険者をやってまして、それでいつの間にか貴族の真似事をし始めました。私はただ自分の育った町を守りたいだけでごさいます」
プーリアは生まれ育った場所の為に法服貴族になったのか。
「宜しいですわ。貴方がその気持ちを忘れないうちは私が庇護しましょう」
これは思わぬ収穫だった。
「クレア様、ありがとうございます」
私は用意していたメリルに纏めて貰った使用人の書類を広げる。
「それとギーベ・プーリア。少しお願いがありますの。使用人達のこの7人以外の情報操作をお願いするわ。貴族のお茶会などでの社交で流す貴族用と商人を使い、平民達に進陶させる平民用をやってもらいたいの。乖離していても貴族と平民には溝がありますので気付かれないでしょう」
私が今回やってほしい事を伝えるとプーリアは驚愕していた。
「本当に宜しいのですか?」
私はにっこりと返事を返す。
次で使用人達のお話は終わりです!
クレアちゃんも少しずつ変わって来てますのでどの様に対応するか見守ってて下さいませ。
次は21時に投稿します!
お読みいただきありがとうございます!