こうして物語は冒頭へと戻る
初のパーティー。
初の魔物討伐。
そして初の置き去り。
僕の心には様々な感情が駆け巡った。
その中でも一番は"悲しみ"が大きいかな。
まさか、あんな理想のヒーローのような人が『冒険者行方不明事件』の犯人だなんて。
でも……何か変な気がする。
いや、今は考えてる暇はない。
早く町に戻らないとアリカさんが危ないのだ。
僕は急いで来た道を戻るようにして歩いた。
だけど周りの風景は全く変わることがないため進んでいるのかどうかわからない。
同じところをグルグル回っているのではないか?
実は戻っているはずが、もっと奥まで進んでいるのではないか?
それでも進み続けるしかなかった。
そして樹海に入ってから初めて見る円形状に切り取られたような広い空間に出た。
ただ木々は生い茂り、天候はよくわからない。
感じ取れる無数の魔物の気配。
僕は知らぬ間に数百を超えるほどの魔物の群れに囲まれていた。
「な、なんで、この辺境の地にこんなに魔物がいるんだ……?」
この場所で僕は運命的な出会いを果たすことになるのだ。
"こうして物語は冒頭へと戻る"
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僕は目の前で跪いている"黒ビキニの女性"に見惚れた。
"イヴ・ガルハート"と名乗った魔王軍の女幹部は細身の体でありながら豊満な胸と白い肌、お尻には黒い竜の尻尾のようなものが生えている。
燃えるような長い赤い髪、耳の上には2本の短めの黒い角。
キリッとした美しい顔立ちで年齢は二十代前半といったところだろう。
「私にできることがあれば、何なりとお申し付け下さい」
彼女に対しての従属時間、そして周囲にいる無数の魔物を考えれば僕は長く生きられないというのは少し考えればわかる。
どうせ人生最後だし、ここは欲望に忠実になってもいい。
ふと僕はアリカさんとの戯れの時間を思い出す。
イヴと一緒にアリカさんを助けに行こう。
できる限り早く解決して、この樹海に戻ってくれば町に被害が出ることはないと思う。
死ぬのは僕だけで十分だ。
「じゃ、じゃあ、ぼ、ぼ、ぼ、僕を……!!」
「……」
「僕をラーグ・グレイスの町まで連れて行って欲しい!」
「はい、喜んで」
そう言ってから深々と頭を下げて立ち上がり、僕の方へと歩み寄る。
近づくにつれて黒ビキニだけのイヴを真っ赤な炎が覆い始めた。
炎が全身を包み込むと、それは一瞬にして拡散した。
炎の中から現れたのは漆黒の鎧。
細身の体にフィットした鎧とドス黒いオーラを放つ赤いマントはイヴの戦闘装備なのだ。
「かっこいい……」
それはまさにヒーローで言うところの変身。
さらに女幹部らしい、ちょっと禍々しい変身は僕を興奮させた。
『失礼致します』
彼女はそう言ってから僕を抱き上げる。
まさか男である僕のほうが抱えられるとは思わず、少し恥ずかしかった。
『飛びますので舌を噛まぬように』
「え……飛ぶ……?」
『はい』
イヴはしゃがみ込むようにして脚を曲げると、一気に地面を蹴って跳躍した。
僕は無数の魔物の視線を浴びながら初めて空を飛んだ。
その高さは100メートルくらいかな?
周辺地上の状況がよくわかる。
天候は今にも雨が降りそうな曇り。
ラーグ・グレイスは聳り立つ転移の石碑が目立っていて一瞬で方向がわかった。
さらにイヴは空を蹴って前進。
赤い炎を纏って猛スピードで飛ぶ。
このイヴの空中移動によって僕は樹海から、わずか数分で町に辿り着いた。
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イヴの着地は凄まじいものだった。
確実に人間なら膝を痛めるであろうスーパーヒーロー着地。
その衝撃で地面には円形状に大きなクレーターを作った。
着地地点はちょうど転移の石碑がある広場で、周りに人がいなかった(実際には何人かのいたけど被害はない)のでよかった。
突如、空中から飛来した"謎の黒鎧"によって恐怖で逃げ惑う数人の住民、冒険者たち。
これには、とても申し訳ない気持ちだ。
僕はイヴに下ろしてもらう。
『到着致しました』
「ありがとう。早速だけど、まだやることが……」
『その前に私の方から一つ』
「な、なんですか?」
まさか従属時間が切れた?
いや実はもうとっくに5分以上経っている。
それでも、なぜかスキルの効果が続いていることが気になっていた。
『この巨大なアヴァロ魔鉱石は昔、人間の賢者が作った魔物除けです。私ですら町の中で活動できる時間はごくわずかでしょう』
「え、そうなの?」
『はい。体へダメージが入り続けます』
「それはマズイ!イヴさんに何かあったら、僕は……」
『まさか……私のごときを心配して下さるとは』
「心配に決まってるさ!とにかく早くギルドへ行って事件を解決しよう!」
「はい、承知致しました」
イヴは胸の辺りをさするような仕草をした。
それを見た僕は首を傾げる。
「大丈夫?もしかして、もう痛い?」
『いえ、この程度、大したことはありません』
「よかった。急ごう!」
『はい、仰せのままに』
イヴは返事をして軽く頭を下げた。
すごく頼もしい仲間で涙が出そうだ。
多分、彼女の口調からして僕のことは主だと思ってそうだけど……。
そして僕とイヴは冒険者ギルドへと向かった。




