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初バトルは唐突に

初パーティーは"勇者候補同士"という、とてもレアな組み合わせだった。


今回はゼイバーさんの提案で依頼を受けるのではなく魔物が落とす魔石の採取。

弱い魔物でも体内に必ずあると言われる魔石は、この世界では様々な用途で使われる。


この魔石を売って、お金を稼ぐというのが本日のプラン。

魔石の値段的に僕がいつも受けている町の仕事よりも数倍の報酬になるとのこと。


とにかく、なんでもいいから稼ぎたいという僕にとっては願ったり叶ったり。



……ただ気になる事があった。

樹海までの道のり、ゼイバーさんが終始無言だったのだ。


_______________



小鳥囀る草木生い茂る森。

少し湿った風が頬を撫でる。

樹海は我が第二の故郷と言っても過言では無い。


僕は大きく息を吸って、わずかな懐かしさに浸る。


最近は移動時間もあるため薬草採取の仕事は受けてなかった。

町と樹海との往復、薬草採取時間を考えると仕事の掛け持ちが不可能。


なので樹海に来るのは久しぶりだった。


樹海の入り口。

ここに来てようやくゼイバーさんが口を開いた。


「シオンくんの方が、ここには詳しいのではないかい?」


「僕は入り口付近で薬草を採取するだけなので詳しいとまでは……」


「そうか、なら私が先行しよう。シオンくんは何歩か後ろをついてきてくれ」


「了解しました」


ゼイバーさんが前に出る。

青い鎧が森にごく僅かに差し込む日の光によって煌めいた。

腰に差す大きな剣(名前はわらないけど)はゼイバーさんの自信を物語っているようだ。


「ゼイバーさんは樹海には来たことがあるのですか?」


「ああ、何度かね」


無感情に答える。

緊張感が伝わってきた。


いつも薬草採取をしている入り口付近からさらに奥へと進む。

雰囲気がどんどんと変わってくる。

薄暗さが増し、空気が澱んで息苦しさを感じさせた。


何かあればゼイバーさんを頼るしかない。

そういえば……ゼイバーさんの勇者スキルってどんなものなんだろう?

やっぱり主人公って感じのチートスキルなのか。


そもそもゼイバーさんの"勇者の刻印"って体のどこにあるんだ?


「あ、あの……ゼイバーさんの勇者の刻印ってどこに現れたんですか?」


自分の緊張をほぐしたかったのもあるが、やはりこの重い空気感に耐えきれなかった。

僕はパーティーを組むって、もう少し楽しいものだと思っていたんだけど。


「私は腕にあるよ。今は鎧で隠れて見えないが」


「そうなんですか。人それぞれ出るところが違うんですね」


「らしいね」


会話が終わってしまった。

また重苦しい空気へと逆戻り……と思った瞬間、ゼイバーさんは立ち止まり、左腰に差した剣のグリップを握る。


「シオンくん、少し下がった方がいいかもしれない」


「え?」


「"魔物"だ」


僕はゴクリと息を呑んだ。

数メートル先の木々の間から、こちらを伺う赤い眼光がいくつか見える。


「"アンデッド・ウルフ"だと……なぜ、こんな辺境の地にいるんだ?」


困惑するゼイバーさんは、それでも臨戦体勢をとった。


姿をあらわした魔物は二匹。

横に等間隔に並ぶ。

こいつらは大きな狼の形をした魔物なのだが、僕の想像していたものとは別物だった。


ゲームでよくいる"スライム"や"ゴブリン"など、わかりやすい見た目とはまるで違う。

ドロドロとした黒い液体を全身に纏い、さらにアンデッドという名に相応しく体がところどころ腐敗している。


誰が見ても"魔物"と認識できるような姿をしていて不快感がある。


「シオンくんは下がって。こいつらは少しレベルが高い」


「は、はい……」


僕は魔物から目を離すことなく後退りする。


すると、すぐに魔物たちは動いた。

二匹のアンデッド・ウルフは四足でスピーディーに駈けて一気にゼイバーさんへと向かう。


その一体がゼイバーの目の前まで迫り大きく口を広げて首元へ。


「"ファイア・ボール"!!」


ゼイバーさんは剣は抜かずにグリップからすぐに手を離して、一瞬でてのひらから火球を放つ。


火球はゼロ距離で着弾。

仰反るアンデッド・ウルフに対して即座に剣のグリップを握り直して抜剣。

目にも止まらぬスピードで横一閃の斬撃を浴びせた。


二匹目が黒煙から飛び出す。

ゼイバーさんは冷静にバックステップして間合いを取る。

アンデッド・ウルフの噛みつき攻撃をスレスレで回避し、あごへ向けて剣の柄頭ポンメルを当てた。

あごが上がり天を見るアンデッド・ウルフの首元へと即座に剣を走らせて頭を刎ねた。


二匹の魔物は黒い灰になって風に舞う。

そして体内にあったであろう"赤色の小さな石"が地面に落ちて転がった。



僕は唖然としていた。

これが、この世界での魔物討伐……。

明らかに今まで自分がやっていた仕事とは次元が異なるものだ。

いや、それよりもショックだったのは僕にとっての初バトルは何もできずに終わってしまったこと。



ゼイバーさんは魔物から出た"赤い石"を拾い上げると目を細めて見ていた。


「どうしたんですか?」


「いや、なんでもない。もう少し奥へ行ってみようか。もしかしたら今日は稼げるかもしれないよ」


「は、はい」


あたふたしている僕に構うことなくゼイバーさんは樹海のさらに奥へ進むため歩き出した。


……やはり様子がおかしい気がする。

僕は首を傾げつつもゼイバーの後を追った。

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