清楚系女騎士あらわる!
この町に来てから三か月ほど経った。
あれから僕はアリカさんが用意してくれる仕事を受ける毎日を過ごす。
老人の家の棚を動かす仕事。
老人の家の清掃。
老人の家の買い出し。
老人の家の犬探し。
からの……薬草採取。
全部、人に感謝される仕事だ。
達成すると、みんな笑顔で僕に言ってくれる。
「ありがとうね、シオンちゃん」
「こんな子が勇者候補だと安心だね」
「薬草採取、助かるよ!」
どれもこれも普通の冒険者なら受けないような、お手伝い程度の仕事だった。
最初は他の冒険者からバカにされたけど今は誇りをもって、こなしている。
誰でもできるから、人任せにしてみんなやらなくなった地道なことの積み重ねだ。
それで小さな幸せが広がるなら僕は喜んでバカにされるさ。
確かに魔物討伐はかっこよくてヒーローみたいで憧れるけどね。
そして夜は毎晩、アリカさんと戯れた。
いつも床をずぶ濡れにふるほどの放水失神で気絶して戯れが終わる。
とても有意義な時間ではあるのだけど、なぜか僕のスキルレベルは上がらず。
やっぱり新しい誰かにスキルを使っていかないと上がらないのかな。
いろんなことを経験しながら僕の生活は順調に進んでいた。
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ある日の夕刻。
いつも通り、仕事を終えてギルドへと報告へと向かっていた。
珍しくギルド前には人が沢山いる。
なぜか冒険者たちはギルドに入れずにいたのだ。
「なんだ?」
ギルド前で見慣れぬ集団が隊列を作っていた。
全員、同じ服装で……みんな女性?
体のラインがハッキリ浮かび上がるほどピッチリした布地の白いフードローブ。
みんな手には高級そうな鉄の杖を持っている。
見たところ横5人、縦5人と整列して何かを待っているようだ。
「みんな綺麗な女性だなぁ」
そう僕が呟くと同時に後ろから肩を叩かれる。
ビクリと体が跳ねた。
すぐに振り向くと、そこには笑顔のゼイバーさんがいた。
「やぁシオンくん。どうしたんだい?」
「ゼイバーさん、なんかギルドの前が物々しい雰囲気で……」
「……あれは、まさか」
ゼイバーさんの表情が変わった。
するとすぐにギルドの中から、また見慣れない格好の女性が出てきた。
重厚な白銀の鎧を身に纏った若い女性。
肌は雪のように白く、切り揃えられた長い黒髪。
顔立ちは格好に似合わず優美かつ清楚な印象で美しかった。
その女性を見たゼイバーさんは言った。
「"ランジェリカ・リリー"……彼女がなぜここにいる?」
「誰ですか?」
「え、えーと、彼女は国家騎士団の騎士様さ」
「僕、騎士さまなんて初めて見ました」
「まぁ、貴族である騎士は普通こんな辺境の地まで来ないからね」
「へー。ちなみにゼイバーさんはあの人のこと知ってるんですか?」
「い、いや噂程度さ。ほら、彼女って綺麗だろ?」
確かに日本にいたら大和撫子って感じ。
多分、着物を着せたらとても似合うだろう。
それにしても本物の女騎士を見れるなんて思ってもみなかった。
ランジェリカさん……いつか、お話してみたいけど住む世界が違いそうだ。
人混みの中、僕とゼイバーさんはランジェリカさんのことを見ていた。
すると彼女は馬に乗る際、こちらに視線を向ける。
それは一瞬の出来事だったが、なぜかランジェリカさんは僕らを見て困惑した表情を浮かべたように見えた。
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ようやく騎士団の人たちがいなくなって、僕はギルドに入ることができた。
ゼイバーさんは仕事の途中だったようでギルド前で別れた。
僕は受付へと向かう。
対応はもちろんクールなアリカさんだ。
「ご用件は?」
「達成報告に来ました」
「ご苦労様でした。こちらが報酬になります」
「ありがとうございます……」
僕は報酬を受け取りつつ、気なっていることを聞いてみた。
「あの、さっきの人たちは?」
「国家第二騎士団の方々です」
「何をしにギルドに来てたんですか?」
「シオンさんは"冒険者行方不明事件"をご存知ですか?」
「は、はい……一応。あれってまだ続いてたんですか?」
「ええ、最近は特に頻繁に起こってますよ。彼女たちはその調査で来たそうです。もしかすれば犯人は魔物でなくて、"人間"の可能性があるとかで」
「人間相手だと騎士さまが出てくるんですか?」
「一概に決まってはないですが、"魔物相手は冒険者"、"人間相手は騎士団"という風潮はありますね」
「なるほど……でも人間だとしたら、それもそれで怖いなぁ。この町のどこかに犯人がいることになるじゃないですか」
「そうですね……もしかしたら、案外すぐ近くにいるかもしれませんよ」
「え?」
アリカさんの言葉で僕は"ある人物"が思い浮かんだ。
そんなことは絶対にあり得ないと思いながらも、どうしてもそこに辿り着いてしまう。
否定したいが、人間1人を跡形もなく消し去るなんて普通はできない。
なんらかの特殊な能力が無い限り、これほど頻繁に犯行を繰り返すことなど不可能だ。
考えるに、やはりそれは最強クラスのスキルを持つ勇者候補と考えるのが筋だった。




