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青春病。  作者: 翠吉
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81/105

1本前からのシナリオ

第二セット。

「切り替え。」

水谷先輩が静かに全員を見渡す。

第一セットは落とした。

だが、コートには誰一人うつむく者はいない。

「まだ一つ。」

神谷先輩の短い一言。

「はい!」

全員の声が重なった。

ホイッスルが鳴る。

第二セット。

王者・白鷹高校との激しいラリーが続く。

四対七。

白鷹が先に流れを掴む。

「さすが王者。」

実況が口を開く。

「リードを許しません。」

しかし。

「杉山。」

神谷先輩の声。

蓮先輩へ視線が集まった一瞬。

ドンッ!!

杉山先輩の超速攻。

「速い!!」

実況が思わず叫ぶ。

続く一本。

「岡田。」

バックトス。

ドンッ!!

鋭いストレートがライン際へ突き刺さる。

「神谷の配球が変わった!」

「ここへ来て攻撃の幅をさらに広げています!」

七対七。

聖明が追い付く。

そこからは互いに譲らない。

白鷹が決めれば、聖明も決め返す。

長いラリー。

高さ。

スピード。

一本一本が決勝戦のようだった。

その時。

白鷹エースが高く跳ぶ。

ドンッ!!

杉山先輩と小林先輩が二枚で飛ぶ。

バシッ!!

ブロックには触れた。

しかし勢いを殺し切れず、ボールは大きく後方へ弾かれる。

「まずい!」

誰もがそう思った。

守屋先輩が一直線に駆け出す。

広告板ギリギリ。

床へ飛び込む。

「まだぁ!!」

右手一本。

パシッ!!

高く押し返されたボールがコートへ戻る。

「ナイス!!」

神谷先輩が走る。

「岡田!」

バックトス。

ドンッ!!

一直線にコートへ突き刺さる。

「決まったぁぁ!!」

体育館が大きく揺れた。

実況も興奮を隠せない。

「守屋の執念です!!」

「最後まで諦めないプレーが聖明を救いました!!」

聖明高校の体育館でも歓声が響く。

「うおお!!」

「守屋すげぇ!!」

「岡田ナイス!!」

サッカー部も野球部も女子バレー部も総立ちになっていた。

流れは少しずつ聖明へ傾く。

十二対十。

十四対十二。

だが白鷹も王者だった。

十五対十五。

十七対十七。

十九対十九。

どちらも一歩も引かない。

蓮先輩が三枚ブロックを打ち抜けば。

水谷先輩はブロックアウトを奪う。

杉山先輩と小林先輩は何度もブロックへ跳ぶ。

守屋先輩は拾い続ける。

岡田先輩は繋ぎ、決める。

二十三対二十三。

あと二点。

神谷先輩が守屋先輩へ歩み寄る。

「守屋。」

「はい。」

「レシーブ、センターに返すな。」

「ライトへ流せ。」

「了解。」

私は首を傾げた。

ライトへ流す?

そんな指示、初めて聞いた。

白鷹のサーブ。

ドンッ!!

強烈なジャンプサーブ。

守屋先輩が体勢を落とす。

パシッ!!

綺麗に上がった。

しかし、ボールはセンターではなく、少しだけライト側へ流れる。

神谷先輩が追い付く。

その瞬間。

白鷹のブロッカーが一斉にライト側へ寄った。

蓮先輩を止めるためだ。

「水谷。」

神谷先輩の手首が返る。

ボールは一気にレフトへ。

ドンッ!!

水谷先輩のスパイクが、空いたコースへ一直線に突き刺さった。

「決まったぁ!!」

二十四対二十三。

私は思わず監督を見る。

監督は小さく笑っていた。

「今のは神谷の狙いだ。」

「え?」

「守屋にライトへ返球させた。」

「相手は蓮へトスが上がると思い込む。」

「だからブロックが寄る。」

「空いたレフトを水谷が決める。」

「全部、一本前から組み立ててる。」

私はコートを見る。

神谷先輩は何事もなかったようにサーブ位置へ歩いていた。

セットポイント。

神谷先輩がボールを受け取る。

静かな深呼吸。

ドンッ!!

鋭いジャンプサーブ。

白鷹は完璧なレシーブから、一発で攻撃まで持っていく。

「返ってくる!」

神谷先輩が前へ飛び出した。

「俺!」

一球目を自らオーバーハンドで上げる。

そのボールへ水谷先輩が走る。

「任せろ!」

バックゾーンへ高くトスが上がる。

後衛から神谷先輩が助走へ入る。

大きく踏み切る。

ドンッ!!

鋭く振り抜いた右腕。

一直線に相手コートへ突き刺さる。

ピーーーッ!!

二十五対二十三。

「セットカウント一対一!!」

会場が大歓声に包まれた。

私は思わず監督を見る。

「今のは……。」

「ポジションシャッフルだ。」

監督は静かに答えた。

「セッターが一球目を触れば、次は誰かがセッター役になる。」

「今回は水谷。」

「神谷は昔からセッターだけじゃない。」

「スパイクも徹底的に磨いてきた。」

「だから迷いなく打てる。」

私はコートへ目を戻す。

神谷先輩は仲間と拳を合わせていた。

その姿を、白鷹の選手たちは静かに見つめている。

王者の表情が、この試合で初めて揺らいだ。

そして試合は、運命の最終セットへともつれ込んだ。

 

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