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青春病。  作者: 翠吉
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69/92

修正の1分

九対七。

聖明が二点をリードした。

「一本!」

水谷先輩の声が響く。

神谷先輩がサーブラインへ向かう。

観客席が静まり返る。

高く上がったトス。

パンッ!!

鋭いジャンプサーブ。

相手リベロがなんとか拾う。

返球はネット際。

「チャンス!」

神谷先輩が一歩前へ出る。

相手ブロックは蓮先輩へ三枚。

誰もがライトへ上がると思った。

でも。

「岡田さん!」

神谷先輩のバックトス。

岡田先輩が助走へ入る。

ドンッ!!

ストレートへ打ち抜いた。

十対七。

「ナイス!!」

聖明の応援席が沸く。

「岡田さん最高!」

守屋先輩が飛びつく。

岡田先輩は照れくさそうに笑った。

「まだまだ。」

神谷先輩はすぐに次のサーブへ入る。

二本目。

今度は相手セッターを狙った。

レシーブが少し乱れる。

苦しいトス。

四番。

高いボール。

「来る!」

杉山先輩と蓮先輩が跳ぶ。

ドンッ!!

今度はクロス。

守屋先輩が身体を投げ出す。

「上がった!」

岡田先輩。

神谷先輩。

水谷先輩。

三人で繋ぐ。

最後は蓮先輩。

ブロックアウト。

十一対七。

「流れ来てるぞ!!」

水谷先輩が拳を握る。

しかし。

大阪代表は簡単には崩れなかった。

タイムアウト明け。

相手セッターが配球を変えてきた。

四番へ集めていた攻撃を散らす。

中央。

ライト。

時間差。

「あっ……。」

こちらのブロックが一歩遅れる。

十一対八。

十一対九。

十一対十。

「やばい。」

観客席の空気が少し変わる。

大阪の応援が大きくなる。

「切り替え!」

水谷先輩が叫ぶ。

それでも相手の勢いは止まらない。

長いラリー。

蓮先輩のスパイクが拾われる。

岡田先輩が繋ぐ。

守屋先輩が飛び込む。

全員が必死だった。

最後は相手センターの速攻。

十一対十一。

追いつかれた。

「タイム!」

監督が笛より早く声を上げた。

選手たちがベンチへ戻る。

誰も俯いていない。

でも、息は上がっていた。

私は急いでドリンクを配る。

監督はホワイトボードを持たない。

全員を見渡しただけだった。

「何を焦ってる。」

誰も答えない。

「相手が修正した。」

「だったら。」

監督は神谷先輩を見る。

「お前らも修正しろ。」

神谷先輩が静かに頷く。

「蓮。」

「はい。」

「決めようとしすぎだ。」

「……はい。」

「ブロックを使え。」

「岡田。」

「はい。」

「今みたいに空いてる場所だけ見ろ。」

「はい。」

「守屋。」

「はい。」

「声。」

「もっと出します!」

監督は最後に私を見る。

「橘。」

「はい。」

「何か見えたか。」

私はノートを見つめる。

さっきから気になっていたこと。

「相手セッターです。」

全員の視線が集まる。

「苦しい時。」

「必ずセンターを一回見てから四番へ上げてます。」

神谷先輩がすぐに反応した。

「目線。」

「はい。」

「フェイントが少ないです。」

監督が頷く。

「神谷。」

「次から読めるな。」

「はい。」

神谷先輩は立ち上がる。

「一本取る。」

短い一言だった。

でも、その一言だけで全員の表情が変わった。

「よし。」

水谷先輩が手を叩く。

「もう一回流れ持ってくるぞ!」

「はい!!」

ベンチから立ち上がる。

観客席では太鼓が鳴り始める。

ドンッ。

ドンッ。

『聖明!』

『聖明!』

そのリズムに合わせるように、選手たちがコートへ戻った。

十一対十一。

試合は、ここからだった。

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