表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

とある王国の話 

とりあえずプロローグのような王国の話。ご希望いただいた別視点でなくて申し訳ないです。順次ご希望の別視点UPしていきます。

◇◇◇



これは、とある王国に起きた奇跡の物語。




その王国は腐敗していた。


他国に取り囲まれる立地のため、近隣の紛争に巻き込まれることが多かった。戦に駆り出される国民。戦のために制限される物資。戦のためといい絞り取られる税金。横暴な態度で平民を虐げる貴族。貧富の差は激しく、豪勢な王都から一歩出ればそこらじゅうに孤児や浮浪者が転がっている。


そんな国ではあったが、何とか王国として機能を保てていた。


それは一人の男の存在が大きい。


男の名はセガール。この王国の第一王子である。よわい13で戦場に立ってから全戦全勝。王子という身分にありながら戦場の真っただ中を返り血に塗れながら狂ったように突き進む。その姿に恐れられながらも勝利をもたらす存在に国民は湧いた。彼を英雄と称え、この国の希望だと国民は謳った。だがそれは、はじめのうちだけだった。


みんな気づいたのだ。その王子の表情が欠落している事に。人を人とも思っていない冷徹さに。ただひたすらに戦を求め、もうこの国に逆らう他国などいなくなったにも関わらず闘うことをやめなかったその姿。


輝く黄金の髪は乱雑に整えられ獅子の鬣のように見える。精悍とも獰猛とも言える鋭くぎらついた瞳。長身でしなやかな体に鍛え抜かれた筋肉。絶対王者の風格は何人たりとも近づくことを許さなかった。まさに至高にして孤高の存在であった。


この王子が国政に乗り出せば一気に貴族の横領や平民に対する理不尽な税の取立てなど問題が片付いたことだろう。彼に逆らえるものは誰もいない。現国王でさえ彼に気安く王命を出すこともできない。


だが、彼はまったく動かなかった。戦が起きれば国を守るために戦うがそれ以外のことはしなかった。


それ故に「戦闘狂」「役立たずの王子」「人の皮をかぶった獣」などと王子を罵る貴族がいた。しかし、それを面と向かって言った愚かなその貴族はその場で王子により切り捨てられた。それ以来、表だっても裏でも彼を侮辱するものはいなくなった。


せっかくこの国には平民に支持され煩い貴族を黙らすことの出来る絶対王者がいるというのに、彼が国政をしないならこのままこの国は腐敗し続けていく。誰もがそう思っていた時、奇跡は起きた。


セガール王子が一人の少女と出会ったのだ。


セガール王子は孤児院から一人の少女を救い出した。


少女の名はレティ。劣悪で酷い環境に置かれながら自分のことより他者を思いやる天使のような少女であった。実際、孤児院では「天使様」と呼ばれ多くの者の救いとなっていた。

緩やかに波打つ綺麗なプラチナブロンド。透き通るように澄んだ蒼い瞳。他とは比べ物にならないくらい美しい顔立ちをしていた。年齢は6歳といわれているがその佇まいは浮世離れしていてとてもただの子供とは思えないものだった。


二人の出会いのきっかけは1つの嘆願書。


孤児院の内通者がどうにかこの少女を救い出したいと考え騎士団に何通もの嘆願書を書き孤児院の現状を密告した。その嘆願書の1つがたまたまセガール王子の目にとまった。何の気まぐれなのかそれを見た王子は自分の率いる部隊を引き連れ孤児院に乗り込みあっという間に孤児院とその裏で人身売買や不当労働をしていた組織を潰してしまった。


それから王子は目に見えて変わっていった。ただ闇雲に戦に明け暮れていた日々はなくなり、その獰猛な瞳が生気に満ち溢れ国政に意欲を出すようになったのだ。そして孤高故に人を寄せ付けていなかった彼は変わり、まつりごとを宰相と共に取り仕切ったり、ただひたすら自らが指揮をとり前線をかけていた戦を信頼する騎士団長に任せた。


王子はひたすら少女の成長を見守り大事に大事に育てた。極力人に合わせず誰の目にもふれさせないよう最小限の人間だけを少女の身の回りに配置した。


少女が16歳になりはじめて公けの場で王子が少女を寵姫としてパーティに連れ出した。


少女は見たこともないデザインのドレスを着ていた。少女の美貌にも驚かせられたが、少女の着ていた繊細で美しく仕立てられたドレスはキラキラとした飾りやレースがつけられとても目を引いた。


パーティに参加した令嬢は挙って同じようなドレスを手に入れようと躍起になった。その日からドレス革命が起きた。


これまで何の足しにもならなかった針子の内職仕事。しかしドレス革命により引く手数多な大人気の仕事となり一時は下手な役人の夫より稼ぐ主婦もいたらしい。


そしてこれまで武器を作っていた業者も金具や装飾作りに切り替えその売れ行きに笑いが止まらなかったそうだ。


これもすべて王子の寵姫がそのドレスの製法を独占することなく公開しサンプル品を無償タダで分け与えてくれたおかげである。


活気づいた国民は少女をなんて素晴らしい寵姫だと感謝した。


しかし少女のもたらす恩恵はそんなもので終わりはしなかった。


少女は多くの王都に住む人たちを引き連れ国の現状を突き付けた。王都に外れにあふれる孤児、浮浪者。ゴミだまりの中で生きる人々。王都にはこれまで自分の現状を嘆く人が多くいたが自分たちよりも圧倒的に酷い環境で生きている彼らをみて言葉がでなかった。


そんな彼らに自らの手で食事を提供した少女。ごみが服きているような現状の人の手をとり温かいスープを持たせゆっくり口に運んだ。その光景は神聖なもので参加した国民の多くの目に焼き付いた。


少女はどうかこの人達を一緒に助けて欲しいと言った。


しかし自身の生活だけでいっぱいいっぱいの人だって多くいる。たまに炊き出しを手伝うくらいないら出来るが一時的に食事を提供したからといってどうにかできる現状ではなかった。


少女は語った。人には無限の可能性があるのだと。やる気になればどんなことだって出来るのだと。


そして少女はこれまでになかった仕事の方法をいくつか提案した。


「忙しくて手が離せないけど誰かに伝言を伝えたい時、代わりに伝えに行ってくれる仕事って必要だとおもいませんか。何も大金を払えとは言いません。リンゴ1つ買える程度の小銭でいいのでその仕事にお金を払えませんか?」

「お年寄りの方や足の具合が悪い人が毎日食材を買いに市場へいくのは大変でしょう。代わりに頼まれたものを買いにくサービス業とかもいいかもしれません」

「誰にでもできるちょっとしたことですけど、家業を継いで家から離れられない方にはこういった細かいお仕事って助かるのではないでしょうか? 現在主婦の方も内職で忙しい時がありますし、家事代行やベビーシッターも求められてはいないでしょうか?」

「それと、王都にくるまで泥道を歩いてきますよね。その汚れた靴のまま王都を歩くより綺麗な靴であるくために靴磨きの仕事はいかがですか? あ、洗濯サービス業なんてのもいいですね」


少女の口からはこれまで考えられなかった仕事の案が途切れることなく提案されていく。


皆目から鱗だった。


「まだまだいろいろありますけど、彼らが社会復帰するために今いったようなことを仕事として認め、元孤児、浮浪者といった忌避なく堂々と仕事ができるように協力してはいただけないですか?」


笑顔で語りかける少女に、皆ひれ伏し協力することを誓った。




ドレス革命で新たな技術の革新に市場が活性化し、人々の生活も潤った。


問題視されていた孤児、浮浪者が労働者に変わりそのおかげで税金を払うものが多くなり国のお金も潤った。


これまで横暴な行為をしていた貴族も次々その行為の証拠が突き付けられ、貴族が不当に平民を虐げることはできなくなっていった。


腐敗は取り除かれ、王国はこれまでにない画期的な進化をとげようとしていた。


すべては英雄としての覇をもつセガール王子と、そんな王子に見染められその寵を一身に受けながらも驕ることなく常に人を思いやれる身も心も美しい少女のおかげ。


時にはその少女に嫉妬し傷つけようとした愚かな者がいたが、少女のおかげで今の幸せを噛みしめているものが多くいるため愚か者は速やかに排除されていった。



その後、王子は国王となり至上最高の英雄王となった。


元孤児で王子に見染められた寵姫は王子が国王となると共に王妃へとなった。そして後に賢母、聖母と名高い至上類を見ない傾国ならぬ建国の王妃として祀られた。



これは腐敗した国の王子が一人の少女を愛し、そんな王子に愛された少女は国民を愛し、国民もまた王子を少女を愛した奇跡の物語である。




◇◇◇







































レティ「え、何コレ? ストーリー詐欺?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ