1.あたしの大大大好きな君。
あたしには大大大好きな男の子がいる!
あたしの名前は吉岡 桜兎
茶色の少しくせ毛のふんわりとしたミディアムヘア。目はパチクリしていて身長は小さめで色白。小動物系の見た目とは裏腹に性格が残念な女の子。
そして、私が今か今かと待っている男の子
名前は柏木 空くん。
中学生の頃から空くんを追いかけ回してるあたしは、頭のいい空くんと同じ高校に入る為に、受験も死に物狂いで頑張って頑張って頑張ってギリギリ合格しました。
この春から大好きな空くんと同じ高校です。
高校受験で合格を見事勝ち取った時も空くんは
「あ、そーなんすね」
とだけ言って立ち去って行った…。苦い思い出だ。
今日は入学式なんだけど、こんな朝からあたしは何をしているかと言うと、空くんがお家から出てくるのをひたすら待っている。
朝最初に挨拶をするのはあたしでありたい!
ソワソワしながら待っていると、空くんの家の扉が開く…。
すると、欠伸をしながらだるそうな顔をした空くんが家から出てきた。
急いで駆け寄っていくあたし
「空くん!おはよ!」
ニコニコと空くんに声をかける。
空くんはチラリとあたしの顔を見ると
「あぁ………吉岡さん、おはよう」
そう言ってすぐに前を向き直して歩き出した。
今日もとても素っ気ないけどカッコイイ!
サラサラの綺麗な黒髪と少し長めの前髪から見える男の人にしては白い肌に整った顔。
そして、中学生の頃からかなり伸びた身長。
ほどよくついた筋肉も素敵…。
無口で愛想も良くない彼だけどそんな彼が大好き。だってあたしは優しい空くんを知っているから。
「今日も朝から空くんと一緒に学校行けて嬉しいなぁ、朝から会えるなんて運命かなぁ〜?」
とニコニコしながら空くんの顔を見つめる。
「……毎日待ち伏せしてますよね…」
呆れた顔であたしの顔をチラリと見てくる。
「もーう、そこは運命ですね。じゃない?」
少しむくれるあたしに
「そうっすね」
まったく感情のこもってない適当な返事をする空くん。
無口と言っても話しかければちゃんと返事をしてくれる、そんな所も好きっ!
「それにしても、空くん新しい制服カッコイイね。高校でも空くんモテちゃいそうだね」
モテる空くんを想像したら胸がぎゅううと締め付けられる。
「モテるとかそーゆーの興味ないっすね」
本当に興味無さそうな空くん。
「興味持ってほしいけど…興味持ってもらったら困る…いや、でも興味持ってくれないと一生このままはすごく困る…よね?」
一人ブツブツ言っていると
「吉岡さんって頭の悪そうなことばっか言いますよね。よくこの高校入れましたね?」
呆れたようにチラリとあたしを見てくる。
「空くんのいない高校生活なんて考えられないもん。人生で1番頑張っちゃった〜。えへへ!」
満面の笑みになるあたしに
「そうっすか」
またもや適当な返事をする。負けじと声をかけるあたし。
「クラス同じになるといいね?楽しみだね〜」
「俺はどっちでも」
と、全然興味が無さそうで寂しい。
今日も相変わらず冷たいなぁ~。返事してくれるだけありがたいけどね?
「あたしが居ないと寂しいと言ってください」
「そうっすね」
「あたしに朝から会えて嬉しい?」
「そうっすね」
全てに適当な返事をする空くん。
こうなったら…
「付き合ってください」
と言うあたしに
「無理っす」
めちゃくちゃ即答する空くん。
「そこはそうっすねじゃないのー?」
と口を尖らせてブーブー言うと
「…ふっ」
口元に手を当て微かに笑う空くん。
「……。」
あまり笑わない空くんが笑うとカッコ良さに拍車がかかりあたしが照れてしまう。 さっきまでの寂しい気持ちも吹っ飛ぶカッコ良さ。
なによ!なによ!ギャップ萌えで死んじゃうじゃん!卑怯だよ!!
恥ずかしくなったあたしは真っ赤な顔を隠したくて俯いて黙り込んだ。
そんな姿を空くんはチラリと見たけどまた前を向き直して学校に向かって歩き出す。
あたしが無言になろうが顔が赤かろうがそんな事興味ないですよね!知ってますよ…くそぅ…悔しい…。と俯いて歩き続けるあたし。
すると………
突然、グイッと腕を引っ張られて、空くんの胸にダイブすると空くんの腕に抱きとめられるあたし。
「ふぎゃっ」と変な声が出てしまったが、胸の中にいる事に歓喜しつつ、空くんの顔を見上げると、整った綺麗な顔が近くにあってドキドキと高鳴るあたしの胸。
その瞬間、自転車があたしの横を走り去っていった。
「前見ないとあぶないっすよ」
そう言って腕が離れていき、何事も無かったかのように歩き出す空くん。
「…えへへ。ありがとう」
相変わらず優しいかっこいい好き…と耳まで赤くなって照れるあたしは前を見れなくて再び俯く。
すると俯き続けるあたしに
「さっきの変な声は色気ないっすね」
と空くんが少し意地悪を言うから、あたしはガバッと顔を上げると
「やっと前見ましたね。危ないんで前見ててください」
そう言うと再び空くんは前を向いて歩き出した。
「空くんってそんな意地悪だったかな~?」
むすーとしながら歩くあたしに
「まぁ吉岡さんだから」
とあたしを見ずに答える空くん。
「えっそれってあたしが特別ってこと?」
頭の中がお花畑のあたしは、嬉しくてキラキラした顔で空くんを見つめると
「まぁ…それはないっすね」
といつも通りの空くん。
「だよねぇ〜、でも大好きだよ!空くん!」
何を言われても優しい空くんを知ってるあたしには何も効かない。ふふふとスキップしながら空くんの隣を歩くあたしに
「そうっすか」
といつも通りの返事が今日も返ってくる。




