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召喚  作者: 黒龍藤
第四章   道中に当たり  色々、準備します
241/242

241 ある、未来に歌

新年の挨拶も通り過ぎた13日の金曜日、22回目。

栄えあるにゃんにゃん回は、せいれー乱舞。



 夜のしじまに風が冷たく巡る中、大地の一点を見つめる。


 注意深く見ているだけだが、仇でも見ているような殺伐さを覚え、少し目を離し。離せば、それが『逸らした』事象と過去を思い出させる。


 命溢れる豊かな大地に新たな泥濘を被せて罪を眠らせた、あれは懐かしくも 「皆、揃った様子。始めますか?」 「ああ」 昔の話。


 今は、此処に。



 「では、これより緊急プロジェクトを宣言する! 指揮を取るのは私、ラドマリアに生まれた十五天元が一つ、十一のえーたである。通達通り、今回のプロジェクトは何よりも迅速を尊ぶ。 時間との競争だ! 我らの普段の完璧さで動けば、完成までに下の子は元より、対象である他家の子の存在そのものが危ぶまれる。それは絶対に回避せねばならない。また、出来上がる前にこの地を出立する危険性もある。最も、この危険性については今世の子が重しになろう故、然程高くはない。


 なれど、出来上がれど居ないでは建築する意義も! 我らが主の優しいお心遣いも! 全てが無意味となる。必ずや、一度は入らせて認証(pass)を作らせねばならない。でなくば、その後の増築も回廊も夢話よ! 下層階は後回し、入り口と上層を早急に構築する。安全と効率を重視し、数と力で時間と勝負! 始めるぞ!」


 「「「「「「 しゃあああっ!!! 」」」」」


 

 …しまった、ここまでの大声は予想外。展開させてから演説するべきだったか。以前の勘を取り戻せてないかもしれないのが怖い。ま、もう遅い。



 「第一班、内外の二手に分かれよ。外側は周辺の巡回、並びに竜属への対応を。内側、ぜーたは光と闇の星砂を展開。みゅーは展開に合わせて地下へと落とせ。えーたはその傍に。他の者は下の子の家と外壁、並びに今世の子の網に注意せよ。散開!」


 グッと拳を突き上げて了承と意気込みを示し。

 それぞれが配置へと飛び出す中、ぜーた達が中央に固まり、身を縮め、こちらを伺う目に素早く皆の配置に目を走らせ。


 「始め!」


 勢いよく背中を反らせて星砂を撒き散らす。


 飛び散る星砂は力の解放に輝き、反発どーん結合きゃふーを発揮。高速の瞬き(ぱちちちっ!)で編み上がる輝きを水が追い掛け絡め取り、飲み込んで、形を整え、頂部まで上り詰めた後は大きく弾け、なだらかに落ちゆくままに覆っていく。


 「…膜の密度は良さげだな」

 「ええ、あれなら下の子の目も誤魔化せましょう」


 五箇所に散ったみゅー達が変光膜が落ちるに合わせて膝を着き、地面に触れると同時に手を着く。ずるりと地中に入り込み、隔てていくのを感知。自身の知覚を用いて正しく構造体のラバーになりゆく様を注視する。


 「さんとふぁいが変光膜上部に接する今世の子の網対策に入ります」


 聞き流し、みゅーの傍に陣取る同胞達を注視。指示を出す。


 「十五秒後に予定深度に到達、用意!」


 囲い閉じるのではなく、下に 真っ直ぐに。

 それだけの事。


 そこに僅かな私情(追憶)が紛れ、其れ所ではないと殺す。


 「三、二、一、双方固定!」



 それで、ぶつりと切れた。

 



 この地に沈む、永き悪夢。

 か細くも未だに続いたあの子の手足とするモノが、ようやっと。


 ようやっと 黙受に至れり。



 浸りたい程のこの感慨(成功)に蓋をして、笑みを浮かべて、現状の成功に拳を振り上げ、良しと送る。



 「今回の変光膜は湿度が少し心配ですね。今世の子がいるから」

 「では、しーた達に経験値を稼いで貰おう」


 頑張れと押し付け、第一班双方からの合図に頷く。


 「続いて第二班、下の子のルートを使って地下へ下り、設定図通りの配置に付け。眠り姫の涙は適宜使用、重ね掛けは推奨しない」


 腕一杯に抱え、うきうきで待機している姿に苦笑。


 行けと振り下ろす合図で、一斉に宙に躍り出る(スタート)。膜の内部へ飛び込み流星の如く下の子の家の入り口に殺到する様は実に楽しそうで羨ましい。


 先頭に立ったさんが愉悦を浮かべて放った輝きが下の子の家の扉を歪ませ、虚を刻み、できた光環に一気に傾れ込む。


 「タイムアタックしてそうですね」

 「…流石にクラッシュするのは居ないだろ」


 競うなら数だと思っても口にはしない。


 さて次だと見回せば、羨望の籠った目で見ている者が多くて苦笑する。そんなに下の子にぶつけたかったのかと思うが公認投げなんて滅多にないから仕方ない。


 「次、第三班!」


 手も叩いて、意識を引き。


 「第二班の待機場所は要だ、必ず二人は傍に付くように。他の者は担当区間の状況に応じて配置を「お、ま、た、せえー!」 あ?」


 馴染みある声に顔を向ければ、闇が滲んで。

 滲む闇が変光膜に触れ、部分侵食した。


 「遅くなり! ラドマリアが十五天元の一つ、三のおめががやってきたよー!」


 めちゃくちゃ良い顔で乱入してきた。





 「…… 」

 「あああああ、アイドル降臨!!」


 隣にいた副室みゅーが発した歓喜を皮切りに。


 あいつ。


 「わああああ!」「きゃーーーあ!」「来られたのーーーー!?」


 一気に湧き上がった歓声に絶対的停滞。

 止めようにも止まらない。


 「こんな所で!」「うれしいぃいいい!!」「信じらんなーーーーい!!」


 あいつ… ヒトが引き締めた雰囲気をぶち壊してからに! 変光膜、欠けてんぞ!?



 絶対数が少ないから仕方ない。わかってる。

 わかってるが、こんな登場して欲しくない。みゅーがふらつくに決まってるだろうが! 下が揺れたらどーすんだ!


 どうせ来てくれるなら、別のヒトが良かったなああ!




 「じゃあ、みんな! お仕事しよっかあー」


 ウインクも決めポーズも要らない。

 しかし、先程よりも気概に満ち溢れてる状態に是と否が鬩ぎ合い、割り切れない気持ちがだけが募る。


 現状、イラッとする。

 

 ふわりと隣に降り立つから。

 有り難うと言う前に、笑顔で小声の「うざい」が滑り出た。


 絶対、自分は悪くない。結果が最良になっても、それとこれとは話がちがう。そんな顔しても、ダメ!! ダメったらダメ!!


 

 「最下層は任せてねー」


 自分の存在を最大限にアピールして行った。

 隣の目が夢中。


 「「「「 「 お願いしまーーーーす!!! 」」」」」


 皆の気負いは減ったのだからと笑顔で黙認するし、見送るが  ダメだ、今は仕事だ。大事な仕事が優先だ。順次続けと合図を送る。



 「そろそろか?」


 遅いなぁ?と心配していただろう第二班の気持ち(アイドル来襲!)を思い遣って間を空けたけどさぁ。



 「よし、回線繋がりました。良好です」

 

 上層階から順に報告が入り始めて安堵するも、相手側は興奮冷めやらぬ声で早口で、ほんとにもう。


 「では第四班、上下の二手に。行け」


 真面目さ以上にやる気に満ちちゃって、もう。



 『やっほー、聞こえるぅー?』

 「はい、素晴らしい感度です!」


 『現時点での最下層予定地に着いたよ。一通り周辺も見たけど問題ない、いつでもいいよー』

 「はい、流石でございます!」


 馬鹿になってると思うが、みゅーだから仕方ない。来てくれたから使わずに済んだし、動かなくて良くなったし。


 「地下、全ての準備が整いました」

 「では第一班、気取られぬよう厚みの調整を頼む。終わるに従い、厚みを戻せ」


 真剣な顔で応じる姿に、どこかホッとする。


 「これより暗骨格を搬入する。第四班が下、搬入口を開け!」


 みゅーとさんが織り成す複合門を下の子の家と重ね開くと明度が強い。これを隠すに闇の星砂を撒かせ、気取られぬ速さで暗がりの口を開かせるが開き切る間も戦争だ。


 「第一班、今世の子の網に対応!」

 「変光膜の擬似化、入ります! 同調対応、開始!」


 変光膜の内側に直接繋げられれば良かったが、流石にこの質量は酷い。


 「下、残り八十で搬入開口部が規定値に到達します」

 「第四班が上、通過開口部を開け!」


 「網、対抗値なし! 同調!」

 「今世の子の居場所に防音壁を築け!」


 「倉庫側、問題なし」

 「上、通過開口部全開!」


 「第五班、構え!」

 「変光膜、同調により上限解放。上空へと伸びます!」


 ぐんと伸びた変光膜が淡い光の柱と立つ。


 「第五班、変光膜上部を花弁状に開け(漏斗状に形成)!」


 円陣を組んだ第五班が揃って飛び付き、力技で広げていく。


 「通過開口部、口部安定ネットを伸ばします。  キャッチ。 安定化、完了!」



 「倉庫、搬出口を開け(ゲート・オープン)!」





 ぐぉん。


 滑らかに開くも搬出口から重い音がした。

 想定外に響く重音に急遽、腕を振る。それよりも先に、これ以上の放音は許さずと、外のみゅーがしーたを引き連れ飛び回り。音を喰う。


 消音に吐息。

 

 見上げれば、倉庫内のライトに照らし出される暗骨格。ずしりとくる威容は作り手としても惚れ惚れとする重圧と異彩を放つ。


 つい、口角が上がる。

 良い気分でいても展開知覚に引っ掛かる。


 「第五班、更に暗幕! 並びに遠見防止の星雲鏡を出せ! どこからであろうとも決して下の子に見せるな、気が狂う!」


 視認と判じた一点に向けて指差せば、「第一班、外からの連絡! 眠り姫の口付けを散布したとの事です」対応がきた。地点も同じと聞いて安堵する。


 「よし、なれど今回の眠り姫は下の子に合わせ濃度が薄い。その点を憂慮せよ」


 その間にも出てくる暗骨格を見て、ふと、あいつにできるのかと不安が擡げるが… 土中の闇と思えば気にし過ぎだろう。


 「変光膜、変形完了。安定。内部、撤退完了」

 「下、開口部完全開放。上、通過開口部安定」

 「上、下、共に口径合致」

 「倉庫側、放出点を微調整中」


 「倉庫側、位置確定。三揃い、修正必要なし!」



 「全班に通達。コール、十五。地下班は各自、地点の通過速度に注意。構え!」


 復唱が行われ、カウントが始まる。



 三 、

 片手を上げ。


 二 、

 最後の異変確認に目を配り。


 一 、

 「暗骨格、落とせ!!」

 振り下ろす。



 ごっ…






 これぞ、子供の為の暴力()の塊。

 その証である重さの速さは、落ちるに於いて変光膜内を食道と滑り落ち。現場からの連絡も風と等しく飛んだ。ほんと速かった。


 うん、ここまで雑と丁寧にやった事はない。


 時間もなければ場所と範囲も指定有り。融通がないとくれば、多少乱暴でもこれが一番早くて正解だと頷き、仰ぎ見て「倉庫、搬出口を閉ざせ!」作業を再開。



 網も外して変光膜の形状を元に戻し、地上部分の上半分を第一班への力の補助として散らし、下半分を地下へと押し下げて地上戦が終わり。引き続き第一班には、これから始まる騒音と振動対策を任せる。


 「これより暗骨格を開き、押し込んだラバーと圧着させる。それを外皮とするに萌芽を行う。ぜーたはラバーに力を。えーたとさんは配分協力を。ふぁいは内包分量を違えぬように。みゅーとしーたは開始後の内部調整を。 では、始め」


 地下を視る。

 手足の如く知覚して、始まった変動を感知する。


 水の巡りに芽が撒かれ、成長の誘いに土壌が覆い被せと巻き込んで、混じり固まり押して伸びるに、そろりと火が境を詰めれば適応が始まり、下の子が築き上げた内部の端が崩壊の兆しの音を上げる。


 「暗骨格、開きます」


 暗骨格が根付くに力を広げ、接触したラバーを押し除けんと圧した。


 「よし、一気に芽吹かせろ(物質化)!」


 萌芽が圧する力を餌と食い、食われる力が邪魔だと潰し。

 生存性を賭けた闘争の嵐が吹き荒れる。


 ごうごうと遣り合う中で下の子の築きは瓦解が始まり、瓦礫と成り、「あ、この部材いけそう」「拾っとこ」砂塵と成り、「固めるのにいる?」「地質的に取っとこ」荒地の如き様相を呈し。


 全てが吹き荒ぶ中で、果てぬ場所を視た。

 他が虚と成りつつあるに落ちもせず。


 枯れた泉の水が再び湧き出るに似た感傷が意識の端に登るも、幻想が過ぎると無視して今を見つめる。押し合い圧し合い混じり合って圧着化も無事に終わり。


 一つ変容を遂げた内部は暗骨格を残してうつほとなった

 

 「下の子達は?」

 「…生命反応に問題なく移動もなく申し上げもないですね。ですが、ふぁいの火加減が良かった様子」


 「ん?」

 「上への膨らみが」


 下から上へと視点を移せば階段が短くなっていた。うっわ。


 「…予定より押し上げられたか」

 「…予定通りと言えば予定通りで」


 「うーん…」

 「それに合わせて荷台用の昇降機がですね」


 「そういや、あったな」

 「物と綱は確保済みでーすーけーどー」


 「あー、歩行路と直通路の距離調整かー」

 「どうします? お披露目まで空間弄り倒しておきましょかあー?」

 

 「報告でーす」「報告しまーす」


 各地点から次々と報告が上がり始めたので、そこまで。




 『ねえ、暗骨格はもう開かないの?』

 「はい、その事でしたら少々お待ち下さいませー!」


 跳ね上がる声と頭に苦笑しつつ、上の状態を伝え、下の状況を聞く。


 『ふふふん、まさかあの程度を受け止められないとでも〜〜?』

 「いいえ、まさかあー!」


 そうかと過る安堵に…  安堵?   隣が煩いから頭を押さえ込む。序でに泥縄噛ませてやる。

 

 「では、三の。今から暗骨格を「んー!んむぅー!」 ん?」


 下から誰か駆けてくる。




 「これは」

 「我らが主の括りですよね!?」


 差し出された古いモノ。

 下の子の力が見苦しい程に絡み付き、塊となったモノ。それを括った両端が引き千切れ、垂れ下がり。


 「これ、昔のあれ?」

 「わあ、我らが主の括りが綺麗!」

 「綺麗だけど… 外れそうにないと思うの…」

 「あれ、締め直してる?」

 「…根混ざりしてない?」


 『えー、我らが主の括り締めがあったのー?』

 「「「「 そうでーーーーっす!! 」」」」



 これはあの子ではないし、あの子の核としたものでもない。それでも絡み付く不快に目が細まる。そこで目に付き、疑問が湧く。


 この締め直し… 千切れ易いようにした?


 「他にはなかった?」

 「はい! 気付いて皆で探し回ったけど、それだけで」


 「そっか、お疲れ」


 そうだ。

 我らが主の御力だ、圧着に一役買ったんだろう。


 千切れて残ったモノは、もう要らないモノ。

 でも、残って此処にある。


 違う、この締め方なら残る事はわかっていた筈。ならば、これは残されたモノになる。


 此処は、もう崩れない。新しい未来へと続く事が許された大地。なのに、これが残される。 …本音では許す事なき、との仰せ? であれば、どうしたら? どう考える?



 選択を委ねられている。


 どうしたいかとわかっていて。

 どう在るのかと問われている。


 問われる先には僕の価値。


 ああ、 でも、 そんな事より 考えより。


 我らが主が僕の頭に手を置いている。良い方に、良き思い出へと、未来を動かしてごらんと言っている。そう受け取れる。


 だって、僕はえーただもの。

 だから、これは。


 我らが 主よ。





 願いを込めて、想いを掛けて。

 我らが主の御力に縋りて、この手の中にあるモノに、えーたの力を用いて囁く。


 「在れ(有機)よ」


 力の呼応が淡い光を呼び起こす。

 常と同じで違う感覚。


 その光を閉じ込めんと握り締め。

 握り締め。

 握り締め。


 「我らが主よ」


 縋るに言葉が滑り出て、紡ぎ言葉に心を重ねる。

 

 「在れたし」




 広げた手の中、透き通る種が生まれた。


 






 「急いで」


 「下の子のガードだけでいいんだよね?」

 「自分ガードも忘れないで?」


 「仕様が変わるの? ほんとに?」

 「急拵えも何もないのに」


 「十五天元が二人いるから大丈夫だって、早く!」



 避難と配置が完了したと聞いて、目を開ける。緩く広げた手の中で淡い光が夜を照らす。それだけで笑みが零れて止まらない。


 「本当に?」

 『だーかーらあ〜、誰だと思ってんの? 三のおめがよ? 破壊者よぅ?』


 唇を尖らせて文句を言う顔が浮かぶ。


 でも、これから行う事を考えると力量が…  って、思い出した。そうだ、我らが主のお菓子をあげたんだった。あの場でまるっと食べてるし!


 ストンと気持ちが落ち着くと、手の中で小さくもトクンと生命(発芽)の音がした。






 「此処にあるは物理に非ず、此処にあるは力、此処にあるは神意」


 闇が深き刻に、歌を歌う。

 掲げる種が正統であると知らしめる為に声を張る。


 同胞の一人が追復を始め、そこから輪唱が広がる。

 その声量を耳に許容を定めて腕を振るい、輪を連ね生み出し増幅する。えーたの声だけが地に広がる。根を張るように。


 「此処にあるは願い、此処にあるは祈り、此処にあるは希望の種」


 風の戦ぎに仄かな煌めき。

 さんが放った力は歌声を取り込み、しーたが地下へと導いて。


 「此処にあるは時の宴、此処にあるは目覚めの砦、此処にあるは真意」


 ふぁいが宝華と火をくれた。


 「此処にあるは神威」


 根付くこの地を見せる為、天へと種を掲げやる。

 それに宝華が追従した。


 種を中心に炎環を成した宝華は火の粉を飛ばす。みゅーが指差し、指し示された形を埋めんと火の粉が渦を巻いて取り囲み、冠を模し。

 

 透き通る種は火冠を戴き、赤く輝く。





 「まーだっかな〜」


 ちょーよゆーでライン止めしといた暗骨格の先端をぽんぽん叩いて更に馴染ませる。


 「ふらふら飛んでたって聞いたから心配してたのに。フライトレーダーで確認した先が此処だったから、もっと心配してたのに。うざいって何よ、もう!」


 そりゃあ、他の皆は大体が静かなタイプでやってるけど? すっごく静かな時もあるけど、その時々でそれなりに騒がしいのに。


 「歌って踊る系はダメだって言いたいの? 私のキメが悪いとでも? でも、反応良かったじゃない〜〜」


 第一位精霊は闇。

 精霊シリーズの一の位も、おめがシリーズ。

 闇は精霊の統率者に位置してる。

 第三期であるラドマリアが担うは指揮系統。


 だから、皆が不安にならないようにって。賑やかにって。そう思ってやってるのよ!? それなのに何がうざいのよ!


 悲しみには鼓舞を、心には明るい平穏を!


 それが闇である私に与えられた役目であり、使命であり、矜持として持つ自我であり! それなのにぃいい〜〜〜〜。


 「十五天元だし、頑張らなきゃーとも思ってるし。十一ってば、ちょっと繊細入ってるの知ってるし。もう、もう!  こうなったら愛の歌でも歌ってやろうかしら」


 ちょっと上を睨んだら、見える一際黒い場所。

 暗骨格に萌芽が引き起こした暴力を無視してる場所。我らが主の手が入ってる。十一は、ちゃんとあそこに行ったのかしら?

 

 「ん?」


 此処まで頑張る風の流れにしーたの努力を褒めてたら、ぽわりと光が一つ舞い込んだ。


 「わぁ、なに? さんのライトレターパック?」


 風が緩んで、光が弾けて、声が広がる。


 「え、待って。 歌ってる? え、歌ってる!? 十一が歌ってるの!?   あああ、えーたの歌揃え!  やーだ、私も歌い手なんですけど〜〜〜」


 意図がわかるから、闇に織り交ぜ地を染めるのを手助けするけど、今からでも混じりたい! でも、歌ったところで混成の合唱にはならないからつまんない。


 ぶちぶち気分でラバーでぶっつり切れた外の根を、ちょーーっと引き寄せてあげる。


 「は?」


 今からやると聞こえた十一の声に顔を上げ、透かし見る。



 


 「ラドマリアが十一のえーたが此処に告げる」


 宣告に感慨が満ち、笑みが浮かび。

 周辺一帯を見渡してしまえば、どうしても目に付く新しいべっちゃり!に笑みが深まる。


 「この地に満ちる罪穢れ、干上がり渇いて晒し飛ぶもならぬ、その罪が 今日この時をして許されり。これより我らが主の御心が、再び向けられる喜びに 泣くが良い」


 赤き火の王冠(複合)を得て輝く、清き種を掴み取る。


 下の子の家。

 暗骨格が埋まる先端。


 「永きに渡る僕の苦悩を、この地の新たな穢れに気付いた僕の懊悩を!」


 ああ、種の温もり。

 地の穢れ。

 心に描き鎮めるは、下の子の面影。


 見つめる先、目が合った三。

 湧き上がるナニか。


 「この地に恩赦を導いた  僕の 英雄ヒーローへの こ、の、 あ い を!   思いしれぇえええええええ!!」

 

 力の限り、ぶん投げた。







 「ふふふ〜〜ん  あー、いーきぶん〜 酔っちゃうぅう〜〜」

 「お疲れ、問題なかったな」

 「すごかったのです!」


 「もっちろーん、だから誰だと思ってるのー? んふふ、だけど〜 十一の」

 「ん?」


 「あの歌」

 「ん?」


 「ねーえ? あの歌にぃ、こっそりぃ『此処にあるは礎』なぁ〜んて歌ってないわよねぇ?」

 「え?」

 「は? え、それって… え!?」


 にぃって笑って脅してやったの。

 予定外なんだから、脅しの一つも許されるに決まってるじゃない。

 




 「冤罪で酷い目に遭いそうに」

 「やーだ、知らなあーい。それより、あそこには行ったの?」


 「…や、まだ」

 「そ、じゃあさっさと行くわよ」


 「え、ちょっ ま!」

 「待たなーい。あ、ごめんね。あなたは遠慮してね」

 「はい、行ってらっしゃいませ!」


 腕を組ん(拘束)で祭壇と呼ばれた場所に行く。



 「…綺麗ね」

 「…ほんとだね」


 「我らが主の手が入って素敵。此処、どうするの?」

 「どうって」


 「封鎖する?」

 「あ、いや… うーん」


 「感慨は?」

 「……ないなぁ」


 「じゃあ?」

 「猫模様だからー ん〜 他家の子の〜 秘密基地?」


 「優しくなれそう?」

 「…どうかな?」


 変わり始めた横顔が嬉しいから。

 ちょっとだけ。


 夢と照らす光の影を寄せて集めて、凝らせて、形を与えて変えてあげる。


 「ほら、器ちょうだい」

 「え、器って」


 「ほら、土ちょうだい」

 「え、わあ」


 「ほら、摘んできて」

 「早いって!」


 「遅いわよ」

 「我らが主の光の花だぞ!」


 「…影型枠抜くの下手だっけ?」

 「そんな事あるわけないだろ、僕を誰だと思ってる!」


 笑ってあげる、最高って。

 二人で作り変えた光花を添えて、小さな飾りの木(インテリア)を作ったの。



 

 「ふふ、強くなったでしょ」

 「そうだね、増えたかも?」


 「ん〜ふふふふ!」

 「…間違っても一位と張れるなんて思うなよ」


 「えー、一の位を継承するならあたしだと思うんだけどなー」


 自信有り気な顔に溜息。

 

 「本気で思ってそうだけど… うん、力は凄く増えてるけど」

 「けどぅ?」


 「お・も・い・あ・が・る・な「うきゃっ」っての」


 一位とお前じゃ格が違う。

 一位が居るだけで安心する。あの絶対的安定感がない。


 ああ、でも、うん。


 遠い昔が今、此処に。昔の夢が今、此処に。そして、今が過ぎ行きて こうして、三の輪珠と。


 「もう、素直じゃないんだから」

 「何がだよ」


 肩を並べて歩いてる。


 遠い昔が今、此処で  辛かった夢の終わりに凪いでいく。





 「宝華のお陰で中心地はガチいった」

 「でも、問題は周辺一帯の時間。導火線があれじゃあね」


 「あれって言うなよ」

 「仕方ないでしょ、ラバー越しに繋いであげても細いんだもの」


 「…隅々にまで張ってるから」

 「清め切る前に焼き切れちゃうわよー」


 「結局、別燃料の投下かあー」

 「当初の予定はなんだったの?」


 「自分で」

 「あー、今更えーたが動いたら消えちゃうからやめてー」


 「わかってる」


 今後の方針を話しながら戻る。

 暗骨格は外皮ラバーを纏って虚実を脱し、下の子の家と重なった。火を得た種は確実に芽吹いて暗骨格に定着する。


 透明で生まれた種は虚実を纏い、大地へ沈んだ王冠(太陽)を目指して地に降る。


 「育つかしら?」

 「一応、育つと思うし育てる予定」


 「あら、簡単に言うわね、世界樹仕様なのに」

 「我らが主の仕様書に、遠くへ行っても遊べる様に通路の設置も入ってて」


 「…世界樹の枝葉を通路にするの?」

 「…虚実だから、どうにでもできるし」


 「…入り口が地下ってどうなの?」

 「…冒険心が擽られるといいなーって、希望と期待を。取り敢えず、セットアップしないとー」

 

 今後の進捗予定と空き時間を話しながら戻ったら、賑やかな声がした。




 「思い知れー」


 は?


 「我が愛をー」

 「思い知れー」

 「この愛をー」

 「知るがいいー」

 「せーかーいーの〜」

 「はーてまでー」

 「とーきーの〜」

 「向こうまでー」

 「我が愛をー」

 「思い知れー」

 「こーのー あーいを」


 「「「「 知るがいいーーーー!!! 」」」」

 

 「我が愛をー」

 「思い知れ〜」


 何このエンドレス。

 

 「っく」


 隣を見れば、声を殺して笑ってた。腹を抱えて笑ってた。目が合うと終わらない笑いに入りやがった。


 「あ、おかえりなさーい。セットアップ準備できてますよー」

 

 報告に託けて三に駆け寄る根性がみゅーの性根だ。



 「室長、一階の床は均したです」 両手を床に向けて、さあ〜っと。

 「瓦礫は端に寄せた感じでーす」 両手を胸の前で伸ばして、どーん。

 「階層は二階まで区切りましたあー」 片手伸ばして横に一閃、しゃきーん。

 「二階の床均しは最中ですが、壁の方はできてます」 両手を上げて顔の横で、ぺったぺた。


 細かな報告に頷いて、「お待たせ」とだけ言っておく。


 「セットアップと並行して下の子が使ってる地下ジャンプルートの交通整理も済ませよう」

 

 「あー、時間押したら忘れそう〜」

 「そうでした」

 「ジャンプ一発、ぐちゃりは怖い」

 「生き残ってるの、二基だっけ?」


 「後、階段の距離問題な」

 「「「「 はええええ!? 」」」」


 お披露目までバレないよーにする事案を夜明けまでに片付ける。片付けるったら片付ける!


 「十一の、最悪は闇の宝石箱だしてあげよーか?」

 「遠慮する」






 「成功… したのかな?」

 「まだ飛び回ってる」

 「入り口閉じたから聞こえないし」


 「おい、それより搬出資材の確認だろ! 今回の資材ミスは致命傷だぞ!」


 「あ、ごめん!」

 「あ、火が点いた!?」


 「え!」

 「わああ!!」


 限りある窓に飛び付くあいつら酷いと思う。

 どうせ見えないんだから、飛び付かなかった残りでせっせと確認してく。「ゴッといったあー!」でも、実況になってない実況には耳を傾ける。火が点くなんて予定と違う。


 闇の中、火が生まれ。

 燃え上がり、赤々と、じりじりと、大地を炙っていく。


 それが途中で燻り止まる。 まだ伸びる筈の火が消えてしまう?



 「その地点、範囲記録して」

 「はーい! タブレット使用しまーす!」


 全て赤く染まれば良いのに。

 でも、燻る場所がある。 …堰き止めてる? それとも燃え草がない? 下の子の心が、どちらに向いての 「あ、引火した」 はぃ?  


 「わ、すご! 燃え燃え!」

 「…下の子、馬鹿じゃね? 追加燃料投下してやがる」

 「うっわ、燃えの違いでよくわかるう〜」


 新旧の違いによる濃度の差を耳にすると… ほわりと広がりかけた下の子への気持ちが… 悲しいのかなんなのか、よくわからなくなってくる。

 

 来世に期待のポイ捨ては本当に有効なのか? 一度、切り刻んででも検証すべきでは?  …上申しとくか。


 「あ、誰かくる!」


 


 さんとしーたが興奮してた。

 倉庫内で光を撒き散らかすのはやめて欲しい。倉庫責任者の前でやる事じゃない。


 「みゅーが動かしてるから搬入が始まるわ」

 「予定通り、繋ぎ先は二階の壁なんだけど〜〜 聞いて聞いてっ! 生まれてたのよ!!」


 「は? 誰が?」


 「もう、もう、先に言ってくれればいーのに!」

 「今回のは他家の子の健康が第一って話で聞いてるでしょ?」


 「聞いてる、それに合わせて下の子にもと」


 「「そうなんだけど〜〜〜 正式な公表は完成後だってぇ〜〜〜 だから、みんなでこっそり! 」」






 だぁれ、だぁれ。

 英雄だぁれ?


 滅びの時を 止めたの、だぁれ?


 だぁれ、だぁれ。

 英雄だぁれ?


 えーたの嘆きを 止めたの、だぁれ?


 だぁれ、だぁれ。

 英雄だぁれ?


 我らが主の御心を 優しくされた、英雄だぁれ?


 だぁれ、だぁれ。

 英雄だぁれ?


 我らが愛を 受ける子、だぁれ?


 だぁれ、だぁれ。

 英雄だぁれ?


 我らが愛を 思い知れーーーー  わーい♡ らぶらぶらーぶぅ〜〜〜♡





完成まで口遊むのは「思い知れー」と「だぁれ?」の2本です。


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