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月が太陽を絆すまで  作者: ウパ戌


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二人のこれから

「これ」

「ん。ありがと」


 俺は自販機でミルクティーを買って、彗に渡す。俺は自分の分の缶コーヒーのプルタブを引いて開ける。


「……」

「それで話って?」

「えっと」


 まずい言葉が出てこない。心臓がうるさい。普段はもっと楽に話せてたのに。缶を握っていない方の手から手汗が出ているのか、手の内が気持ち悪い。


「あさひ、こくはく?」


 すると突然そんなこと言われた。俺は缶を見つめていた視線を隣の彗に移した。すると彗は優しく笑った。


「ちがう?」

「……ちがうよ」

「ざんねん。こくはくだったらおーけーだった」


 彗がそんなことを言う。


「俺が振られたのにか?」

「ん。あさひから告白されたらおーけー」


 これは本音なのだろうか。それともこの場を和ませようとしているのだろうか。にしても流石に言わないと男じゃない。


「すい」

「ん?」

「まずはごめん。正直、そこまで彗が思ってくれてるなんて思わなかった」

「しかたない。言わなきゃわからない」


 待っていたようにそう言った。


「私もあれから考えた。私がいっぽうてきに話すぎた」

「いや、俺が無神経だったよ。誠実じゃなかった」

「わたしこそ浅慮だった」

「いや、俺が」

「わたしが」


 そんな押し引け問答になってしまった。


「ふふ」

「はは」


 二人してその事実に笑った。


「すい」

「ん?」

「少しだけ待ってもらってもいいか? 少しだけ話すのに勇気がいて。できるだけはやく話すから」

「……わかった」

「ありがとう」

「けどわたしは大人しくまってられない」

「え?」


 彗は俺の膝の上に手を置いた。


「私はあさひの壁をとっぱらう」

「どうしてそこまで考えてくれるんだ?」


 ついそう口にしてしまった。口にするつもりはなかった。けれど気になって仕方がなく、つい出てしまった。


「そんなのきまってる」


 彗は俺の目をじっと見てくる。俺はその瞳から目を離せなかった。


「わたしが」


 そして俺の膝の上に置いてあった手を俺の胸の高さまで上げて、その指先でつついた。


「あさひの事がすきだから」

「え?」

「気になってるとかじゃない。海せんぱいとは違う。なかよくなりたいだけじゃない。月とも違う」


 いつの間にかミルクティーを離していたもう片方の手が俺の顔に近づいてくる。そしてその手が俺の頬に触れた。


「すき」


 彼女の唇の動きから目が離せない。彼女は本当に彗なのか? そう疑いたくなるほど妖艶で、しかし可憐だった。彗の指が俺の唇に触れる。俺は動けない。自分の心臓の音が聞こえてくる。手が震える。でも目が離せない。指が唇をなぞるように動く。その動きは真ん中で止まる。

 意識的に呼吸をする。そうしないと止まってしまいそうだった。彼女は俺の唇の真ん中にある指をギュッと唇に押し付けてから、彗はその指を離して自分の唇に押し当てから微笑んだ。夕日に照らされるその顔があまりにも魅力的で今すぐにでも自分のものにしてしまいたいと思ってしまう。気づいた時には俺は彼女に向かって手を伸ばしていた。しかし、その手は空を切った。彗がベンチから腰を上げたからだ。彼女は俺の方を見る。


「だからかくごしてて」


 彼女はそれだけ言うと速足で公園を去って行った。俺は動けずにただ頭の中で彼女を反芻した。最後に見えた真っ赤な耳は夕陽のせいじゃないことを祈った。


一章はここで完結になります。

お付き合いありがとうございました。

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