二度目の訪問
「それでなんでまた来てるんですか」
「別にいいじゃない」
次の日の昼休み、再び先輩が教室に現れた。
「自分がクラスメイトから変な目で見られるんですよ」
「そうなの?」
先輩は教室を見渡す。俺もそれに合わせて見渡すが、クラスメイトは二日目にしてもう慣れたのか、こっちを見ている人はほとんどいなかった。見ている人間といえば、俺と先輩と関わりのある彗達と、あとは月だった。月はどうしたのか少し眉が寄っている気がする。
「大丈夫そうじゃない」
「にしてもですよ。次からはメッセージでもなんでも使ってください」
「えー、面倒くさいわよ」
「じゃあなんで交換したんですか」
「え? んー夜とか……」
「夜に何かあるんですか?」
「ほら、不意に誰かと喋りたい時ってあるじゃない」
「俺は先輩の彼氏じゃないですよ」
「彼氏にそんなこと頼めないわよ」
「彼氏にこそ頼むべきですよ」
なんでそんなに威張ってるんだ。
「とりあえず飯行くわよ」
「はいはい」
「返事がざつ!」
「はい」
「パンを買うなら早めに行かないと」
先輩はすぐに踵を返して教室を後にした。俺は置いて行かれないようにその後をついて行った。購買に寄ったことで食堂に着くころにはだいぶ時間が経っていて、席はかなり埋まっていた。
「どこ座りましょ」
「んー、弁当系買って外で食べてもいいわね」
俺たちが席を探していると、見知った顔と目が合った。
「朝日さん」
「月、学食って珍しいな」
「はい。弁当忘れてしまって」
「席、どうぞ?」
「ありがと。先輩、座りましょ?」
「ありがとうね。えっと、月ちゃんでいいのかな?」
「はい」
「じゃあとりあえずご飯注文してくるね」
先輩が学食の受付の方へ向かう。結果として月と二人きりになる。月は先に注文して食べていて、手元には生姜焼き定食があった。その茶碗の大きさからご飯は大盛だった。前に出かけたときは分からなかったが結構食べるんだな。
「朝日さんはそれで足りるんですか?」
「お腹いっぱいになったら眠くなっちゃうからこれぐらいが丁度いいんだ」
「なるほど」
それだけ呟いてから生姜焼きにまたかぶりついた。
「おまたせー」
先輩はまたタヌキうどんを持ちながら席に戻ってきた。飽きないのだろうか。
「そういえば朝日さん」
「ん?」
月が箸をおいてこっちを見た。先輩は我関せずで「いただきまーす」といってタヌキうどんを食べ始めている。
「彗さんが拗ねてましたよ。彼氏なんだからしっかりしてあげてください」
「えー! 彗ちゃんとあんたって付き合ってたの!?」
「あれ、言ってませんでしたっけ」
「聞いてないわよ」
先輩は箸でうどんを掴んだまま俺にグイッと詰め寄る。紹介するとき言ってなかったっけ。
「それなら悪いことしたわね」
月はこの先輩の反応にびっくりするでもなくむしろすっきりとした表情になって、また箸を取った。
「まあ別にやましいことはないですし」
「いや、やましいことならあるわ」
「え?」
「あたし少しあんたのこと気になってるもの」
あっけらかんと言うその先輩の発言に、俺は固まり、月は箸を落とした。




